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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第二部

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 一面に青空が広がる。雲一つない快晴。

 カーテンを開き外を見て、自然と笑みが零れる。


「ギル、晴れたぞ! ようやく帰れる!」

 乱暴にノックされ、扉を開ける。

「殿下。王族がそんなに声を荒らげたりしてはいけません」

(やっと晴れた! すぐに出発しよう!)

 久し振りの笑顔だ。昨夜の落ち込みようが嘘みたいに晴れて明るくなっている。

「なんだよ。お前だって嬉しいくせに」

「そうですね……」

 否定はできなかった。


✳✳


 嵐が去り、海は穏やかだった。船首に立ち、水平線を見つめる。

「そろそろ食事にするか」

「はい」

 殿下に言われ、頷いた。

 乗客は海を眺めたり、酒を飲んだり、カードゲームをしたり、思い思いに過ごしているが、気が競って仕方ない。


 ティアラに会いたい……

 顔を見たい……

 焦っても船が早く着くわけではないのに。



 船に一日揺られ、帰り着いたのは夜中だった。

「俺は馬を借りて王宮へ戻る。馬車なんか待っていられない。ギルはどうする? 馬車を手配しようか?」

 殿下の言葉に護衛達は真っ青になった。馬車でないと警護が難しい。かといって説得しても聞くような人ではない。

(アイリーン様を心配されているのは、重々承知だが──)

(この様子だと街ではなく、森の方が早いから突っ切るとか言い出しそうだぞ!) 

(森だと警護が手薄になるし、夜は獣や魔物も出る。街から帰りたい……)

(ギルバート様! 馬はやめるよう、説得してください!)

(殿下はギルバート様の言う事だけは素直に聞くから……)

 過剰評価されても困る。

 可哀想だが、今回は護衛達に頑張って貰うしかない。全員に縋るような目で見られたが、今回は助け舟を出さなかった。


「いいえ。馬を借ります」

(ギルバート様まで!)

 俺の言葉に護衛達が落胆している。

 俺も殿下と同じ気持ちだ。ティアラに少しでも早く安否を伝えたい。

「分かった。ギルの荷物はレヴァイン邸に送ってくれ」

 殿下は侍従に指示を出してから、腰に剣を準備し、馬に(またが)った。


✳✳


 森では問題なく獣や魔物に遭遇せず、帰って来る事ができた。

 殿下と別れ、真夜中、馬を走らせる。


 ルアーナ邸が見え、ほっと一息つく。

 勢いで、先触れも出さずルアーナ邸まで来てしまったが──

 こんな時間に、叩き起こすのはいかがなものか。朝、改めて出直すか……?

 でも、きっと心配しているだろうから……

 とりあえず馬を繋ぎ、裏庭の方へ回った。


 どの部屋も明かりが消えている。

 もし誰か起きていれば、伝言を頼もうと思ったけれど……

 流石にこの時間じゃ無理か。

 ティアラの部屋を見ていると、ガラッと窓が開いた。


「ティアラ……」

 思わず呟く。

 ティアラはベランダでしきりに外を気にしている。

 そのうち、目が合った。


「バ……バート様‼」

 あまりの大声に焦る。

 皆、起きちゃうから……そう言おうとしたら、物凄い勢いで窓を閉められた。

 下りてきてくれるつもりなのか……

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