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「い……嫌とか嫌いとか、そんな風に思ったりしません。ただ……今までの自分が恥ずかしくて……」
(むしろ大好き過ぎて困ってる位なんです)
真っ赤になりつつ、それでもティアラは目を逸らさなかった。
「なんて言えばいいか分かりませんが……秘密を話してくださって、その……不謹慎かもしれませんが、嬉しいです」
(優しいバート様の事だからきっと悩んだに違いない……私を信じているから、打ち明けてくれた。大丈夫。秘密は守ります! ……言われてみれば、心で思った事に対して、バート様が赤くなる事が何度もあった)
「今まで隠していて、ごめん」
罪悪感で押しつぶされそうになっていると、ティアラが真っ直ぐと俺を見てきた。
「言えなかった事情も分かります」
ティアラはこんな時にも優しい。
俺を思いやる気持ちが伝わって、じわりと胸が温かくなる。
(今、分かった。他の人と話していて、少し寂しそうな顔をしたり、落ち込んだ様子になる事があったのは、心が読めたせいなのね……聞きたくない言葉まで聞こえてしまって、どんなに辛かったか……)
ティアラは悲しそうな顔をしていた。
俺の話が嘘だとか作り話だとすら思っていない。心配し、驚き、恥ずかしいのは伝わったが、俺を否定する言葉は見られない。
心からの信頼と気遣いに涙が出そうだった。
「ティアラは俺の話を信じてくれるんだね」
「勿論です。だってバート様は私に嘘をついた事がないから……」
それを聞き、救われた気持ちになる。
両親とも殿下とも違う、婚約者という立場。ティアラに対しては、心の声が聞こえてしまう分、誠実でいたいと思っていたから、伝わっていたようで、ほっとする。
「あ! もしかしたら初めてお茶会に伺った時、求婚してくださったのは、シアン様の結婚を嫌がっていた事を分かったからですか!?」
(あまりにも急なプロポーズで、理由が分からなかったけど……)
不意に思い出したようで、ティアラが言ってきた。
「……きっかけになったのは確かだ。でも、その前から父上に婚約者を早く作るように言われていて……ティアラみたいに心の声が素直で綺麗な人は初めてだったから、ティアラがいいなと思ったし、一緒にいたいと思ったんだ」
そう伝えると、ティアラの頬が赤くなる。
「それならバート様の力に感謝しないといけないですね。本来なら家格が違い過ぎますし」
「そんな事ない。きっと心が読めなかったとしても、俺はティアラに惹かれたと思う」
(本当に……?)
「ティアラが大好きだよ。聞いてくれて、ありがとう」
(私も大好きです!!)
照れ笑いをするティアラに見惚れる。
堪らなくて、手を繋ぐと、ティアラはとびきりの笑顔を見せてくれた。




