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(ギル。お前、滅茶苦茶目立ってるぞ。流石に負けたわ。牽制もそこまで行くと病的っていうか。しかもルアーナ嬢のドレスやアクセサリーもお前がやらせたの? サファイアだらけ。俺は知ってたよ? お前がルアーナ嬢を溺愛してるって。でも全身婚約者の色って……お前、二度と俺に『愛が重い』とか言うなよ)
若干引いている殿下の心の声が聞こえて、羞恥で目を逸らす。
「ルアーナ嬢、デビュタントおめでとう」
心情は一欠片も表に出さない。
優雅で完璧な微笑を浮かべ、殿下がアイリーン様を連れて、俺達の所へ来た。
「ティアラ、おめでとう。ふ……二人とも素敵ね」
(す、す……凄いわね、ギルバート! 『俺は君のもの』。全身から伝わってくる。いつもクールなのに……こんなに色を合わせてる人、初めて見た!)
アイリーン様は驚きが隠しきれていない。
……そうですよね、俺も見た事ありません。
今更ながら恥ずかしくなってくる。
(ティアラの格好は自分でしたのかしら。それともギルバートに頼まれて? 『俺の色にして』なんて言ったりしたの……? 初々しい二人だからこそ、驚いたわ。どちらにしても良かったわね、ティアラ。大好きな人からこんな風に愛を伝えて貰えて)
聞いているだけで照れてしまう。
「髪飾りもリボンもよくティアラに似合ってる」
「ありがとうございます!」
アイリーン様が褒めると、ティアラが嬉しそうに笑った。
「……ギル、後で部屋を貸そうか?」
小声で囁かれて、思わず殿下を睨む。
何を勘違いしているんだ、殿下は。
(おいおい。睨むなよ。不敬だぞ?)
ご機嫌な様子で聞かれる。
また面白がって……! 公の場でやめてください!
(ギル、お前、いつから、そんな情熱的なタイプになったんだ。王子でも目指してるのか? でも、まぁ……ルアーナ嬢も嬉しそうだし、良かったな)
悪戯っ子のように殿下が笑う。
人前で表情が崩れるのは珍しい。
(本当にやめろよ。からかいたくて、突っ込みたくて、爆笑したいの、必死に我慢してるんだ。俺が今まで必死に培ってきた王太子のイメージが壊れるだろ。後で反省会だな……)
なんて勝手なんだ。
殿下はこういう人である。




