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(も、もしや私、騙されてる? プロポーズの振りをして、からかってるだけだったりして──)
それはない!
心の声に思わず返事をしてしまいそうになり、グッと堪える。
(いいえ。そんなわけないわ。レヴァイン様は立派で優しい紳士。女の子を弄ぶような事はしないはず。なら、なんで? 結婚って……)
戸惑う彼女に一歩近付づいた。
「……俺、本気だよ」
一言だけ伝える。
その瞬間、ルアーナ嬢の頬が更に赤くなった。
(嫌だ! この人、眩し過ぎる! そんなにキラキラしないで! 『本気』……? こんな格好良い人が私を好きになるはずなんて……もしかして目が悪いとか?)
眩しくもないし、別にキラキラしてないから。
相変わらず面白い発想だ……
「私なんて……」
そんな事ないよ。
君は可愛い……とか言えたらいいんだけど。
(レヴァイン様ったら、じっと見るの、癖なのかしら。そんなに見られたら溶けちゃう! もう少し格好良さ、減らしてもらえますか? あまりの美しさに耐えられないから)
本当に困った子だな。真面目に求婚しているのに。
咳払いをして、笑いに耐える。
じっと見ちゃうのは──そうしないと読めないから。
分かってるよ。卑怯だって。
でも結婚は一生の問題。少しでも嫌なら無理強いしたくない。俺、恋愛経験ないし、こうやって思考を読む位しか……
(こんなに素敵な人なんだもの。運良く結婚しても、絶対に他の女の子達が放って置かないわ。そういう時に一人で待つのは嫌だな……『奥さんがいてもいいんです! ギルバート様の特別になりたい!』とか美人が迫ってきたら? 太刀打ちできないわ。不戦勝で負け一択)
そんな風に思われ、困ってしまう。
女の子は男より一層本音を隠すのが上手い。誰も『俺』が良いわけじゃない。『レヴァイン家の息子』である事に意味があった。
──君だけだったんだ。
俺を『普通の人』って言ったのは。
心の声を聞いても、平気だったのも……
下心が全くない令嬢なんて、ルアーナ嬢しかいなかった。
「俺、浮気しないし、君の事を一生大事にするよ」
思わず口にしてしまった。
(流石、王子! クールも良いけど、甘いのもいい……! この人が私の旦那様に? いや、ないない! こんな格好良い人、無理!)
とりあえず王子はやめて欲しい。
無理って……
(レヴァイン様に憧れていた。それは本当だけど。手に届かない人だと思っていたから、混乱して)
「私より、もっと良い子が……」
それは相手を振る時の常套句。
「君がいいんだ」
ありったけの思いを込めて伝える。
もう恥ずかしいとか言っている場合じゃない。
俺が動かなきゃ、コードウェルの息子と婚約が決まってしまう。
(『君がいい』だなんて。物語の主人公になったみたい。……レヴァイン様もそういう事言うんだ)
照れている顔を見て、ドキドキしてしまう。




