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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第五章

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「お二人共、幸せそうでしたね」

(王太子殿下がアイリーン様を見る目が優しくて……こちらまで幸せな気持ちになりました!)

 帰り道の馬車で、ティアラが嬉しそうに話す。

「そうだね。寒くない? 閉めようか?」

 すっかり夜も()け、馬車の窓からは三日月が見えた。

「大丈夫です。ちょっと火照ってしまったので……王太子殿下はピアノも弾けるんですね。アイリーン様に曲を贈るなんて素敵……」

(アイリーン様も感動して、泣いちゃっていたし)

 パーティーの最中に行なったサプライズの事だろう。珍しく殿下は緊張していて、俺までドキドキしてしまった。

 結果は大成功。練習が実を結び、アイリーン様は嬉しさのあまり、涙していた。

「ピアノは(たしな)む程度だったと思うよ。今日の為に猛練習したんだよ。アイリーン様をびっくりさせたくて、頑張ってたみたい」

 殿下も幼い頃から、アイリーン様一筋だった。

 そんな二人が結ばれ、俺も嬉しく思う。

 二人共、この日を待ちわびていた事だろう。

「王太子殿下はアイリーン様が大好きなんですね」

「そうなんだよ。惚気てばかりで大変なの」

(惚気るのは、バート様を信頼してるから……本当に王太子殿下と仲良しですね。男性の友情って素敵……お二人は親友って感じがするし、今後はお仕事まで一緒だし、羨ましい位)

 俺の言葉を聞いて、ティアラはくすくす笑っている。

 好きな人と一緒になる。貴族であれば、とても難しい事。王族なら尚更。

 俺の周りでも身分差で恋を諦めたり、婚約者がいるのに他の人を好きになってしまい、苦しんでいる人もいた。


「俺も早く結婚したい」

 素直に伝えると、ティアラの頬が赤く染まった。

「……私も二年後が楽しみです」

(毎日、一緒に食事をして、隣りに居て……お話して……これ以上にない幸せです)

 ティアラの言葉にキュンとして、キスをした。「バート様……」

「ティアラ、これからも俺の側にいてくれる?」

「……はい!」

(明日、世界が滅びようとも一緒にいます!)

 例えが重いから……

 笑いを堪えてもう一度キスをして、抱きしめた。

 愛しくて、胸が温かい……


 幸せには終わりはないのかもしれない。

 結婚して、愛を育んで、子どもを授かり、その成長を見守る。


「愛してる……」

 窓から見える月に誓い、そっと願う。

 

 ティアラとずっと一緒にいられますように……

 

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