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(正気じゃないぞ、この男……ずっと、こんな感じでベタベタするつもりか? ティアと出かけたかったけど、仲良くしてるところなんて見せられたくない……)
コードウェルは俺を睨んだ後、ティアラの方を向いた。
「では俺は遠慮します。ティア、下見は任せてもいいか?」
「はい!」
ティアラは目に見えて、嬉しそうな顔をした。
それを見て、コードウェルはへこんでいる。
(バート様とデート! シアン様には悪かったけど、遠慮してくれて良かった)
ティアラはウキウキと俺の方へ歩いてきた。
可哀想だが、きっちりトドメは刺しておこう。
「二人きりで嬉しい」
内緒話をするみたいにそっと囁いて、ティアラの肩を抱いた。
「バ、バート様……」
色白な肌が赤く染まる。
「赤いよ、ティアラ」
頬を撫でると、更に赤みが増す。
何がなんだか分からず、慌てるティアラに笑いかける。
「……人前でやめた方が良いと思いますよ」
苦虫を潰したような顔で、コードウェルが言ってきた。
「そうだね、気をつける」
(どこが大人っぽくて、優しい令息だ! この偽紳士め! ティアラの事になると余裕がなくて、結構なヤキモチ妬きだぞ。見せつけるようにイチャつきやがって!)
コードウェルは納得の行かない様子で頭を下げ、帰って行った。
馬車への階段をエスコートしていると、ティアラが俺を見てきた。
(やっと二人きり……)
その言葉にドキッとする。
目が合うだけで、気持ちがそわそわする。
隣に座り、そっと手に触れると、また目が合う。
(今日は手なんだ。抱きつきたいな……さっきはシアン様の前で肩を抱かれて、恥ずかしかったけど嬉しかった。まるで『俺のもの』って言われてるみたいで……)
言い当てられ、恥ずかしい。聞いていられなくて、腕を引き寄せた。
抱きしめると、甘い香りが漂う。
俺の腕の中にすっぽりと収まってしまう細い肩。激しい鼓動が聞こえてきて、ティアラがドキドキしているのだと分かる。
甘えるように、胸に頭を寄せられた。キュンとして髪を撫でると、今度は背中に手が回ってきた。
──ティアラが好き。
日に日に大きくなる気持ち。
俺の心臓の音も聞こえちゃってるのかな……




