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妹を探して。



公爵家の娘として、この2人も王妃の座を狙っているだろうか……。


2人にその気がなくても、父のヴィンセント公爵にはその気があるかもしれない。


それとなく、探ってみようかな。


「そういえば、もう王子たちに挨拶はしましたか?」


「えぇ、お姉さまと私は早く到着したので、先に挨拶を済ませましたわ。」


やっぱり、出遅れてしまったようだ。


「マリーたちは、まだ行ってないの?今するのは少し厳しそうだけど……。」


何度見ても、王子たちがいるであろう場所に令嬢がたくさんいるのは変わらない。


令嬢が多すぎて、むしろいるのかさえわからない。


でも、レニーを連れて行かないことには何も変わらないわ……。


「レニー、挨拶に……。」


私と手を繋いでいたハズのレニーがいない。


ミシェルとダニエルを見ると、2人は友人と話していたようだ。


「あれ、気づかなかった。マリー、一緒に探そうか?」


リリアンさまとビビアンが心配してくれた。


「いえ、ガオも一緒だと思うので大丈夫です。ミシェルとダニエルが戻れば、ここで待つように言ってくれますか?」


2人に頼んで私は、ガオとレニーを探すことにした。




どこに行ったのかしら……。


チョコレートさえあれば大人しくしていると思ったけど、レニーの好奇心を侮っていたかもしれない。


庭園の方へを歩き回っていると、私の元へガオが来た。


「レニーはどこ?」


ガオは、少し走りこちらを振り向いて私を待った。

ついて来いってことよね。


ガオの後をついて行き、入り組んだ庭園を進んで行く。


すると、ガオがなんの変哲もない垣根の方を向いて座り込んだ。


「ガオ?」


なんでこんな場所で座り込むのだろう。

ただの、垣根よね……。


こんな場所に入って行くのは、流石のレニーでも無理だろうし……。


一応触って、枝が折れていないか、人が入った形跡を確認をした。




「何をしている?」


振り向くと、そこにはグラントリア国の第1王子チェイス・グラントが立っていた。


レニーに会わせたかった攻略対象だ。


ぶっきらぼうで、他人にも自分にも厳しいキャラクター。

女性に関しては特に関心がなく、あまり近づけない硬派なタイプだ。

でも、一途な性格で不意打ちに弱く赤面するシーンが可愛かったなぁ。


金髪にグレーがかった青い瞳は、確かに攻略対象の中でもカッコイイ。


ガードが固く、心を開くまで時間がかかるのでヒロインによっては攻略に随分手こずった……。


「聞いているのか?たしか…そのオオカミの神獣はアストレア公爵の……。」


父は公爵として城に頻繁に出入りしているので、ガオを知っているのかな。


とにかく質問に答えないと……。


「はい。アストレア公爵の娘マリーです。妹のレニーを探しています。」


同級生だけど、初等部は男女でクラスがわかれているので私のことなど覚えていないだろう。


「では、入口のようなモノが見えるわけではないのか?」


入口?こんな所になんの入口があるんだろうか……。


「はい。私は、神獣の後をついてきただけです。」


チェイス王子は、少し残念そうなほっとしたような表情をした。


あまり、私と話したくはないかもしれないが……。


「入口とはなんですか?どこに続いているのです?」


チェイス王子は、少し悩んでから話だした。


「古い本によると、ここに神獣の住処へと通じる入口があるという。しかし、もはやおとぎ話に近いので無駄足だったな。」


チェイス王子は、妹が見つかると良いなと言ってその場を去ろうとした。


やっぱり、助けてはくれないわよね……。


ガオも動かないし、どうすればいいのかしら。


そんなことを考えていると、いきなり垣根が光だし目の前が真っ白になった……。


「えっ、なにこれっ!?」


「おいっ、逃げろ……。」


チェイス王子の声が聞こえたが、怖くて逃げられずに、しゃがみこんだ。




「お姉さま?どうしたの?」


「えっ……。」


目を開くと、そこには探していたレニーと妹に抱っこされているホワイトタイガーの赤ちゃん?いや、ホワイトタイガーはシマシマだったはずだし、真っ白なトラ?あれっトラとタイガーって一緒だったっけ……。


「大丈夫か!?」


チェイス王子が私に駆け寄り、今はそんなことを考えている場合ではないと気づいた。


「レニー、1人で勝手に行動してはダメだと言ったでしょう!」


思ったよりも大きな声が出たことで、私は心配して怒っていたことに気づいた。


「……ごめんなさい。」


とにかく、レニーを見つけられて良かっ……。


「その腕に抱えているのはなんだ?」


そうだった。そのトラなのかライオンなのかわからないネコ科の動物をどこから連れて来たのか聞かなくては。


「その中にいたの。」


レニーが振り返って指をさすと、さっきまで普通の垣根だった場所から光が放たれていることに気づいた。


ネコ科の動物は、レニーの顔をなめると光の中へと入って行った。


なんなの、一体何が起こっているの…?


「その中は、どんな場所だったんだ?他にも生き物がいたのか?それに……。」


チェイス王子の質問は止まりそうになかった。


「あの……。遮って申し訳ありません。妹が混乱しているようです。」


彼もレニーが首をかしげているのを見て我にかえったようだ。


「すまない……。レニー嬢だったかな?中は、どうなっていた?」


「…広くてきれいでした。」


あれ、そういえば神獣が住んでるって言ってなかったかしら。


「チェイス王子。先ほどの生き物は……。」


「おそらく、本の通りだ。」


レニーが神獣を使えるってこと?でも、元の場所にあのネコ科の動物は戻ったみたいだし……。


乙女ゲームの設定では、そんな要素あったかしら。


でも、そもそもこの年齢のイベントはゲームに登場していないし、特別ルートなら神獣が出てきていたのかな。


レニーは、何が起こっているのかも自分がどこへ行ったのかも多分わかってないだろう。




「あっ、やっと見つけた。なかなか戻って来ないから探したよ。」


ミシェルとダニエルがやってきた。

私たちが戻らないので、探しに来たんだろう。


「チェイス王子?ここで何を?」


ダニエルが、チェイス王子を見て驚いた。

まぁ、こんな場所に3人でいれば不自然か……。


「いや……。」


チェイス王子もさっきの話を2人に話していいのかわからないみたいだ。


「レニーを一緒に探してくださったのよ。ありがとうございましたチェイス王子。」


「あぁ、…構わない。」


とにかく、一旦帰るのが得策だろう


「すぐに追いかけるから、レニーを連れて先に行っていてくれる?」


ミシェルとダニエルは、少し不思議そうな顔をしたがレニーを連れて行ってくれた。




「ウソをつかせてすまない。」


「いいえ、構いません。私も、弟たちに説明ができませんし……。どうされるつもりですか?」


さっきの出来事を王族が知れば、レニーはどうなってしまうのか不安になった。


彼女にチェイス王子を攻略させたいとは思ったが、不自由にさせたいわけではない……。


「もし、神獣ならレニー嬢は王族や教会に監視されることになると思う。古い本にしか載っていないような神獣に会っただけでなく、向こうの世界へ行ったのだから……。」


やっぱり、そうなのね。


「報告されるのですか?」


もちろん、国の王子として国王に報告するのは当然だろうが……。


できれば、どうにか阻止する方法がないだろうか。


「いや、報告する気はない。だが……個人的に話は聞かせて欲しい。」


100%信用できるわけではないけど、ここで断れば国王に話すかもしれない。




1番の得策は……。


「レニーには、私から話しを聞くことにします。ですから、後日学園で報告しても構いませんか?」


「あぁ、もちろん。それで構わない。」


チェイス王子が承諾してくれたので、私はとにかくレニーたちと家に帰ることにした。


妹を幸せにするのは、正直簡単だと思っていたけれど思ったよりも大変なのかもしれない……。


でも、どちらにせよ可愛い妹だ。


わずか1日で諦めるわけにはいかないわ!




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