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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第四章

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 成り行きを見守るなんて事は俺にはできず、その場に乗り込もうとしたら、周りにいた男達に押さえられた。

「レヴァイン様……」

二人はコードウェルの友人だ。

「どうか一度だけ見逃してください。あいつもルアーナ嬢をあなたから奪えるとは思っていません」

(長く拗らせた片思い……シアンも面と向かって振られれば、諦められるだろう)

「後生です。どうか言わせて貰えませんか? きっと最初で最後ですから」

(二人が相思相愛なのはシアンも分かってる。あえて皆の前で振られに行ったのは、区切りをつける為に違いない)

 緊張した面持(おもも)ちで言われ、言葉に詰まる。

 

 諦めるために告白……?

 あいつが……?


「子どもの頃は少しでも話したくて、ちょっかい出して気を引いたり、他の奴と話してると意地悪したり、本当に嫌な奴だったと思う。俺の方が先に求婚したのに、レヴァイン様を選んでショックだったけど、自業自得だと思ってた」

 コードウェルの殊勝な独白に耳を傾け、踊っている人はほとんどいない。

 好きな子を虐めてしまう心理は分からなくはない。でも許容できるかは別の話だ。

 でも、こんなのを聞いたら、流石にティアラだって……

「彼に笑顔を向ける度、胸が痛くて──友人として過ごしても、やっぱり気持ちは変わらない」

 コードウェルの台詞を聞いて、令嬢達がひそひそ言い盛り上がっていた。

 女の子はこういう台詞が好きなのだろうか。


「ティア、俺の事を男として見て欲しいんだ」

 真っ直ぐな告白。会場内は依然として静まり返っていいる。

「ごめんなさい」

 コードウェルに対して、ティアラは間髪入れず頭を下げた。

「幼馴染として長年側で見てきて、家族や友人を大切にするところ、同じ委員で長を務め、そのリーダーシップや真面目さ、責任感の強いところは尊敬していますが、あなたを異性として見る事はできません」

 静かにティアラが伝え、コードウェルは目線を落とした。

「私はバート様を心からお慕いしています。婚約者だからではなく、一人の男性として愛しているんです」

 その言葉を聞いて、頬が熱くなる。

 ここまで、はっきり断ってくれるなんて──


「……聞いてくれて、ありがとう。これからも変わらず、友人として接して貰えたら嬉しい」

 コードウェルも潔く、その返答を受け取り、立ち上がった。でも寂しそうな横顔には哀愁が漂っている。

「はい」

 短く告げ、ティアラは美しい淑女礼(カーテシー)を取った後、俺の方へ歩いてきた。

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