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迷い悩む

ブクマありがとうございます!

お陰様でヒューマンドラマランキング70位に載ることができました!

一時とは言え、とても嬉しかったです(*^^*)

※後半付け足しました。

 《灼熱の女剣士》カミーユ。かつてそう呼ばれた名が示す通り、髪や目は炎のように紅く、その性格も一言でいえば熱血。


 犬歯を見せつけるように豪快に笑い、誰に対しても無作法な態度を崩さない豪胆な性格で、ドロシーの胸元までしか身長が無いくせに大剣を片手で使い熟し、嬉々として敵陣に猪突猛進する恐ろしい女傑だ。信念は『根性だ! やる気だ! 死ぬ気でやればなんとかできる!』である。


 ヴァーミリオン王国に腰を下ろすことにした弟子に、『また近々様子見に立ち寄らせて貰うわっ!』とグリエッタ男爵領を元気に立ち去った師匠だったが、その後六年間全く音沙汰が無い。


(正直、死んでいる可能性も否定できない)


 何故ならカミーユと出会ったは、アレックス・ワーグナー侯爵子息との婚約破棄後、グリエッタへの帰り道中で行き倒れていたのを発見した時なのだから。


(本当に死んでるかもわからない人を探すのは金銭的にも労力的にも辛い。根っからの自由人の師匠が仕事以外で一所に長居をすることはないから、居場所が分かっても、辿り着いた時にはもういない可能性は高い……)


 床を見つめて思考に耽っていた顔を上げる。カンナが不思議そうな顔で見ている。


(しかもこちらは足手纏いが二人……捜すのは至難の業……。……いや、待て、何も二人を連れ歩く必要は無くないか。ダンダリオンがカンナ殿とまかり間違うことは……。っていうか、ダンダリオン遅くない? まだ看護師に捕まってるのか?)


 そもそも、今日は報奨金受け取りと見舞いに来ただけだ。それなのに、突然傭兵団が解散して一人になったと聞かされ、話の流れで頼まれるままここまで来てしまっている。


 ダンダリオンが何処まで考えていたかわからないが、勝手に話を聞いてアレコレ考えるのは――本人がいつまで経っても来ないのも悪いが――依頼を奪う行為をしているようで気分が悪い。今日は切り上げるべきだ、と立ち上がる。


「お話はわかりました。一度、この件は持ち帰らせて頂きます。今度は依頼を受けた張本人と来ますので、カンナ殿は覚悟しておいてくださいね」

「?」

「では、ゴゲン殿。本日はこれで」


 言うが早いが病室を出る。先程の場所にダンダリオンはいない。ロビーに戻ることにする。


(しかし、探すの相手が師匠(ダンダリオンの想い人)とか、なんて女神の悪戯だろう。まるで餌で誘き出されている獲物の気分だ)


 道すがら後悔するが、もう遅い。捜す相手が相手なだけに、引き返し辛い所まで来ている。


 ダンダリオンとカミーユが恋人関係であったことは、傭兵団に入ってすぐに『こいつ元恋人! 今は良い仲間!』と当の本人から紹介されて知っていた。


 別れた理由はといえば、当初は全く興味無かったので知らない。恐らくカミーユの自由奔放な性格が原因では無いかとドロシーは推測している。傭兵団の仲間を捨ててカミーユに付いていく等、責任感の強いダンダリオンには出来ることではないと思っているからだ。


 しかし当時とは違い、今彼を抑制していたものは全て無くなった。


(もし今師匠と再会すれば、ダンダリオンは間違いなく師匠と共に歩むだろう。……私はどうしたらいい?)


 まずは言うか、言うまいか。

 

 正直なところを言えば、言いたくない。 


 思考が脇道に逸れ、複雑な心境を抱えたままロビーに到着する。先程のベンチにダンダリオンが所在なさげに腰掛けていた。


「お、おお、ドロシー。すまん、以前来たときにカンナ殿を怯えさせてしまってから、どうにも目をつけられてしまったようでな。他の患者や見舞い客の迷惑にもなるから、待つならここで待ってろと看護師に注意されてしまって……どうした?」

 

 聞いてもいないのに言い訳しだしたダンダリオンだったが、ドロシーの様子を見て怪訝そうに顔を覗き込む。


 ドクン、と心臓が大きく高鳴った。


 近付いた距離に動揺し、一歩下がって顔を背ける。


「なんでもない。考えを整理するから、ちょっと待って」

「ん? ――ああ、そうか。そうだな。移動するか」

「?」


 何かを悟ったような台詞にダンダリオンを見る。一瞬何処か別の場所を見ていたように顔を戻したのがわかったが、ダンダリオンは出口に向かって歩き出していた。


 方向を見ると、少し離れた場所で若い看護師たちがドロシーたちを不安そうな面持ちでドロシーたちを見てヒソヒソしている。それを見てハッと気付く。


 傍から見れば、悪漢に絡まれている女という構図。それを見掛けた看護師たちが何事か厄介を起こさないかと心配しているのだろう。


 己の見た目を理解しているダンダリオンはその心境を直感的に理解し、ドロシーから距離を置いたのだ。


 そういうことは、傭兵団に在席していた時分にはままあることだった。悪人面の三十四歳が連れ歩く十四歳の娘というのは、赤の他人の下賤な想像力を十分に掻き立てられるようで、酷い時には過度な正義感を抱いた輩によって警邏に通報されたこともある。ちなみに当時はドロシーがフードを被ったり、男装したりすることで解決した。


 しかし今回は、ダンダリオンに迫られて嫌がるような素振りを見せた所為でダンダリオンが傷付いてしまった。


 看護師たちにくたばれ、と怒りを込めて睨み、出口に向かうダンダリオンの腕を取る。

 

「何処か、二人で落ち付いて話せる場所に行こう」


 驚いた顔で見下ろしてきたダンダリオンを真っ直ぐ見て言う。何か言われる前に視線を出口に向け、ズンズンと先に進んだ。


 ダンダリオンという男は、どこからどう見てもまごうことなき悪人面である。内面は善人そのものだが、荒くれ者揃いの同業者すらこの顔と体格に威圧され、緊張を走らせること必死。


 しかしドロシーからすれば痘痕も靨(あばたもえくぼ)。髪の毛先から爪先まで、全てが魅力的であった。


(こう言うのなんだけど、あんなガサツ適当猪師匠の何処が良くて何十年も想えるんだ? 私の方が……)


 良いのでは、と思ったが、果たしてそうだろうか? カミーユとドロシーの性格は異なれど、目的の為なら手段を選ばない方向性は似ている。それに、師に対して文句は多々あれど、自分とて家族の為とはいえ物事を損得で取捨選択しているような褒められた性格でないことは自覚していた。それが彼にとって果たしてどう見えているのか……考えるのは少し怖い。


 ならば女らしさ……と、小柄な割に大振りなカミーユの胸元を思い出し、自分のささやかな胸を見下ろして沈黙。


 戦闘能力については、言わずもがな。四英雄相手にまるで勝てる気がしない。実際、手合わせでは一度も勝てたことがなかった。


(強いて勝てる点を挙げれば……若さ? ダンダリオンに通じるのか?)

「……ロシー。……ドロシー? 聞いているか?」

「えっ? あ、ああ、ごめん、聞いてなかった。何?」

「いや、落ち着いて話をするなら、俺が泊まっている宿屋に行かないかと聞いていたんだ」

「ああ、なるほど。そうだね……」

「その様子だと、俺の代わりに話を聞いてくれたんだろう? ゴゲン殿たちとはどこまで話をしてきたんだ?」

「え? 話をって、ダンダリオン、ゴゲン殿の容態を看護師とかから聞いてないの?」

「ああ。前に行った時は、部屋に入ってすぐカンナ殿に半狂乱になられてしまったんだ。その声を聞きつけて来た看護師長に追い出されてな。今回も部屋に入るまでのお膳立てを頼むつもりだったんだが、待ってる間にまた看護師長に見つかってしまって、ロビーまで戻らざるを得なかった訳だ」

「ダンダリオンを追い出せる看護師長凄いな。まあ、ゴゲン殿の容態も含めて、宿に行ったら話をするよ」

「了解した。面倒事に巻き込んでしまって本当にすまん」

「ダンダリオンからは謝られるようなことはされてない。気にしないで」


 申し訳無さそうに謝るダンダリオンに非が無いことを強調させ、手に力を込めた。

お読みいただきありがとうございました♪

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