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妹を茶会へ連れて行ってみせる。



朝目覚めた私は、真っ先に妹の元へ向かった。


ドアをノックしても返事がなかったので、そのまま入ることに。


ネコのチッチと一緒に眠っているレニー。


確かにゲームで見たキャラクターのように、柔らかくカールのかかったミルクティー色の髪の毛。


くっきりとした二重が開くと、透き通るような青い瞳が私を見て少し細くなった。


「…お姉さ…ま?」


眠たそうな目をこすり、レニーが体を起こした。


「起こして、ごめんね。」


レニーは、少し寝起きが悪い……というより、しばらくチッチを抱えて動かなくなるのだ。


「だいじょ…ぶ。」


少し寝ぼけたような表情で、レニーは微笑んだ。


見れば見るほど、レニーは乙女ゲームのキャラクターそのものだった。


綺麗に育つことはすでにわかっている。


問題は、王子にどうレニーをアピールするかだ……。


「乙女ゲームってなぁに?」


独り言を言っていたことに気づき、思わず口をふさいだ。


幸いレニーは寝ぼけているし、そのまま流すことにした。


じっくりとレニーを観察する。


やっぱり、姉としての贔屓目を抜きにしても他のヒロインと比べてもレニーが見劣りすることはない。


ほっぺたなどもぷにぷにで、真っ白な肌は透き通るように綺麗だ。



「マリーお嬢さま、何をしているのですか?」


ドアを開けたロゼが驚いている。


レニーの顔を触りたくっていた私を見てびっくりしたのだろう……。


なぜだか、レニーは嬉しそうに笑っている。


「早く、起きたからレニーを見に来たの。」


「マリーお嬢さまがご自分で起きたのですか?」


私は、基本自分で起きることはない……というか朝が苦手なのだ。


「…これからは、早起きしようと思って。」


もちろんそんな気はないが……誤魔化せただろうか?


「それでは、明日からはマリーお嬢さまを先に起こしますね。いつも、学園へ行くのがギリギリですから。」


ロゼがにっこりと微笑んだ。


もっとマシな言い訳を思いつけば良かった……。


私が黙り込んでいると「マリーお嬢さまは、早く朝食を食べて準備をしなければいけませんよ」とロゼが言った。


「準備……?」


今日は学校もないし、父との買い物は昨日行ったし……。


「王家の茶会に招かれているのをお忘れですか?」


そうだった……。


ん?ちょっと待てよ。


王家の茶会ということは、王子たちが来るということだ。


「レニーは、行かないの?」


ロゼは、その言葉を聞いて少しため息をついた。


「レニーお嬢さまは、まだマナーを覚えきれておりません。粗相があっては困りますし、人見知りです。何より目を離すとすぐにどこかへ……。」


確かにそうだった……。


乙女ゲームの中のレニーは、恥ずかしがりやで姉のマリーを慕うキャラクター。

しかし、特別ルートを攻略していないので詳しい性格までは把握できてない。


なにより、私が見て来たレニーは人見知りのくせに好奇心旺盛だ。


目を離すとすぐにどこかへ消え、興味のあるモノしか見えなくなってしまう……。


そのせいで、街へ一緒に行った時は大変なことになった。


でも、他のヒロイン候補たちに出し抜かれるわけにはいかない。


できれば、今のうちにレニーと王子をきちんと出会わせてしまいたい。


「私がきちんと見張るから、連れて行ってはダメ?」


真っすぐロゼの目を見てうったえる。

彼女はとても優しい性格をしていて、私たちに甘いのだ。


「お願い。ロゼ。」


渋々ロゼは、父が了承すればレニーを連れて行っても良いと言ってくれた。




父の仕事部屋に向かうと、中には母親とローランがいた。

仕事部屋に来ることは滅多にない。


父の机には、書類が積み上げられていた。


そういえば、父の仕事をきちんと知らないな……。


まぁ、ひとまず茶会のことを話さないと。


「お父さま、レニーを茶会に連れて行きたいのです。」


父と母の目が丸くなった。


「レニーを茶会に?でも…行きたがらないんじゃないか?」


「そうね。人見知りだし…それに今日はアーティも同行できないし。」


ロゼと同じことを心配しているのか……。


「レニーも、もうすぐ学園へ通うことになります。人がたくさんいるところに慣れるべきではないでしょうか?」


これなら、父と母も何も言えないだろう。


「んー。そうだが……。」


あと、一押し何かあれば良いんだけど……。


「面白そうだね。僕たちが、きちんとレニーを見張るよ。」


そう言ったのは、ミシェルだった。


母と顔を見合わせた父は、自分の神獣でもあるガオを連れて行くのを条件にレニーの茶会への参加を認めた。


「では、ドレスをご用意します。」


ロゼが、早速レニーのドレスを準備しに行った。


「でも、あの子行きたがるかしら?」


許可さえおりたなら、こっちのモノだ。

レニーを説得する方法なら、すでに考えてある。


レニーの部屋に再び戻ると、彼女はチッチにブラシをかけていた。


「ねぇ、レニー。お姉ちゃんと一緒に茶会へいかない?」


何の躊躇もなくレニーは、嫌だと言った。

断られることはわかっていた。


「でも、レニーもお姉ちゃんよね。小さいローランのお手本になってあげるべきじゃない?」


末っ子のローランは、まだ3歳だけどレニーは姉として彼の前だけはしっかりする節がある。


ローランは茶会へは行かないけど、この作戦なら……。


「……チッチは?」


「ダメです。」


否定をしたのは、ロゼだった。


「チッチは、家の中が好きなのでレニーお嬢さまが茶会に行ってもここで待っていますよ。」


黙り込んでしまった。


「レニー、お茶会には大好きなお菓子があるぞ?」


振り向くと、ドアのところにガオを連れたダニエルがいた。


「なんのお菓子?」


「チョコレートだよ。」


後から来たミシェルがにっこりと微笑んだ。


「…行く。」


ナイスアシストだわ。流石私の弟たち。


「では、着替えの準備をしましょう。マリーお嬢さまも、メイドがすでに部屋で待っています。」


ロゼに言われて私は、自分の部屋に戻った。


とにかく、第一関門は突破できた。


お茶会で、しっかりとレニーを見張りなんとか王子とお近づきにしなくては……。



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