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最初は手を繋がれた。
(バート様の手が好き。大きい掌。長い指、綺麗に揃えられた爪。私を撫でてくれる優しい手が大好き。キスの前に唇にそっと触れる触り方も好き。さっきのキス、ふわふわして幸せだった……)
心の声が聞こえてしまい、ゴクリと息を呑む。
次に腕、肩、背中に触れられる。
これはただのスキンシップだ。俺は大人しくしていないといけない。
(バート様、本当に格好良い……いつもより近くてドキドキする)
……これ以上、目を見ていたら負ける。
そっと目線を逸したら、腕を掴まれた。
「バート様、顔を見せてください」
ティアラの台詞に困ってしまう。
「お願い……」
しかも、ここでお願い? 君は結構、意地悪だな……
俺は今、どんな顔を晒しているのだろう。
ティアラの前では格好良い男でありたいのに。
すぐには目を見られず、足元に視線は落としたまま。
「……バート様?」
声をかけられ、仕方なく目線を上げる。
(や……やだ……想像以上に可愛い顔をしてる! 真っ赤で少しむくれてるみたいな、ちょっと悔しそうな……こんな顔を私がさせてるんだ……)
ティアラの声が伝わり、押し黙る。
(私だけのバート様……)
カアッと体が熱くなる。
(好き。大好き、バート様……)
追い打ちをかけるように甘えるような声が聞こえてきて、クラクラしてしまう。
──でも俺だってティアラの可愛いところを見たい。
「もう一回キスして、ティアラ……」
俺の言葉を聞いて、色白な肌が紅潮する。
(な、何、その言い方……そんな声、聞いた事ない! む、無理……バート様の目が潤んだままだし! 色気を振りまかないで!)
「目をつぶってください」
恥ずかしそうに言われ、堪らなくなってくる。
キュンとして、どうにかなりそう。
「……照れてる顔、可愛いね」
そう伝えると、ティアラの顔が可哀想な位、赤くなる。
(何それ何それ! バート様もそんな風に思ったりするの!?)
いつも人の事可愛い可愛いって……
俺だって言われっ放しじゃないぞ。
(恥ずかしいけど、嬉しい! バート様も耳、赤くなってる。いつもクールで大人っぽくて包容力のあるところも大好きだけど、私にだけ見せてくれるこういう表情も好き……)
思わぬ返り討ちを喰らい、お互いに言葉がなくなった。




