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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第二部

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「バート様は優しいから断れなかっただけなのに、私が強引に引き止めたから、嫌われたのかと思って……」

「え!?」

 思ってもいなかった言葉に驚く。

「何を言っているんだ。そんなわけないだろ」

 慌てて否定するが、ティアラは俯いたままだった。

「……でも全然触ってくれないし、目も合わないです……」

 そ、それはやましい夢のせいで!

 言われて思い出す。

 確かに気まずくて、触れられると体が強張(こわば)ったり、目が合うと罪悪感で目を逸らしていたかも……

 俺の態度のせいで不安にさせたんだ。


「ずっと謝らなきゃと思ってたんですが……勇気が出なくて……あの日は我儘を言って困らせて、すみませ……」

 最後は声にならなかった。

 声を押し殺して泣くティアラを見たら、胸が痛くなる。

「違うんだ。ティアラ」

 そっと背中を撫でる。


「……ごめん。あの日、ネグリジェだっただろ。初めて見たから、ドキドキして……その、意識しちゃっただけなんだ……」

 格好悪いが、ありのままの事実を伝える。

 恥ずかし過ぎるけれど、嫌われたなんて思わせたくない。

「嫌ったりするわけない。ティアラが好きだから、少し照れて困っただけ」

 俺の言葉で、ティアラが顔を上げる。

「俺も本当は二人きりで嬉しかった……」

(本当に……? バート様は大人っぽいし、いつもクールだけど、そんな風に思ったりするんだ。やっぱり膝掛け取りに行けば良かった! 部屋が温かいのに膝掛けを持ってきたりしたら、『意識してます』……って思われちゃうかなとか考えちゃって……)

 そうか。ティアラはティアラなりに悩んでいたんだな。

 過剰評価だよ。最近はクールじゃいられないんだ……


「……格好悪くてごめん」

 もう一度謝る。

「い、いえ! そんな! バート様は格好良いです! じゃなくて……ちゃんと話してくれて嬉しかったです」

(悩んだら寄り添ってくれて、落ち込んだら話してくれる……バート様のそういうところも大好き)

 うん。俺も……

 目が合って、お互い笑う。


「髪飾り、バート様が選んでくれますか?」

 ティアラがぎゅっと手を握ってきた。

 ようやく笑顔になり、ほっとする。

「俺、センスないけど……色や形は決まっているの?」

(言っちゃってもいいかな……レヴァイン家の家紋の──)

「白バラの髪飾りにしたいです!」


✳✳


「どれも素敵ですね」

(わー! 可愛い! こっちもお洒落! 綺麗な細工だわ……見てるだけでウキウキしちゃう!)

 ティアラの心の声に笑ってしまいそうになる。

 狡いとは思うが、できれば気に入って喜んで貰える物をあげたい。

「これはこれは、レヴァイン様。今日はどんなご用で?」

 すぐに店主が気が付き、奥へと通される。

「すみません。白バラの髪飾りをいくつか見せてください」

 店主に伝えると、すぐに何点か髪飾りを持って来てくれた。

「実際にお手に取って見てください」

 手袋を受け取り、ティアラに手渡す。

「どれも素敵ですね!」

 ティアラが真っ先に手に取ったのは、大きめの白バラにパール、レースがふんだんに使われている物だった。

(お姫様みたいな装飾! でも夜会なら、こういうのもありかしら? ちょっと子どもっぽいかな。バート様の好みの物をつけてみたいし、今回はお任せしよう)

 俺は迷わず、それを選んだ。



「大切にしますね。デビュタントが楽しみです!」

 ティアラは嬉しそうに箱を見つめている。

「その前にティアラの誕生日だね」

「はい!」

『誕生日にキス』

 思い出し、顔が熱くなる。


 ──もうすぐ、ティアラの生まれた日。

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