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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第一部

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15

 馬車から、彼女が顔を出した。

 今日は髪の毛を編み込み、白い帽子を被っている。淡いクリーム色のワンピースもよく似合っていた。

「お手を」

 エスコートをする為、手を伸ばすと、ルアーナ嬢は控えめに微笑んだ。 

 小さな手が腕に触れる。

 急にドキドキしてしまい、目を逸らしてしまった。

 殿下や皆が変な事言ったせいだ……


「本日はお招き頂きまして、ありがとうございます」

 お礼を言われて、顔を見ないわけにはいかない。

「父上達は仕事があるらしいから、お茶でもどうかな。その……ハンカチのお礼に」

 彼女の色白な頬が赤く染まった。

 それを見たら、また変な気分になってくる。

(さ……触っちゃった。家族以外にエスコートされるの、初めて! 流石、公爵家! なんか甘い香りがするわ。バニラ……?)

 そうか。俺が初めて……

 だから、どうした。俺は何を喜んでいるんだ。

 自分の思考回路が分からなくなる。


 無言のまま、彼女をガーデンテラスへ連れて行く。

 そよそよと風が吹き、白バラが揺れる。

 ……そうだ。褒めるようにアドバイスされていたな。


 今日のワンピース、よく似合っているね。

 帽子も髪型も可愛い。

 なんて……

 ────言えない。

 皆、簡単に言ってくれたが、女の子を褒めるのって難しい。

 落ち着かない気分でいると、ルアーナ嬢が振り向いた。


「見事なお庭ですね」

(レヴァイン様、私、あなたのファンクラブに入ったんです! 一ファンとして、そっと眺めているだけのつもりが、なんのご褒美かしら。今日もまつ毛長い。髪もダークブルーのシャツも似合ってるわ! 留具やカフスが瞳と同じサファイヤ。お洒落ね……)

 ファ、ファンクラブ⁉

 おまけに『今日もまつ毛長い』って、どういう事⁉

 思わず躓きそうになった。


「美しい白バラ……」

 うっとりとバラ園を眺める彼女。

「……帰りに持って帰る?」

 ついて出た言葉に彼女が驚く。

(白バラの花言葉は「純粋」「深い尊敬」「相思相愛」……『これから親密になりたい』という意味で贈ると聞いた事があるわ! いえいえいえ! レヴァイン家の家紋だから育てていて、たまたま話題に上がったから、ご厚意で言ってくださっただけ)

 意味を知らなかったわけじゃなかったけど……

 そこまで深読みされると照れる。

「ご厚意に甘えて頂いてもよろしいですか?」

「帰りに準備しよう」

 深呼吸し、なるべく浮ついていないような声で返事をした。


 ──どうしよう。

 始まる前から、胸が騒がしいんだが。


「まぁ、素敵!」

 彼女はガーデンテラスに準備されたテーブルを見て、嬉しそうな声を上げた。

 紳士らしく……

「どうぞ」

 椅子を引き、座るよう促す。

「ありがとうございます」

(レヴァイン様は大人っぽいしスマートね。この年で、こんな風にレディ扱いしてくれる人は他にいないわ)

 彼女を座らせてから、向かいの席に腰を下ろした。

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