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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第三部

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 立食パーティーで準備された食事はどれも美味しかった。

「バート様、こっちも食べてください」

「ん。美味しい」

「そうでしょう?」

(もぐもぐしてるの、可愛い!)

 また可愛いって言ったな。ティアラの方が可愛いから。


「ティアラ、最近、可愛くなったなぁ」

「あと二年で人妻なんて」

(レヴァイン様の髪色のドレスとか、とどめを刺された気分)

(あー。俺達のマドンナが)

 ひそひそ話しているのは、小さい頃、通っていたマナー教室の幼馴染だ。俺は二学年上だから疎遠だったが、ティアラとは同じ学園でクラスやクラブ、委員会、何かしら関わりが続いていたらしい。

 既視感を感じ、溜息をつく。

 コードウェルだけじゃないんだよな。ティアラを可愛いと思っている奴は。

  

「バート様のそれ、サーモンですか? マリネのソースは何味でした?」

 ティアラは食べ物に夢中で、幼馴染の事に意識が行っていない。

 分かっているよ。杞憂だって。

 でもティアラは可愛いから心配なんだ。

「食べる?」

 皿をテーブルへ置き、口元にフォークを寄せると、じっと見られた。

(こ、こんな人が多い所で、それをやるんですか?)

「口開けて」

 そっと囁くと、周りがざわつくのが分かった。

(何、今の低音ボイス! そ、そんな色っぽい声で話しかけられたら、困ります! 前に学院の食堂で逆に食べさせて貰ったけど。やだ……皆、見てる! いやー! バート様も顔、赤い!!)

 ティアラの脳内は大混乱だった。


「ま、まさか食べさせてあげるのか? あのクールなレヴァイン様が?」

「食堂でも食べさせっこしてたって聞いたが、ただの噂だと思ったのに」

 他の同じ学院の友人達も騒ぎ始めた。  

 正しくは、コードウェルに嫉妬して、俺が無理矢理食べさせて貰ったただけだが。


「食べてくれないの?」

 わざと甘えた声を出すと、ティアラがフラッーとよろけた。

「おっと」

 慌てて腰に手を回す。

(バ、バート様!? い、い、今のは一体!?)

 ティアラはパニックに陥り、思考回路が止まっている。

 ごめんね、まずは任務を達成しないと。

「食べて欲しいな」

 駄目押しで伝えると、ティアラは壊れた機械のようにパクパクと口を開いた。

 そこへ再度、サーモンを近付ける。

 ティアラは躊躇いがちに食べてくれた。


「美味しい?」

「は、はぃ……」

 キスして少し余裕が出るかと思ったが、逆だな……

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