転生 2話
目の前がぼやけて、全身麻酔をした時のように意識がすっと消えた。
ー体が冷たく、肌寒いのを感じた。意識が薄っすらとあり、布団をかけようと手探りで探そうとしたが、思うように手が動かせないのを感じた。状況を断片的だが理解することが出来た。俺が赤ちゃんになって、新しい生を預かったことに。しかし。すごく気味が悪い感覚だった。そして、すごく背中とお尻がゴワゴワしている。草のようなものだろうか?芝生の上に寝転がった時の感覚に似ている。そんな感覚を感じているうちに意識が鮮明になってきて、俺は自室で首を吊ったことを思い出した。「そうか、死んだんだったな」俺は少し悲しい気持ちになった。ゆっくりと目を開けようとした。けれども、目が重くて思うように開かない。しかしながら、何故記憶が残っているのかが不思議だった。俺が思うに生まれ変わったとしたら記憶はリセットされるものではないのかと。その時、優しい女の人の歌声が遠くで聞こえた。声だけで彼女がかわいくて優しい人に違いない。そう思わせるようなとてもやさしい歌声だった。俺は声の聞こえた方向に頭を回した。「その人はお母さんだ」直感的にそう感じた。俺の目はゆっくりと開いた。「え?」口があんぐりとなった。その人は...いやその生物はアニメやゲームで出てくるような正真正銘のゴブリンだった。大混乱した。俺は自分の体に目を落とした。「いや、めっちゃ緑色なんだけど!!」しばらく思考した。「俺も...ゴブリンなのか?」「ていうか、本当にゴブリンとかって存在すんのかよ」「地球以外にも生命が生息できる地があるのかよ」「てかここ洞窟じゃんか。家はどうしたんだよ」
もうグッチャグチャだった。まあとりあえず異世界に転生したと考えるのがキャパの限界だった。
見ているとこのゴブリンはやはりお母さんのようだった。哺乳瓶らしきものを片手に持っていて、服装はすごく軽装で草や皮を使って作った簡素なものだった。そして、哺乳瓶らしきものの中に真っ黒の液体が入っている。すごく怖い。あれは地球でいう牛乳みたいなものなのだろう。すると、彼女は目を覚ました俺に気が付いて、小走りで駆け寄ってきた。そして、ほし草のようなもので作られたベットで寝ている俺のほうまで来てはその哺乳瓶を口に突っ込んだ。これは飲んだらまずいと思い、咄嗟に吐こうとしたが、口の中でコーラに似たようなカラメルの味が広がった。「あれ、うまいやん。てか近くで見たら以外にも綺麗なゴブリンだ」なぜかそう思ってしまった。同族だからなのだろうか?と考えているうちに、彼女は俺をお姫様抱っこしてほっぺにキスをした。彼女は優しく包み込むような声で耳元に「おはよう、アレク」と囁いた。俺は頬に涙が伝うのを感じた。