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卒業まで残すところ、わずか数日。
ティアラのデビュタントを無事に終え、卒業へのカウントダウンが始まった。
「バート様、大好きです……」
(私もだけど……バート様の心臓の音、早い……)
馬車という密室。好きな子にそんな事を言われ、密着しつつ、あちこち触られたら、理性が保たない。
前に、俺が性急に関係を進めようとしてしまい、怖がらせてしまった。そのせいで、しばらく会話も上手くできない程、拗れてしまった。
もう怖がらせたくない……
自分本位で泣かせてしまう位なら、限界まで我慢してみせる。そう思っていたのに……
慣れる為にと提案されたティアラからのスキンシップ。段々と慣れてきたのか、最近はキスの最中に背中や足を弄られ、正直、困っている。
腿を撫でられ、体がビクリと震えた。
(くすぐったかったのかしら。わー……バート様、真っ赤。可愛いな……照れてる顔を見てると、キュンとする)
違うよ。そんな場所、触られたりしたら──
その時、唇が重なった。
何が困るって……
「ティアラ……」
(好き……大好き、バート様……)
流れてくる甘い声を聞いて、クラクラしてしまう。
最近、俺を見て、うっとりしている事が増えたし……
俺はどうすればいいんだ!
「ティ……ティアラ……今日は……この位にしとこうか」
断腸の思いで距離を取ろうとするが、ティアラが膝に乗っているし、手を繋いだままだから逃げられない。
(バート様の瞳、潤んでる……無理! 大好き! もっとしたい……)
ティアラは俺の言葉を無視して、抱きついてきた。
抱きしめただけで折れそうな位、細い腰。俺とは違うやわらかい体。
限界なんて、とっくに超えていた。
「……ティアラ、ちょ……んっ」
強引なキスに戸惑う。
──ティアラから触れようとしてくれて、嬉しい。
「好きです、バート様……」
これに耐えられる男はいるのか!?
今にも負けそうなんだけれど!
なんとか肩を押さえ引き離すと、ティアラの濡れた唇が目に入る。
(男の人っぽい表情も好き……)
縋るような目で見られ、喉が上下した。
「も、もうすぐ着くから。続きは帰りの馬車でね」
耳も顔も熱い……!
平静を装いきれない。
暴走を止める術はなく、俺は毎日、必死だった。
婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています』更新再開しました。
商業BLの修正の為、長くお休みしてしまい、申し訳ございません。無事に修正完了しました。6/1(土)には最終話です。一冊全部SSになっています。是非、ご覧くださいませ。
詳しくはXマイページをご覧ください。




