第21話 計算外
▷▷▷▷アダミャン◁◁◁◁
マルヴィン王国の王女、エルマイナの実の弟であるアダミャン・イヘル・マルヴィン(貴族位A)。
「な、なぜだ!!なぜ、失敗したのだ!!」
スウィーツのレシピを奪うべく、アスラーニ王国の冒険者を第三者経由で雇い、『スウィーツのマルティナ』を襲わせた。
しかし、あの店主に冒険者達は不思議な魔法で拘束され、冒険者ギルドへ無惨にも打ちつけられた。
遠くから監視していた我は、その瞬間、慌てて王都を飛び出した。
あのように建物に体を打ちつけられては冒険者達は生きていないだろう。
それだけが不幸中の幸いだ。
生きていたところで、我の依頼だとは分からないだろうがな。
逃げるようにアスラーニ王国の王都を飛び出して数日、我は国境近くの街、ララーナに戻って来ていた。
こんな田舎に戻るはめになるとは、何とも忌々しい。
だが、ララーナと王都、休む間も無くララーナへと戻ってきたため、同行させている私兵も疲弊しきっている。
流石に落ち着いた環境での休息が必要だ。
途中、魔物の襲撃で数名失ったが、私兵は6名いる。
我を含めて7名。
手持ちの資金も少なくなってきたため、宿ではなく、それなりの屋敷で休む必要があると判断し、婚約者のウルラの元まで戻ってきた。
「まったく、食事と風呂、それに女。充分、休ませてもらわんとな」
領主邸の前まで来ると、馬車の中から私兵の1人にウルラを呼んでくるよう指示した。
しばらくして、ウルラと父でありこの街の領主が姿を現した。
それを見て、馬車から降りようとしたところ、領主邸から数十人の私兵が出てきて、直ぐにでも剣を抜けるよう手をかけた。
高貴な我に対する無礼を目の当たりにし、一気に血が上ったのが自分で分かった。
「王族に対するこの狼藉は何事か!!不敬罪を適用してもよいのだぞ!!」
我の発言にもまったく動じる様子のないウルラと領主は、私兵達に剣を抜くよう命じた。
「なっ!!貴様ら正気か!?」
「その言葉、そっくり返しますぞ。貴方様は指名手配されている身、もはや、身分など関係ない!!」
「し、指名手配だと!?」
「何をやったのか、自身が1番分かるのでは?」
指名手配・・・
予想していなかった自体だ。
冒険者が生きていて証言したのか?
いや、依頼自体は第三者経由にした。
それに、万が一にも依頼主が分かったとして、一塊の冒険者の言うことを信じるのか?
「し、指名手配??」
「どういうことなんだ?」
「あ、アダミャン様が?」
私兵達にも動揺が広がっている。
こいつらには何も教えておらず、我の護衛だけをやっていたのだからいきなり指名手配と言われればそうなるだろう。
「し、指名手配など、何かの間違いでしょう。それに、我はウルラの婚約者ですよ。婚約者に対して、この扱いはあまりにも酷いのでは?」
この状況を乗り切るべく、我は穏やかに語る。
しかし、ウルラと領主の表情はまったく変わらず、懐から1枚の紙を取り出した。
「マルヴィン王国並びに、アスラーニ王国の連名での指名手配書です。貴族への配布はもちろん、街中にも貼り出されておりますぞ」
「なんだと!!」
「それから、エルマイナ女王様に許可をいただき、あなたとの婚約は既に解消済みですわ。気安く名前を呼ばないで下さいまし」
「この女が!!」
領主の私兵が剣を抜いた状態で前に出る。
こちらの私兵は6人、且つ動揺している状態。勝ち目はない。
「おい、お前ら逃げるぞ!!早く馬車を走らせろ!!」
「私兵の皆様。ここで投降いただければ、あなた達への懲罰は不問と、女王陛下のお言葉を預かっています。どうされますか?」
ウルラの毅然とした物言いに、我の私兵達は互いに顔を見合わせ、腰に装備していた剣を地面に次々と置いていく。
「お前ら!!くそ!!」
我は私兵の1人から馬を奪うと、素早く跨って走らせた。
領主の私兵達が追いかけようとするが、馬を用意していなかったため、追いつかれることなく街を抜けた。
「どうしてこうなった!!たかだか店を襲っただけで指名手配だと!!くそ!!ガミルに連絡するしかないな」
休むことなく馬を走らせすること数時間、馬が限界を迎えたため、街道を外れた林の中で身を潜める。
直ぐに伝鳥を呼び出し、予算管理をしている大臣のガミルに送った。
『スウィーツのマルティナ』を追放する計画にやつも加担しているのだから、こちらに協力してくれるはずだ。
伝鳥には、リリーナから2日程の場所にある奴の別荘に向かうと記した。
ガミルの別荘があるのは、マルヴィン王国とアスラーニ王国の国境を跨いだ大きな湖がある場所だ。
ここは不思議と魔物が近寄らず、湖の周りに建売の別荘が20程ある。
だが、別荘を買ったのはガミルのみで、残り
19屋は買い手がいないため、隠れるにはうってつけだ。
なんとか別荘地帯まで辿り着き、空腹と喉の渇きを湖の水を飲んで凌ぐこと1日、ようやく馬車に乗ったガミルが到着した。
「遅いぞ、ガミル!!な、どうしたんだ!?」
馬車から降りて来たガミルは、両手を拘束され、後ろには3名の騎士が控えている。
だが、それだけではなかった。
タイミングを計ったように馬に乗った騎士数十名が我を取り囲んだのだ。
「ガミル?これは一体?」




