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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第二部

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 殿下はアイリーン様を喜ばせる為なら、基本、なんでもする人だ。

 今まで付き合ったデートの下見やプレゼント購入の回数は、数え切れない。

 バラが好きだと知れば、会えない日は手紙とバラを送り、バラの香油を手作りしプレゼント。庭にアイリーン様専用のバラ園を作ってしまうような重い愛の持ち主である。

『格好良い』と言われたいだけの為に、何年も剣の腕を磨き鍛錬を重ね、王国の騎士団長から一本取ったのも記憶に新しい。

 世界に一つだけの物をと……宝石の発掘に自ら隣国まで行ったり、家臣が止めるのを振り切り高級で希少な毛を持つという魔物を捕まえ、毛皮を手に入れた事もある。

 

 公務や王太子教育が忙しい中、建築士、家具コーディネーターの資格まで取り、もうすぐ完成する王太子妃殿下を迎える為の別邸は、王家のしきたりを入れつつ、アイリーン様の好きな物でまとめられ、どこもかしこも愛が詰まっている。

 結婚式の準備も率先、ピアノが好きなアイリーン様の為に寝る間を惜しんで特訓中。サプライズで曲を送るそうだ。

『アイリーンが笑ってくれたらいいな』

 結婚式の話をこっそり教えてくれた殿下を思い出す。


「ギルバート?」

 理由を話すのは簡単だ。でも殿下がアイリーン様を驚かせたくて、色々やっていたと俺は知っている。

 ……殿下の為に一肌脱いであげるか。

「……どうして、そんな風にお考えか、伺ってもよろしいですか?」

 そこでようやく顔を上げたアイリーン様の目を見る。

「何かあったわけじゃないんだけど……」

(なんだか会うと、しちゃってる気がして……ライルの事は大好きだし幸せだけど。最近、いつも忙しそうで、あまり会話ができない……)

 アイリーン様の心の声に項垂(うなだ)れる。

 ──つまり殿下の手が早いから。

 でも……


「殿下は誰よりもアイリーン様を大事に想っています」

「そうかな……」

「俺が保証します。殿下には幼い頃からアイリーン様だけです」

「ありがとう……」

 アイリーン様はハラハラと泣きだしてしまった。

(──ライルを信じたい。ずっと心細くて……私、誰かに『大丈夫』って言って欲しかったのかも)

 誰だって環境が変わるのは不安だ。アイリーン様も王太子妃殿下としての教育に追われて、もうすぐ生まれ育った生家を出る。誰にも相談できず、不安だったのかもしれない。

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