表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/142

55

 離れがたいけれど、ティアラの顔色も悪いし……

 寝かせてあげないと。

「こんな時間にごめん。俺はそろそろ──」

「帰っちゃうんですか?」

(もっと一緒にいたい……)

 潤んだ瞳を見たら、それ以上言葉が続かない。あっという間に撤回しそうになる。

「ティアラの顔色が悪いから。俺も一緒にいたいけど、ちゃんと寝ないと」

 なるべく優しく声をかける。


「あと少し……」

(お願い。断らないで……)

 ティアラのお強請りに困ってしまう。

「そうだ。港からは馬車で?」

 話を変えるように聞かれた。

「いや。馬で」

「でしたら、お疲れでしょう。お茶一杯だけ飲んでいきませんか?」

「……こんな時間には流石に」

『失礼だから』言いかけて、ピタッと止まる。

(帰らないで……)

 一度、止まった涙がじわじわと滲む。


「今日はお父様が公務で家を空けているので大丈夫ですよ。お母様も一昨日からお姉様のお産の手伝いに行ってしまったので……」 

 必死に言われ、困惑を隠せない。

 真夜中、両親がいない時、邸に上がり込むのは気が引ける。

(私の部屋はどうかしら? 誰にも見られないし、二人きり……)

 そ、それは余計にまずいのでは……

「……バート様ともう少し一緒にいたいです」

 零れた本音に戸惑ってしまう。

 いつもは言わない本音。普段、我儘なんて言わないティアラが勇気を出したなら──

「……じゃあ、少しだけ」

 俺には断る事ができなかった。


✳✳


 手を繋いで、そっと廊下を歩く。

 階段を上がり、いつもは入った事のない二階へ。

 誰かに見つかったら、不届き者呼ばわりされるかもしれない。

 覚悟を決めて邸に入ったが、誰にも会う事はなかった。


「どうぞ……」

 ティアラの部屋に入るのは初めて。結婚していない貴族の男女は普通、個室で二人きりにならない。婚約者だったとしても、馬車に同乗もしない方が多い。

 俺達は小さい頃から婚約していたし、お互いの両親が許可していたから、一緒に馬車も乗るけれど……

 緊張しながら、足を踏み入れた。

 女の子の部屋って感じだ……


「今、バート様の好きな紅茶を入れますね。ソファにかけて待っていてください」

(私の部屋にバート様がいる……!)

 ウキウキした声が聞こえて、笑ってしまう。

「ティアラが淹れてくれるの?」

「はい。バート様に飲んで欲しくて、特訓しました!」

 ティアラは茶器を取りに、奥へ行ってしまった。

 言われた通り、ソファに腰を下ろした。


 なんだか華やかな良い匂いがする。ティアラの髪の香油と同じ……

 待っている間落ち着かず、目線が彷徨(さまよ)う。

 部屋にはバラの模様が色々な場所にあった。

 カーテンは淡いピンク。下の方には白バラの刺繍があしらわれている。

 うちの家紋……

 ルアーナ邸の家紋は白のスズランだ。色は同じだが……

 自分の家紋をモチーフにする事が多いのに。

 意味を考えて、一人悶えてしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ