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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第三部

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「お取り込み中? 相変わらず仲良しね」

 ホールに入ってきたのは、ティアラのお姉さんのナディアさんだ。

 腕には赤ちゃんを抱っこしている。


「ご無沙汰しております」

 頭を下げると、ナディアさんは吹き出した。

「うちの子、見せに来たんだけど……お邪魔だったかしら」

(ギルバート君ったら、ルージュベッタリ付いちゃってる。少し前、ティーから『キスはまだ……』って相談されたけど、ようやくして貰えたのね。ティーの方はルージュ落ちちゃってるし)

 会話も聞かれていたのかもしれない。やけに生温かい視線が絡みつく。

「お子さん、可愛いらしいですね」

 焦って誤魔化そうとしたが、笑われてしまった。

(ギルバート君の唇、キラキラし過ぎ!)

「今、侍女から必要な物を貰ってきてあげるわ」

 肩を揺らしながら言われてしまい、苦笑い。

 ティアラは意味を察し、横で真っ赤になっていた。



「誰か来たら、私が足止めしてあげるから、早く直していらっしゃい」

 ナディアさんからオイルを受け取り、二人で奥へ移動した。


「ご、ごめんなさい。バート様」 

「ティアラが謝る事はないよ。俺が……」

(バート様も照れてる)

 目が合い、お互いに照れ笑いをしてしまう。

 布にオイルを含ませ拭き取る。布には鮮やかなローズピンクが残っていた。

 こんなに色が付いていたのか……

 危ないところだった。

「取れた?」

 手元に鏡がなく、聞いてみる。

「はい。大丈夫だと思います」

 ティアラは手鏡を貸してくれた。

(キス、拭いちゃったから、もうできないのね。もっとして欲しかったな……)

 うっかり読んでしまい、慌てる。

(バート様のキス、優しかった……)

 幸い、ここに必要な物は全部あるし……?

 そんな事を考えてしまい、頭を振る。

 ナディアさんがすぐ側にいるんだぞ! 俺は何を考えているんだ!


 決意して、ルージュの入れ物を手に取る。蓋を開けると、甘い香りがふわっと漂った。

 指にローズピンクの色を乗せると、ティアラが驚いて俺を見上げた。

(まさかバート様が塗ってくれるの……?)

 ティアラのドキドキが伝わる。

 上目遣いやめて欲しい。緊張するから。


 ゆっくり指でなぞると、唇に赤味が差す。

「……できたよ」

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