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第8話 スウィーツ合戦






「フレデリク、どうした?」




貴族にも物怖じしないリリは、早速、呼び捨てでフレデリクさんに話しかける。





「はい。実は今日、王城ではニコエル王女の15歳の誕生祭を行なっているのです」



「王女様の?」



「そうです。誕生祭ではいつも何かしらの贈答品をお持ちするのですが、今回は事前にリクエストがあったのです」



「リクエストは何だったのですか?」



「スウィーツです」



「えっ?」





私は王族・貴族の習わしを知らないが、普通、毒物混入を恐れて食べ物はご法度ではないのだろうか?





「毒物、混入」




リリも同じことを考えていたらしく、物騒な台詞を吐いた。





「王城に仕える者の中に、毒感知スキルを持ったものがいるのでそこは大丈夫です。ただ、それでも普通は食物を要望されることは稀ですが・・・」



「なぜ危険を冒してまで要望したのですか?」



「それは、今が空前のスウィーツブームなのです」



「はいー??」





スウィーツブームの言葉に、私は素っ頓狂な声を出してしまう。

この世界のスウィーツの始まりは、私達が作ったシュークリームとマカロンだ。



確かに毎日1,000人以上のお客様が来ていたが、それがブームになっていたのだろうか?





「何でも、マルヴィン王国でシュークリームとマカロンと言われるスウィーツが流行り、その話が今や各国に広がりつつあるのです」






あっ

やっぱり私達だ







「私はスウィーツという言葉は初めて聞きましたし、よく分からないのです。それで、数日前にアスラーニへ来てからスウィーツと名乗る物があったので食べたのですが、正直、何が美味しいのか分からず・・・」



「それ、スウィーツじゃない。小麦の塊」



「私もアスラーニに来てから間もないのではっきりとは言えませんが、リリの言う通りそれはスウィーツではないと思います」



「そうなのですか・・・。なら、不幸中の幸いでした」





少し笑みを浮かべたフレデリクさんに話を聞いたところ、王都アスラーニでスウィーツと呼ばれる食べ物は1人の貴族に全て買い占めされてしまったらしい。



その状況を受け、フレデリクさんを除く他の貴族は早々にスウィーツを諦め、通常通りの贈答品を用意しているそうだ。





「マルヴィン王国まで買いに行くことも考えましたが、手に入れられてもアスラーニまでは2週間以上かかりますので・・・」




フレデリクさんは、残念そうに俯く。




私達には『亜空間収納』があるが、普通には存在しないスキルだ。


氷魔法という手はあるだろうが、出来立てを保冷、もしくは冷凍して持ち帰った所で本来の味は出せないだろう。





「さっき言った。私達は、優しいぽっちゃりの味方」



「フレデリクさん。こちらを食べてみて下さい」




私は素早く『亜空間収納』から『シュークリーム』と『マカロン』を取り出し、フレデリクさんの前に置いた。





「こ、これは!!何という美しい見た目と甘い香り・・・」




護衛の1人が毒見のためか、皿に手を伸ばしてきたがフレデリクさんはそれを制止した。




「こんな素敵なお嬢様方が毒を入れるはずがありません。その可愛らしさは、確かに毒ですがね」




キザに思える台詞だったが、自然と言われると恥ずかしくなり、顔が熱くなる。



フレデリクさんはウィンクをすると、迷わずシュークリームを口に運んだ。




すると、体を震わせ、目を大きく見開くと、食べかけのシュークリームを右手に持ったまま、左手でマカロンを取って一口食べた。





「な、な、な、何という食べ物なんだーーー!!これが、スウィーツ!!」



「フレデリク様、貴族ともあろうお方が下品ですよ」




リリは悪戯に笑うと、護衛の2人にもシュークリームとマカロンをあげた。





「はぁふぅーーーー!!」


「あぁぁぁぁ、死んだじいちゃんが見えるーーー!!」





リリはその場でピースをする。

私もピースで返した。





「本当に素晴らしい。どうか、この本物のスウィーツを売っていただけないでしょうか?」



「構いませんよ」


「フレデリクになら、売る」



「おおー、ありがとうございます。これで、きっとニコエル王女も喜ばれる!!」



「フレデリクは、王女が好き?」




「な、なにを、何を言って、私なんて貴族位Cですし、デブですし、そんな」





再び悪戯な笑みを浮かべて放たれたリリの言葉に、フレデリクはあからさまに狼狽した。



あらゆる貴族がスウィーツ合戦から撤退するなか、誕生祭当日まで必死に探していた姿を見れば、答えはとっくに出ているけどね。




顔を赤くして1人呟き続けるフレデリクを微笑ましく眺めながら、私達はシュークリームとマカロンを200個づつ用意した。



王女様に献上する用は、リリが特別に豪華な器を作り、シュークリームとマカロンを詰めた。





商品を受け取り支払いを済ませると、フレデリクは深々と頭を下げてお店を出て行くが、足を止めてこちらに振り返った。





「そう言えば、こちらのお店の名前は何でしょうか?せめてものお礼に、王城で広めておきますよ」




私とリリはニコリと笑うと、声を揃えて言った。





「「スウィーツのマルティナ」」





★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★



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