表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今年最後かもしれない日常と青春寫眞部  作者: 小久保
第1幕「再開と日常」
2/5

第0話「まもたん」

こんにちは、立ヶ瀬です。

新作ということで、週1くらいで投稿していきます。


テーマとしては、日常系だけど、ちょっと忙しい的な?(語彙力)


今話は、主人公が幼馴染と再会するけど、主人公はわかっておらず、最後に気づく的な感じです。


追記

・2021年6月8日 誤字脱字を修正したほか、文章の追加などを行いました。

 青春最後の年となる少し前の春休み。

 中学時代からほぼ毎週の日曜日の楽しみとなっていた、自宅から蓑山公園までのサイクリング。3月下旬ということもあり、ハンドルを握っている手が寒さでほんのりと冷たい感覚が伝わる。それ以外は特に何事もなく、蓑山公園まで走り切り、公園にある展望台から景色を眺めていた。


 その時、背後から女性の声が聞こえてくる。


「あ……あの、すみません。写真、撮って頂けませんか?」

「いいですよ~」


 写真撮影のお願いはよくあることで、特に気にもしない俺は快く彼女のお願いを引き受けた。

 まあ、ぶっちゃけ、一眼レフを肩にかけているからなんだと思うけど。


「こ、これでお願いします」


 彼女は灰色のコートのポケットからスマートフォンを取り出し、俺に手渡す。

 触れた感じとても小さい。見た目に傷はなく、むしろ新品のような美しさを放っている。


「どこで撮りますか?」

「あの端っこの場所がいいです」


 彼女が人差し指を向けた方向には、蓑山公園通の俺くらいしかしらないであろう、絶景ポイントが見られるお気に入りの撮影ポイントがあった。しかも、指を向けた時の彼女は、なぜか俺の目を見て微笑んでいた。


「いいところ指しますね! 了解です」


 俺はたまたま偶然だろうなと思いこみ、そこまで気にしてはいなかった。

 しかし、何故かこの時の俺は妙にテンションが上がり、いつもとは違ったような感覚だった。


「私はこちらから撮りますので、準備OKでしたら言ってください」

「OKです……」


 彼女の返事とともに俺はカメラの視点を彼女に合わせる。

 立ち姿は上品かつ、やや落ち着いた清楚な印象が目に映る。


「じゃあ、いきますよ~。3、2、1」


 カシャ。

 カメラのシャッター音が鳴る。


「これでいいですか?」


 先ほど撮影した写真を彼女に見せると、またしても俺の目を見て微笑んだ。

 多分、良かったのだろう。と、勝手に判断することにする。


「ありがとうございます」

「ところで、このスマホってとても綺麗ですね。新品みたいです」


 やばい。ついつい余計なことを口走ってしまった。

 いつも以上にテンションが上がっていた俺は勢い余って、見ず知らずの彼女に余計なことを質問していた。


「……よく言われます。でも、このスマホ、もう5年くらい使っているんです」

「長い間、大切に使っていらっしゃるんですね。俺なんて1年使ってもうこんなボロボロですよ」


 ズボンのポケットから液晶がバキバキに割れたスマホを取り出し、彼女に見せるとやや少し笑った。


「バキバキ凄いですね……やっぱり落とした、とか……ですか?」

「そうですね〜。写真を撮影するときにうっかり落としたりして画面を割ってしまったのが多いですね」


 この時の俺はテンションも下がりいつも通り話していた。その後も写真のことなどについて語り合い数時間が経った。


「今日はありがとうございました。また会ったら宜しくお願いします」

「わかりました。帰り道ご気をつけて」

「はい。――まもたん。またね」


 彼女は微笑みながら小声で「まもたん」というどこか聞き覚えのある言葉を言い残して去っていく。


 まもたん?


 あれ? どこかで聞き覚えがある。どこか、どこだ……。

 考えれば考えるほど、俺の奥底に眠っていた遥か昔の記憶がよみがえっていく。まもたんという言葉、それは俺のあだ名であり、幼馴染のとある一人の女子が言っていた言葉。

 その子の名前……なんだ、思い出せない。

 名前。

 名前。


 なま……はっ!?


「純恋!?」


 俺はその名前が分かった瞬間、彼女の名前を呼ぶが、もうそこに彼女はいなかった。

感想等お願いします。今後の投稿頻度の励みになる可能性があります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ