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今年最後かもしれない日常と青春寫眞部  作者: 小久保
第1幕「再開と日常」
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第2話「とある部長の1日 放課後~」

第1話「とある部長の1日 新学期~」の続きです。

「真守〜、ホームルーム終わったことだし、早めに部活動行こう」

「そうだな。早めに行かないとまたあいつに怒られそうだ……」


 俺たちが所属する写真部には、一人時間に厳しい人がいる。それはいつも元気な顧問での瀧倉ではなく、俺のいるC組の隣、B組にいる、とある女子だ。なぜ文化部に居るのだろうかと不思議なくらい元気で、俺たちはよく彼女に引っ張られている。しかも、時間に厳しく、いつも怒られないようしているが、なぜか彼女は俺たちよりも先に部室にいるため、毎回怒られている。


「真守くんと、蒼太くん、来るのが遅い! ほら、カメラ持って、撮影行くよ!」


 案の定、始業式が終わった放課後でもお構いなく、俺らは彼女に怒られた。しかも、部室に来て早々彼女は撮影に向かおうと催促している。どれだけやる気なのか。


「日野鷺来るの早くない? 俺らのクラスがホームルーム終わったとき、A組まだやってなかった?」

「だって真守くんたちよりも近道、しかも急いで来たからね。全くもう、部長の真守くんが早くこないとだめだよ?」


 日野鷺美優。この写真部に所属する唯一の女子である。ひときわ目立つ赤い短髪に紫色の瞳が特徴。いつも一番に部室に来てはカメラの手入れをして、俺たちが来るのを待っている。因みに副部長。流し撮りだけは誰にも負けない自信がある。


「ちなみに今日は弓道部に行くから、ほら早く準備して。カメラは用意しておいたから」

「了解。ところで、美優、弓道部は承諾取った?」

「取ったよ! 弓道部の部長のゆーちゃんがたまたま私と同じクラスで、撮影許可お願いしたら快く受け入れてくれた! ちなみに身長が高くて茶髪なのが特徴だよ」

「なるほど……、わかった。それなら早めに行くか」


 写真部が他の部活動の写真を撮影することは比較的珍しいものではない。ただ、この学校は元々生徒数が少なく、それ故に部活動の数が少ないのだ。そのため、他の部活動を撮影することが比較的珍しく、俺は久々の他の部活を撮影するため、少し楽しみでいた。


「用意できたなら行くよ!」


 そうして俺たちは愛用の一眼レフを肩に掛け、予備のバッテリーをブレザーのポケットに入れ、弓道部の活動場所へと向かった。弓道部の活動場所は、写真部の活動場所のある情報処理棟から大きく離れた場所にあり、いちいち屋外に出て外を歩く必要がある。


「今日こそは弓が飛んだ瞬間を流し撮りしてみせる!」

「お前は矢だけを撮ろうとするな。ていうか無理だろ」


 いつ弓から矢が放たれるかも予測できないのに、それを流し撮りするという強気な意気込みをする美優。ただ、成功する確率は正直無謀である。


「いや私は撮れるもん! ほらこれ証拠」


 そういって美優は実際に撮った写真を見せて自慢してくる。恐ろしいことに矢が放たれた瞬間で、かつ流し撮りでうまく撮れている。マジでコイツ化け物やな。


「というか、着いたね」


 話を続けていると、いつの間にか弓道部の活動場所に着いていた。何とも言えない小屋のような活動場所に毎回驚くが、一番驚くのは、ドアの横にインターホンが付いていることだ。美優は躊躇いもなくそのインターホンを押す。すると中から女性の声が聞こえ、ドアが開いた。 


「いらっしゃい! みーちゃん、待ってたよ。それと真守くんと蒼太くんもこんにちは」


 そこに出てきたのは、弓道衣に黒色の袴を着た一人の女性。身長が高く、茶色の長い髪に紫色の瞳。この人が美優の言っていた弓道部の部長、結衣さんだろうか。


「こんにちは、部長さん。少しばかりお世話になります」

「了解! ところで真守くん、今日は弓道部のほか何か撮る予定?」


 なぜ俺に? と思ったが、俺が写真部の部長ということを美優が言っていたのだろう、そんな雰囲気に納得した。


「特に行く予定は今のところないですね。何なら美優が弓道部に許可を貰っていなかったら多分暇してたかなと思います……」


 なぜか蒼太がそれは違うと言わんばかりの表情で俺の方を見てくる。ただ、よくよく考えれば、何となく蒼太が伝えようとしたことが分かった。


「なるほど。じゃあ、弓道部でゆっくり撮影していくといい」


 すると早速美優が流し撮りを撮影しようとカメラを構えだす。そして、弓が放たれた瞬間と同時にシャッターを押した音がするも、自身のない表情でカメラを確認している。


「じゃあ、美優も撮影してるし、俺たちも撮影するか」

「そうだね。真守はどう撮る? 全身を撮るか、弓を弾いたところを撮るか」

「俺は慣れるまで構図は気にしないで撮影しようかな」

「了解! じゃあ俺は向こう側で撮ってるね」


 俺たちも美優に倣って道場の端でカメラを構える。的に狙いを定め、矢を弾く表情。一つ一つの動作を俺は一枚ずつ写真を撮影していく。斜めから、後ろから、何回も試行錯誤する。弓を構えた時の静けさの中にパシャパシャと写真の音が響く。弓が放たれた後も気になる瞬間があれば迷うことなくカメラのシャッターを切る。


「真守~、いいの撮れた?」


 満足そうな顔をした蒼太が一眼レフを片手に近づいてくる。どうやら、彼曰く、ご満足の一枚が撮影できた様子。


「俺も撮影は十分かな。あとは美優次第だな」

「でも良かったね、多分弓道部来てなかったら忙しくなってたと思うよ……」

「だからあの時苦い表情してたわけか。まあ確かに忙しくなるわな」


 ちなみに大体の要因は美優である。部活動に熱心すぎて、夜遅くまで撮影することが多く、その際俺たちも付き合わされるというわけ。しかし、実際弓道部で撮影できたのも美優のおかげであり、何とも言えないのが現状である。


「あれ? 二人はもう撮らないの?」

「俺たちはもう満足の行く写真撮れたからいいかな。美優はまだ撮影するのか?」

「まだバッテリーの予備があるし、時間もあるから私は最後まで撮影する予定!」


 美優は会話をしながらカメラのバッテリーを交換し、再び撮影へと戻っていく。本当に熱心すぎて逆に見習いたくなってくる。


「これは、……いつものパターンだね」

「そうなりそうな展開というか、多分ほぼ確実だな……」

「そういえば、真守、今年の部活動紹介どうする?」

「まだ決めてない。でも、次回の部活動で決める予定かな」


 そうか、部活動紹介のこともあるのか……、何だかんだ今年は忙しくなりそうだ。

 こうして俺の高校生活最後の青春が幕を開けるのだった。

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