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第2話 1回目の追放





私達の返事を待つことなく、騎士達は踵を返し、この場を離れて行った。






「これ、きっとあれだよね?」



「違いない」



「営業許可取り消しの理由は分からないけど、どの道、潮時だったもんね」



「良いきっかけ」





私とリリは互いに目を合わせると、笑顔で拳を合わせる。



王都を出ようとしていたタイミングであったこともあるが、営業許可の取り消し理由も告げられない理不尽な扱いに、私もリリも心当たりが2つあったのだ。






1つ目は前世で殺された後、悪神様とお茶会をした時、今世に行く上での要望を聞かれたリリが『マルティナと同じ人生がいい』とお願いをしたこと。




マルティナとは、時空から現れた魔物に寿命を吸われ、老人化した私達姉妹に優しくしてくれたお兄ちゃんのような存在。



私もリリもマルティナのことが大好きだった。




そんなマルティナと同じ人生を願うのは、至極当然かもしれない。


ただ、マルティナは圧倒的な強さを有しながらも、なぜか2つの国で所属していたパーティーでそれぞれ追放されているのだ。






きっと、今回の出来事が私達の1回目の追放。









2つ目は、私達のお店の真向かいに半年程前にできた同業店の存在。




そのお店は、マルヴィン王国の女王、エルマイナ・イヘル・マルヴィンの弟で、貴族位Aのアダミャン・イヘル・マルヴィンが主人になっている。



女王であるエルマイナは人柄もよく、内政で結果を出していることから民の評判も良いのだが、アダミャンは所謂愚弟だ。



女遊びが酷く、仕事はしない、下の者への暴力など、聞こえてくるのは悪評しかない。





早々に王宮から追い出されたアダミャンであったが、野心やプライドは高く、王宮に戻れるアピール方法を考えていたらしい。



そんな時、連日他の街や国から人々が大勢押し寄せる私達のお店を見て、これはいけると感じたそうだ。



実際、王族・貴族の使者が買いに来ているし、アピールする場はあるかもしれない。



更に言うと、連日王都に1,000人以上が訪れるため、計り知れない経済効果が齎されるのだ。




そんな安易な考えで、真向かいに同業店を出したはいいが、閑古鳥が鳴いている。






因みに、このお話はお客様である貴族のご婦人達から聞いた。









「あいつは、バカ」



「酷い言葉だけど、私もその意見に賛成」



「砂糖なくして、スウィーツは作れない」




リリは腕組みをして、誇らしげに言った。




そう、砂糖がドラゴンの宝である以上、人間の市場には出回らない。


一応、冒険者ギルドはあるが、1番高いランクを保持している冒険者がAランクらしく、ランクSSのドラゴンを倒せるはずがないのだ。



故にこの世界にはこれまでスウィーツの概念はなく、私達が初めて齎したことになっている。







「前、マダムが言ってた。あの店のシュークリームは、ただの小麦の塊だったと」


「そうなるよね。砂糖もないし、レシピもないんだしね」





私達は、悪神様とお茶会をした時に出されたスウィーツ5種類のレシピをもらっている。

次いでに、マルティナに作ってもらった『鳥の唐揚げ定食』と『トンカツ定食』に関するレシピも貰った。











「今は15時か。暗くなる前に街を出る準備をしないとね」



「賛成と告げる」





私はお店に向かって手を翳すと、『稼働ハウス』クローズと唱える。


すると、目の前にあったお店は一瞬で『亜空間収納』に消え去り、辺りは更地となった。




『稼働ハウス』は私のスキルで、住居兼店舗となっており、いつでも出し入れが可能だ。






「よし、次は商業ギルドに行こう」



「再度、賛成と告げる」






私達がお店を出しているのは、マルヴィン王国の王都(王都名:マルヴィン)であり、ここにはあらゆる商売を管理している『商業ギルド』の本部がある。




お店を出していた場所から10分程歩くと、王都でも有数の大きさを誇る建物が見えてきた。



出入口にある両開きの扉は高さ5メートル以上あり、営業中は常に開かれている。



売上の報告や納税の関係で月に数回は訪れる場所だが、いつ来てもその煌びやかな内装、高い天井、綺麗な絨毯に目を奪われてしまう。






「ミミちゃん、リリちゃん」




少し離れたカウンターに座っているミライさんが、手招きをしながら呼んできた。


ミライさんはいつも私達の対応をしてくれている人で、20代半ばで長く青い髪が特徴の女性だ。





「今日はどうしたの?月初でもないし、売上報告じゃないわよね?」



「実は、王都から出て行くことになりまして」



「はっ??」




驚くミライさんに先程騎士に読み上げられた紙の控えを見せ、事情を説明した。






「私は何も聞いてないわよ!!しかも、この書状はなんなの!!罪状が書いてないじゃない」



「きっと、宿命」



「こら、リリ。宿命はともかく、言われたからには出て行きます」



「待って待って。ミミちゃんとリリちゃんのお店がどれだけこの王都を麗しているのか分かってないのよ!!あのポーションだってどれだけの人の命を救っているか!!私から女王様に嘆願するから、ね?」





ミライさんはカウンターから身を乗り出して、私とリリの手を握ってくる。


お店の開店や場所決めなど、ミライさんには色々お世話になったため、王都を出て行くことは心苦しかったが、私達の結論が変わることはない。





「アダミャンは女王様の血縁。もしかしたら、同意しているのかもしれないですし」



「旅立ちのとき」



「女王様はそんな方じゃないわ。だから、少し時間をちょうだい」



「ミライさん。ごめんなさい」





私は呟くように言うと、リリの手を取って足早に商業ギルドを出て行った。


ミライさんには申し訳ないが、万が一、書状に反したとなれば、平民は即座に斬首刑となるため、危険は犯したくなかったのだ。





商業ギルドを出て、私達は超スピードで移動して王都を囲っている高い壁まで来ると、止まることなく跳び上がって壁を越えた。



正規の通り門を潜って外に出てもよかったのだが、馴染みの門番さんに何か聞かれるのが嫌だった。



それにどうせ街の中を疾走しても、私達のスピードを捉えられる人はいないし、壁を跳び越えた方が追放者らしくていいしね。







「リリ、今度はどの街に行こうか?」





私は超スピードで並走しているリリに笑顔で話しかけるのだった。






★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★



今後の更新頻度、話数の参考にさせていただきますので、是非、感想や★マーク、どんな形でもいいので教えて下さい。


また、今後の更新間隔は現段階で未定のため、ブックマーク後に通知機能をONにして待っていていだけると嬉しいです⭐︎


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