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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第二部

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 ティアラの教室を覗くが、まだ戻っていないようだった。

 泣いていて、戻れなかった……?

 一人で泣いているティアラを想像したら、胸が痛くなった。少し考えて、来た道を戻る。

 この時間帯に人がいないのは、図書館と講堂か?

 キョロキョロしながら心当たりを探した。

 

「そろそろ授業が始まるよ」

 声をかけられ、振り向いた。そこには、何人か先生がいた。中にはティアラの学年担当の先生もいる。

「すみません! ティアラ=ルアーナを見ませんでしたか⁉」

 焦って聞くと、心配そうに見られた。 

「どうしたの? 何かあった?」

(驚いた! レヴァイン君の焦った顔なんて初めて見る)

「いいや。見かけていないが……」

(品行方正、沈着冷静なレヴァイン君が慌ててるとは、何事だ?)

「……」

(ルアーナさんなら中庭に……でも泣いてるところなんて見られたくないはず。どうしよう。レヴァイン君、物凄く心配してるみたい。『目にゴミが入って』って言ってたけど、喧嘩……?)

 一人の先生の心の声を聞いて、頭を下げる。

「ありがとうございました。急いでいるので失礼します!」

 すぐに中庭の方へ走った。


 花壇の後ろに人影が見える。淡い桃色の髪が見えて、ほっとしながら近付いた。

「ティアラ」

 隠れるようにうずくまっているティアラに声をかけると、ビクッと細い肩が震えた。

 泣いているのを誤魔化そうしているのか、慌てて袖で目元を擦っている。それでも涙が止まらず、なかなか俺の方を見ない。

「……ティアラ?」

 なるべく優しく名前を呼ぶと、少し経ってからゆっくりと顔を上げた。

「すみ、ません……逃げたりして……」

 言いながら、(またた)きと共に涙が落ちる。

(最近、アイリーン様は悩んでいる気がしてたんだ。王太子殿下と並んでいても、どこか寂しそうで……まさかアイリーン様もバート様を……? 王家の婚姻だし、今からなくなる事はないと思うけど……でもバート様の気持ちはどこに行くの? 本当に好きな人と一緒になれず、一生、自分を誤魔化したまま……) 

「急にお腹が痛くなっただけなんです」

 ティアラは泣きながら笑顔を作った。痛々しいその様子を見て、罪悪感に(さいな)まれる。

 ティアラもアイリーン様の不安に気付いていたのか。

 殿下の手が早いせいで……

 一瞬、殿下を恨んだが、自分の撒いた種だ。

 俺の言葉が足りないせいで、不安にさせていた……


「泣かないで。ティアラ……」

 指で涙を拭うと、更に涙が溢れた。

「……バート様」

(あんなに優しかったのに……可愛いって言ってくれたのに……今は兄と妹みたいな関係でも、いつかは本物の夫婦になれると思っていたのに……!)

 ティアラは余計に泣いてしまった。


 始めは進められるまま、婚約をした。貴族の結婚に夢なんて持てなかった。

 ──でも今は違う。


 結婚して、この先も一緒にいたいと願うのは──

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