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王からの祝辞と再会

表現に迷走中。取り敢えず生存報告もございます兼ねて短めです。あとあんまり物語動いてません(-_-;)


 ガルシア王の開会宣言が為されると、次は諸侯の王への挨拶だ。


 本来春告祭の挨拶は各公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、最後に辺境伯の順に高台の前に並び、各爵位の代表が王に祝辞を述べ、王がそれに返答し、パーティーが始まる形だ。


 しかし今年は王家誕生百周年を兼ねているので、王が各家の当主又は当主代理の名前を読み上げ、各爵位へ言葉を掛けるという手筈になっている。


 グリエッタ家は男爵位の中でも末端も末端なので、最後尾の横列の一番最後に並ぶ。隣はロガー男爵だ。


(ロガー男爵って結構地位低いのか……いや、グリエッタ領に近いんだから当然か。……っ!?)


 突然背後から鋭い気配を察知。殺気ではない。敵意でもない。されど友好的でもない。素早く背後を見やる。


 発信源はすぐにわかった。男爵位の少し後ろに並ぶ三人の男女。


 左右に無表情の中年男性、涼しい顔をしている若い女性を配置し、二人より一歩前に出ている険しい顔をした老齢の男性がいる。彼らは隣国ヤショダラとの国境を守護する辺境伯だった。


 王が十人弱の公爵家の名前を告げ、オーランド王子の婚約者の生家であるノーリス公爵家が代表となって祝辞を述べていた。


 公爵家が終わり、捌ける。侯爵家が前に出、それに倣って後ろに並ぶ貴族たちも前に出た。その間も感じる背後からの威圧。


「……後ろからの圧が凄いんですけど」

「そりゃあ、当然だよ。辺境伯たちなんだから……」


 小声でロガー男爵に話しかけると汗だくになりながら返される。


 高位の辺境伯が最後にくるのは、男爵家の対応がおざなりにされない為と、これを機に自家を王家に売り込ませないために、文字通り背後から圧力を掛ける意味があった。


 だから周辺の男爵たちの顔色が優れないのかと納得。ドロシーが肩を並べる男爵位の当主たちとは顔から雰囲気からまるで違う。流石隣国との国境を守る精鋭たちといったところだろう。明らかに辺境伯たちの風格に萎縮しているのが見て取れた。


(でも、何もそこまで怯えなくてもいいと思うんだけどな。悪いことをしてるわけでもないんだから)


 そう思いながら、再び肩越しに振り返る。


 ぱちっ、と老齢の辺境伯と目が合った。研ぎ澄まされた刃のような白銀の瞳だ。途端に老辺境伯の眉間の皺が深くなる。


(ヤバ)


 王の御前での無作法だ。流石のドロシーでも まずいとわかる。心の中で謝罪して黙礼して前を向き直った。一点集中されたようで背後からザクザクと刺さる視線。


 居心地が悪さを感じたまま、順番はついに男爵位に回ってきた。


(というか、ちゃんとグリエッタ男爵家呼ばれるのか?)


 次々と呼ばれる男爵家の名前を耳にしながら、突然不安が過る。例年不参加な上、グリエッタは王女の追放地として不名誉なことで有名な領地だ。この目出度い式典にはあまり相応しくない。とは言え、呼び出したのはあちら側なのだから……と、思いつつ呼ばれなかったらかなり恥ずかしい。少々ドキドキしながらその時を待つ。


「……男爵家。ロガー男爵領当主、イエル・ロガー。……グリエッタ男爵領当主、エーミール・グリエッタ代理ドロシー・グリエッタ」


 良かった、呼ばれた。内心ホッとしながら臣下の礼を取り、頭を上げる。


 ほんの一瞬だが、ガルシア王と目が合った。


 揺るぎない黄金の瞳が大きく見開かれたような気がしたのは気の所為だろうか。


(色んな人と目が合うな。呼んだのはそっちのくせに、グリエッタ家は珍獣扱いか)

「……余に代わり、領地を治めてくれて感謝する。下位貴族だからと腐らず、これからも努力と研鑽を積み領地を豊かにし、我が王国の発展に力を貸してくれ。そなたたちの今後の活躍を期待する」


 祝辞が終わると、再び臣下の礼を取り、男爵位たちも横に捌ける。

 最後は三人の辺境伯だ。


「……新たな春を、共に迎えられたことをお喜び申し上げます。また、ヴァーミリオン王家誕生百周年、誠に御目出度うございます。王家の御代が永久に続きますよう、我ら三家で力を合わせ、鋭意努力して参る所存です」

「ゲイブリー辺境伯当主ディオネル・レンスキー・ゲイブリー、スタキーノ家当主エレナ・レクシエル・スタキーノ家、インホルト家当主レオポルド・インホルト。此度はそなたら三家の当主と相まみえることができ、誠に嬉しく思う。国境を守る重要な職務を担うそなたらには、近年隣国への警戒に大きな負担を強いていることは心苦しく思う。しかし、国の為、国民の為、彼奴らの企みが白日に曝されるその日まで我らの剣となり盾となり、この国を守護してほしい。三家の隆盛が永久に続かんことを」


 老辺境伯……ディオネル辺境伯がニコリともせず淡々と告げる。だというのに、ガルシア王はどの爵位のときよりも確実に熱と心の籠もった言葉を三家に贈った。王家がどれほど三家に重きを置いているかわかる事柄だ。


 三家が臣下の礼を取ると拍手が起こり、以上で王から臣下への言葉は終わった。


 拍手が疎らになった頃を見計らって音楽が始まる。これから春告祭の本番ともいえるパーティーが始まるのだ。


 固まっていた貴族たちが各々動き始める。ドロシーも、ロガー男爵と共に元のテーブルに戻ろうと足を進める。


 だが途中、ロガー男爵に話しかける貴族に止められた。


「ロガー男爵、お久しぶりです。少々よろしいですか?」

「やあ、お久しぶりです。ええ、勿論ですとも」

「では、ロガー男爵、私は先に戻っていますね」

「ああ、すまないね」

「いえ、では失礼します」

「え、あ、ちょ……」


 止めようとする声を聞こえないふりをする。今のでっぷり太った貴族は同じ男爵位の男だが、ロガー男爵と話をしている所をチラチラと見ていたのにドロシーは気づいていた。理由はなんとなく想像がつく。

 

(見世物じゃないっつーの)

 

 ずっと感じる不愉快な視線の束に若干イライラを募らせる。何人か声を掛けてこようとするのを視界の端に捉えたが、歩いている筈なのに風のように滑らかに過ぎ去っていくドロシーを誰も止められない。


 もうすぐで着く。といったところで、前方を遮る人影。避けようとしながらその人物の顔を見た瞬間、ぴたりと足を止めた。


 ゆっくりとした動きで出てきたのは、線の細い銀髪の青年。目尻が垂れていることと少々猫背気味の格好の所為で、どこか気弱な第一印象が見て取れるが、容姿は悪くない。


 知らない人間ばかりだと思っていたが、今になってそうでなかったことを思い出す。


「……アレックス」


 複雑な思いを込めて青年の名前を呼ぶと、彼は指先で頬をかき、照れ臭そうに微笑んだ。


「……久しぶり、ドロシー。十年……いや、十一年ぶりかな?」

「……そうですね。私が家を出てからなので、それくらいでしょうね」

「あ、う、うん。そうだね、確かそうだった……」

「……で、なにかご用ですか?」

「い、いや、用というか……一応、僕達は()()()()なんだし、挨拶しあってもいいじゃないかな、と、思って……。一応、()()()……でも、あったんだし……」


 彼の口から出た二つの単語に、ドロシーの顔は酷く不愉快そうに歪んだ。

 

(私の髪の色すら覚えてないようなのに、よくもまあ再従兄妹だ婚約者だなどと言えたもんだ)

お読みいただきありがとうございました!!

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