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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第二部

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29

「今日も委員があって、お昼、ご一緒できないんです……」

(バート様の卒業のパーティーだから、委員に立候補したけど、集まり多過ぎ。しかもシアン様のせいで副委員長になっちゃうし)

 ティアラの言葉に気持ちが落ち着かなくなる。

 同じ委員にコードウェルがいて委員長に立候補し、ティアラを副委員長に推薦してきた話は先日聞いた。

 意地悪で役員を任されたとティアラは思い込んでいるが、あれは多分……

 ──俺はコードウェルが嫌いだ。いつもティアラの周りをウロチョロしているし、婚約が決まってからもちょっかいを出してきて、気に喰わない。

 しかも最近、ティアラをボッーと見つめたり、目が合うと赤くなったりして、本当になんていうか──


(どうしたんだろう。珍しく怖い顔……? 急に断ったりして、怒ってる? でも私だって一緒に食べたかった……)

 ティアラの悲しそうな表情を見て、慌てる。

 ごめんね。違うんだ。

「……残念だ」

 なんとか声を絞り出す。

「え……」

(『残念』って……怒ってるんじゃなくて、寂しくて? バート様も私との食事を楽しみにしてくれてたの? 何それ、嬉しい……!)

 その心の声を聞いて反省する。

 ティアラが俺を好きでいてくれているのは、分かっているんだ。

 心が狭いぞ。年上の余裕を見せてやれ。

 ただの委員会だ。別に二人きりじゃないし。

 自分に言い聞かせ、精一杯笑顔を作る。


「明日は?」

 ティアラの頭をそっと撫でた。

「もー。子ども扱いしない約束ですよ、バート様。明日は委員ないです」

 と言いつつ、ティアラの口元が緩む。

(本当はバート様に頭を撫でられるの、好き……)

 淡い桃色の髪から、甘い香りがしてクラッとする。

「俺も空いてるよ。明日は一緒に食べよう」

「はい」

(嬉しい! 約束……)

 はにかむティアラにキュンとする。

 その細い肩を思い切り引き寄せて、腕の中に閉じ込めたい……

 ──時々、衝動に駆られそうになる。


 ここは学院の廊下で、いつ生徒や先生が通るか分からない。

 息を吐いて、なんとか衝動をやり過ごす。

 撫でていた手を離した。

(あ……離れちゃった。残念。もっと触って欲しかったな)

『もっと』

 ティアラの発した単語にグラグラきつつ、なんでもない振りをして、言葉を探す。

「帰りは?」

「特にないです。バート様は?」

 目に見えて、嬉しそうな顔をしている。

 淑女は表情を表に出さない方が良いとされているが、俺はティアラのこういう素直なところも好きだ。

「今日は生徒会ないよ。一緒に帰ろう」 

「はい!」

(やった! また肩を抱いてもらえるかしら。最近、行き帰りの馬車が楽しみで仕方ない。ドキドキするけど、バート様、優しいし、益々好きになっちゃう)

 心の声にむず痒くなる。

 今日は肩にしよう……

 さっきまでの胸のモヤモヤは霧のように晴れていった。

「じゃあ、中庭で待ち合わせでいい?」

「ええ。では放課後に」

 手を振って別れる。


 若干浮かれながら階段を登ると、人が立ちはだかっていた。

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