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「朝、いつもと同じ時間に迎えに来るね。明日は雨が降りそうだし、濡れるから家の中で待ってて」
「はい」
ルアーナ邸に着き、先に降りて、手を差し出す。
(バート様、本当に格好良いなぁ……瞳とか宝石みたいだし、声も喋り方も好き。バート様に求婚された時は驚いたけど、受けて良かった……!)
ティアラは零れそうな笑顔で笑った。
あまり『好き』って言わないで欲しい。照れるから……
「ありがとうございます。あの、バート様。少し屈んでもらえます?」
ティアラは口元に手を当て、内緒話をするように囁いた。
エスコートで繋いだ手はそのまま。離すタイミングを逃し、少し迷う。
(別れ際に手を繋ぐなんて、恋人っぽい! エスコートの後に繋いだままとか、憧れてたの!)
そうだったのか……
破顔してしまいそうになり、口元にグッと力を入れる。膝を折り耳を近付けた。
「何……?」
「さっきの嬉しかったです。またして欲しいです」
耳元で言われ、吐息がかかる。驚いてパッと離れた。
(きゃー言っちゃたわ! 恥ずかしい!)
な……何を?
──どれを?
ブワッと顔が熱くなる。
「お嬢様、お帰りなさいませ〜」
「レヴァイン様、毎日、ありがとうございます」
ルアーナ家の執事とメイドの声が聞こえて、ドキッとする。一瞬で現実に戻った。
「あ……いや……俺もティアラと一緒にいたかったので」
動揺し、つい本音を漏らしてしまった。
その場が静まり返る。
執事とメイドは赤くなり、なんとも言えない顔をしていた。
もっと違う言い方があっただろ……
気まずい空気が流れ、どうする事もできない。
……何も突っ込まないでください。
居たたまれなくなり、チラッとティアラを見る。
「バート様……」
(私もです‼)
ティアラは喜びが隠せていない。
言ってしまってから、後悔。
でも──
ティアラの嬉しそうな様子を見て、緩む口元を手で隠した。
「明日もしてください」
ティアラがそう言うと、執事とメイドは目を丸くした。
ちょっと待って。勘違いさせるような言い方!
俺は焦っているのに──
「ふふ。では、ご機嫌よう。また明日」
ティアラは言うだけ言って、あっという間に行ってしまった。




