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「ティアラ、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
(男性がこういうのをするのは恥ずかしいから嫌だと前にクラスメートが言っていたわ。女の子ならともかく、バート様のように真面目な方なら尚更。相手の瞳と同じアクセサリーは余程でないと付けないはず。私だって、このドレス着ようと思ってやめて脱いでまた着てを何度も繰り返しちゃった位だし……)
悩んで、それでも選んでくれたんだ。
チラチラ見られ、お互いに照れてしまう。
(『特別』の印……何よりの誕生日プレゼントだわ。凄く嬉しい……)
ティアラが俺を見上げて、幸せそうに微笑んだ。
こんなに喜んでくれるなんて……
ティアラの声を聞いて、スカーフやポケットチーフも頑張れば良かったと後悔した。
俺は心の声に頼っているのに、ティアラはいつも真っ直ぐで素直な気持ちを伝えてくれる。
俺だって──
「ドレス、俺の髪色で嬉しい。俺も留具やカフスを君の瞳の色にしたんだ」
思い切って伝えると、ティアラは真っ赤になった。
(や、やっぱり瞳の色に合わせてくれたんだ……良かった。この色にして。バート様が『嬉しい』って言ってくれた……もう私の片思いじゃないんだ。バート様も私の事……ど、どうしよう。涙が……! 駄目よ、泣いたりしたら! 皆が何時間もかけてメイクしてくれたのに!)
ティアラの目に涙が溜まっている。
涙脆いなぁ……
何時間もかけて、女の子は大変だな。
キュンとして、ティアラと手を繋いだ。
「綺麗だ……」
そのまま、そっと手の甲に口づけした。
「……こんなに可愛いと、他の男に見せたくないな」
勢いで口にしてしまった言葉に、ティアラは固まっている。
恥ずかし過ぎて爆死しそうだが、俺の気持ちも知っておいて欲しい。
(手の甲にキス! バート様ったら騎士様っぽい! 待って待って。今の何!? や……ヤキモチ!?)
涙は止まったようで、今度は赤い顔のままオロオロしている。
(な、何か気の利いた事を言わなくては! 『ヤキモチ妬く必要はありません』、高飛車過ぎる? ヤキモチ妬かれてる前提だし。でも、でも! 本当に他の男性には興味ないんです。私が好きなのはあなただけ……)
涙目で見られて、理性が吹っ飛びそうになる。
「バート様、大好きです……」
直接、控えめに言われたら、もう駄目だった。
考えるより先に手を伸ばし、細い腰に手を回す。
愛しくて、堪らなくてティアラを抱きしめた。




