表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/142

12

 無事にティーパーティーを終え、招待客も帰り、会場はガランとしている。

「ギルバート様。王太子殿下がお呼びです。自室に来て欲しいとの事です」

 侍従に言われ、軽く会釈してから殿下の部屋へ向かった。


「楽しそうだったな、ギル。植物園の時の子だろ? あんなに優しい顔、初めて見たんだけど」

 開口一番、そう告げられる。

「この前のお礼をされただけです」

「俺にはギルから話しかけに行ったように見えたけど? 何、貰ったんだよ。令嬢から何かプレゼントされても、いつも一切受け取らなかっただろ?」

 見られていたのか。

 何をどう言っても、突っ込まれるに決まっている。

「……」

 (だんま)りを決め込んだら、殿下がクッと笑った。

「お前、本当にどうしたんだ。女嫌いどころか人嫌いのだったのでは……?」

 からかう気満々で疲れる。

「ちょっと喋っただけで、なんで、そこまで言われないといけないんですか」

 ムッとして返すと、殿下が顔を覗き込んできた。

(ムキになるところが怪しい。遅い初恋ってやつか)

 こ、恋⁉

 頬が急激に熱くなる。

「そ、そんなわけないでしょう! 会って、まだ二度目ですよ!」

(ギル、真っ赤だぞ)

 声には出していないが、ニヤニヤしている殿下を睨む。

「赤くありません!」

(そんな風に大声を出すのも珍しい)

「そ……それは……殿下が変な事を言うからで」

 すぐに返せずに言うと、殿下は腹を(かか)えて笑っている。

「ギルにもこんな可愛い一面があったとは」

「は、はぁ⁉」

 殿下までおかしな事を言ってきて、不敬とも取れる不機嫌な声を出してしまった。

「しっかり者のお前が取り乱していて、面白い」

 面白いってなんですか。

「いいじゃないか、あの子。真面目で一途そうだし、ギルに似合ってると思う」

「……殿下」

「なんだよ。怒るなよ、ギル。お前にも幸せになって欲しいだけ」

 肩をポンポンと叩かれ、溜息を吐き出す。

 親みたいな事を言って……


「アイリーン様はお帰りになったんですか」

 逃げる為に話題を振る。

「『もう少し一緒にいたい』って伝えたら、『私も』って言ってくれて……手……繋いだ」

 殿下の頬が赤く染まる。

(可愛くて、どうしようかと思ったよ。手を握り返して恥ずかしそうに笑ってくれて、可愛かったなぁ……)

 デレデレと惚気始める殿下を一瞥(いちべつ)

 心の声も浮かれていて、花でも飛んできそうだ。

 自分で聞いておきながら、もう帰りたい。

「俺さ、アイリーンに気持ちを伝えてから、毎日、幸せなんだ。ギルも素直になれ。今時、無愛想なんて流行らないし、意地張らない方がいいぞ」

 緩んだ顔をして、殿下が笑う。


 彼女の心の声はとても素直で綺麗だ。

 それは否定しない。


 恋……?

 別にそういうのじゃない。


 ──胸が騒がしくなるのは、からかわれて居心地が悪いだけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ