プロローグ
ムーンライトノベルで連載していたもので、全年齢版です。
よろしくお願い致します。
──ずっと煩わしかった。
肩書きも、この特別な力も。
「レヴァイン君は将来は宰相なんだって? 才能が有って、羨ましいな」
(王太子と幼馴染かなんだか知らないが、調子に乗っていて腹が立つ。宰相の息子だからって、学院を卒業してすぐに補佐になるとか! ただの親の七光のくせに)
「レヴァイン様! 舞台のチケットがありますの。よろしければ、ご一緒しませんか」
(既成事実を作るしかないわ! 二人きりになって、暗闇で抱きつけば、きっと落とせるはず! 私も将来、公爵夫人よ!)
「僕はレヴァイン様を尊敬しています」
(彼は次期公爵閣下。行く行くは王太子殿下の側近になるだろう。今のうちに取り入って損はない)
「お慕いしております、レヴァイン様。どうか私の気持ちを受け取ってください」
(絶対に周りを蹴落としてみせますわ! なんたって、王太子殿下の側近候補ですもの! もし、そうなれば最高ですわね。公爵家に嫁いで、一生贅沢三昧!)
嘘偽りばかりの言葉。
聞こえてしまう悪意の声。
──富と名声が欲しい。
──憎い。妬ましい。
──利用してやろう。
自分に近付いてくる者が皆、敵であるように感じた。嫌悪感を隠し、今日も笑顔を作る。
無償の愛や優しさなんてどこにもない。言葉の裏には、常に偽善が隠れていた。
友人も恋人もいらない。
俺は人生を半ば諦めていた。