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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第五章

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「い……嫌とか嫌いとか、そんな風に思ったりしません。ただ……今までの自分が恥ずかしくて……」

(むしろ大好き過ぎて困ってる位なんです)

 真っ赤になりつつ、それでもティアラは目を逸らさなかった。

「なんて言えばいいか分かりませんが……秘密を話してくださって、その……不謹慎かもしれませんが、嬉しいです」

(優しいバート様の事だからきっと悩んだに違いない……私を信じているから、打ち明けてくれた。大丈夫。秘密は守ります! ……言われてみれば、心で思った事に対して、バート様が赤くなる事が何度もあった)

「今まで隠していて、ごめん」

 罪悪感で押しつぶされそうになっていると、ティアラが真っ直ぐと俺を見てきた。

「言えなかった事情も分かります」

 ティアラはこんな時にも優しい。

 俺を思いやる気持ちが伝わって、じわりと胸が温かくなる。

(今、分かった。他の人と話していて、少し寂しそうな顔をしたり、落ち込んだ様子になる事があったのは、心が読めたせいなのね……聞きたくない言葉まで聞こえてしまって、どんなに辛かったか……)

 ティアラは悲しそうな顔をしていた。

 俺の話が嘘だとか作り話だとすら思っていない。心配し、驚き、恥ずかしいのは伝わったが、俺を否定する言葉は見られない。

 心からの信頼と気遣いに涙が出そうだった。

 

「ティアラは俺の話を信じてくれるんだね」

「勿論です。だってバート様は私に嘘をついた事がないから……」

 それを聞き、救われた気持ちになる。

 両親とも殿下とも違う、婚約者という立場。ティアラに対しては、心の声が聞こえてしまう分、誠実でいたいと思っていたから、伝わっていたようで、ほっとする。

「あ! もしかしたら初めてお茶会に伺った時、求婚してくださったのは、シアン様の結婚を嫌がっていた事を分かったからですか!?」

(あまりにも急なプロポーズで、理由が分からなかったけど……)

 不意に思い出したようで、ティアラが言ってきた。

「……きっかけになったのは確かだ。でも、その前から父上に婚約者を早く作るように言われていて……ティアラみたいに心の声が素直で綺麗な人は初めてだったから、ティアラがいいなと思ったし、一緒にいたいと思ったんだ」

 そう伝えると、ティアラの頬が赤くなる。

「それならバート様の力に感謝しないといけないですね。本来なら家格が違い過ぎますし」

「そんな事ない。きっと心が読めなかったとしても、俺はティアラに惹かれたと思う」

(本当に……?)

「ティアラが大好きだよ。聞いてくれて、ありがとう」

(私も大好きです!!)

 照れ笑いをするティアラに見惚れる。

 堪らなくて、手を繋ぐと、ティアラはとびきりの笑顔を見せてくれた。

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