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馬鹿な子ほど可愛い…?

2022/03/16 ヒューマンドラマ76位になりました!一瞬だったけど、十分嬉しかったです(*´艸`*)ありがとうございました!

今回は短めです。

 二度目の休憩の時だった。 


 一度目の休憩で一騒動が合った所為で、ドロシー一行に近付こうとする者はいない。


 とはいえ、遠巻きにしてはいるが気になっているような気配はそこかしこでしている。


 話題の渦中であるダンダリオン、ゴゲンは箱の中でアーサーと共に今後の話し合いをしているし、手綱を握っていたベラとキャシーにはこの後の戦いの為にしっかり休んでもらおうと箱に下がらせ、歩き通しだったエリオットは疲労困憊といった様子で草の上で大の字になって伸びている。


 故に、一人サンとリウに水を与えているドロシーに、ひそひそと囁く声の集中砲火が浴びせられた。


 別に他人にどう言われようが気にしない。言いたいことがあるなら文句だろうが喧嘩だろうが受けて立つのに、それすらしないで陰でコソコソするという行動こそ腹が立つ。


(下手に関わって天罰を食らうのが怖いのだろうが、怖いのなら最初から気に留めるなっての。玉の小さい奴ら)

 

 内容こそ聞こえないが、話す声が針のように刺さるが凄く煩わしくて苛々する。


 サンとリウが餌箱に頭を突っ込んでいる間に、幌馬車の横に転がっているエリオットを八つ当たりで足蹴にする。

 

「おい、いつまで休んでる訳? 雑用係なら仕事しろ」

「……誰の所為で、こんなに疲れてると思うんだよ……」


 余程疲れているのだろう。睨んでくるが声に元気がない。素直に驚く。


「は? 何、あんた、たったこれだけの距離歩いて疲れてるって?」

「た、たったとはなんだよっ。なら次はお前が歩けよっ」

「別に構わないけど、たったこれしきでゼーゼー言ってて戦えるの? よく今まで生き残ってたな」

「そ、それは……」


 普段は徒歩で移動し、グリエッタの山々も平気で一日中駆け回る健脚のドロシーだ。王都から西の森迄の平坦な道など屁でもない。


 それよりも、一度目の休憩から距離があったとはいえ、エリオットがこんなにも満身創痍になるのは不思議でならない。怒るでも揶揄うでもなく真面目な顔で尋ねたドロシーに対し、気まずそうに目を逸らしたエリオット。

 

「エリオットは戦闘に参加したことないわよぉ。いつも幌馬車で荷物番ばっかり」


代わりに答えたのは箱から出てきたキャシーだ。その言葉に目が丸くなる。


「……確か、ダンダリオンの弟子になりたくてくっついてるんじゃなかったっけ?」

「そうなんだけどぉ、見ての通りヒョロいし、体力無いでしょ? だからあれこれ訓練させようとしてたんだけど、ちょっと目を離すと、すぐサボるのよ。なのに、『手が痛くて〜』とか『他にやることあって〜』とか、しまいには『今日は全部やり切りました』とか言うもんだから、もう可笑しくて可笑しくて」

「え、バレて……。あ、いや、俺はサボってなんかいませんっ」

「私達に付いてきてもう一年経つのに、全然成長してないじゃない。そんなすぐわかるような嘘吐いて恥ずかしくない?」

「う、嘘なんて……。だ、だって俺は使用人の息子だったし……そんなすぐには成長なんて……」

「春から夏に季節が変わる頃には、どんな奴でもちょっとは使い物になるものよ、普通。ならないのは単にあんたのやる気の無さと努力不足。他の三人は優しいから世話してあげてるみたいだけど、私はあんたみたいな口だけで努力もしない子って嫌いなのよね」


 言い切ったキャシーの顔は笑っているが、目は笑っていない。あからさまに見下し、馬鹿にする悪意のある態度だ。男に戻って恫喝しているより、こちらの方が何倍も怖い。流石のドロシーも引いた。


 エリオットは顔を真っ赤にして涙目になって立ち上がり、キャシーを突き飛ばす勢いでどこかに走り去って行った。

 途端にスン、と表情を無くすキャシー。

 

「……びっくりした。キャシーってそんな性格だっけ?」

「いやぁね〜。私は元々好き嫌いはっきりしてるのよ。ドロシーは真面目な頑張り屋さんだし、見せたことがないから知らないだけ」

「さいですか……」

「私だって最初はちゃんと面倒見てたわよ。でも、あんな子でしょ? ちゃんと世話するの疲れちゃって。だからこうやって定期的にキッツいこと言って、頑張るもよし、辞めるもよしと思ってお灸を据えてるんだけど、結局誰かしら甘やかすから、あの子も調子乗っちゃって、効果ないのよねぇ」


 幌の中からギクッと狼狽した雰囲気が伝わる。


「……なんかもう、半殺しにしてベッドに縛り付けておけば?」

「ドロシーってば過激過ぎぃ。そんなことをダンダリオンが許すわけないでしょ」

「そりゃそうか。でも、そろそろ切り捨てる必要あるんじゃないの? 足手纏いでしょ、どう考えても」

「本音はね。でも居たら居たで役に立つこともあるのよねぇ、買い出しとか薪拾いとか」


 好き嫌いははっきりしてると言っても、何だかんだ発破をかけてあげているキャシーも甘いのではないだろうか。


(駄目な子ほど可愛い状態に入っているのでは……)


 護衛任務で、たまに『なんでこんな阿呆が可愛がられてるんだ』と思うような人間がいる。理由は千差万別だが、聞き齧った中から考えるとエリオットは『強がってるけど実は繊細で、母性・父性本能が擽られる』タイプなのだろうと推測する。


 ドロシーとしては、あれはただの自意識過剰な馬鹿だと突っ込みたい。しかし、思えば傭兵団は皆独身子無しで、エリオットとは親と子ほど年齢が離れている。結婚も子育ても諦めて、エリオットで擬似子育てしている感覚になっているのではないだろうか。だとしたらどうしよう。下手過ぎでは?


 傍から見て上手くやってるようには見えない。さりとて自身も子育てを経験しているわけではないので口出しができるわけではないし……。


 ドロシーが悶々とした思いを感じたとき、不意に周囲にどよめきが起きた。なんだろうと視線を向けると、傭兵たちがドロシーたちがいる位置とは反対方向に体を向け、何かを見ている。


「何かしら?」

「さあ……?」


 凝視していると、頭の傭兵たちのいる場所を通ろうとする者がいて、そこに居た傭兵たちが道を開けているのが頭の動きからわかった。一体何なのだろうと待ち受ける。


 果たして、そこに現れたのは、すらりと背が高い美しい男であった。


 彼の姿を捉えた瞬間、キャシーが口元を押さえながら叫ぶ。


「ウソ、王弟様っ……!?」


お読みいただきありがとうございました!

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