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妹の熱と母の再会。



マリーは、予想通り本を読み終えた。

もう少し時間がかかると思ってたけど……。


ロゼのコンタクトは、もう必要なさそうね。



バンッ(ドアを開ける音)


「っ一体どうしたの……。」


「申し訳ありません…。レニーさまが……。」


焦るロゼの後ろから、アーティがレニーを抱えてやってきた。


「珍しく、チッチがレニー様の側を離れ私の元へやってきたので探しに行ったんです……。すると、レニー様の体が浮いていて……。」


ロゼは、動揺していてしどろもどろに説明をする。


「どうされますか?相当な熱だと思いますが……。」


レニーを抱えているアーティが私に言った。

確かに、凄い熱だわ……。


宙に浮いていたのだとすれば、私では……。


「ロゼ、毛布を持ってきて。アーティは、レニーを馬車に乗せてくれる?」




馬車に乗り込む私にロゼは、自分が目を離したせいだと申し訳なさそうに謝った。


「あなたのせいではないわ。大丈夫よ……。子供たちには、何も言わないで。」


「……かしこまりました。」


レニーの体を毛布でくるんで抱きかかえる。

アーティが変わろうとしたけど、大丈夫だと断った。



馬車が目的の場所へと到着した。

アーティを外で待たせる。



ここは、妖精たちの暮らす森で人は基本的に入ることができない。

精霊使いの血を引いていても、入れない人もいたそうだ……。




「熱が出たようだな……。」


「イヤーカフのせいですか?」


妖精王が、私たちを迎えた。

来ることを知っていたのだ……。



レニーの体が浮いていたとロゼは言っていたから。

きっと、妖精たちがレニーの熱を治そうとしてくれたんだろう。



「イヤーカフで、魔力を抑えたのが原因だろう。ふふっ、隠していることがあるだろ?」


妖精王は、私の方を真っすぐに見た。


「お前は、幼い娘の魔力を隠す為にイヤーカフが欲しいと言ったなアイリーン。でも、本当の理由は他にあるだろう。」


妖精王は、レニーの体に手をかざして熱を取り除いていく。


「…この前、レニーは入り口を見つけて神獣を抱えて出て来たそうです。」


「そうか。なるほどな。」


妖精王はレニーに着けたイヤーカフに手をかざしている。



「お前も知っているだろう。神獣と我ら妖精の魔力は違う。お互いに干渉することはできないぞ。」



「えぇ、知っています。けれど、この子を国から守る必要が……。」



神獣と妖精では、源にしている魔力が違っている。

妖精が自然の力だとすれば、いわば神獣は謎が多くいわば神の使いのようなモノだとされている……。



「王族に過敏になる気持ちはわかるが……。逃げれるモノではないぞ。いわば、運命なのだからな。」



確かに過敏になっているけれど、王族に対してだけではない。

運命か……。

せめて、この子が自分の身を守り選ぶことができるようになるまでは……。



「もって、10年だろう。それまでに、覚悟を決めることだ……。」



妖精王は、レニーの魔力を抑え込みつつ自然に流れるようにしてくれた。

いわば、抑え付けれない分を自然に消費し続けるようにしたのだ。



「ふふっ、持て余すようなら、ここで預かっても構わないぞ。」


「そんなことをすれば、アレクセイがおかしくなってしまいます。」


一瞬考えたけれど、やっぱりそういうわけにはいかないだろう。



「あぁ、にこやかなわりに嫉妬深い男だからな。魔法を使うようになったのであろう?」


「……はい。」


やっぱり、すぐにわかってしまうのね。


「気になっているのなら、一言謝ればいいだろう。まぁ、いつでも来るいい。」




確かに、一言謝れば許してくれるかもしれない。

もし許してくれないとしても、謝るべきだろうな……。


馬車に戻ろうとしていた私は、足を止めた。

向こうがこちらを見ているのはわかっていたからだ。




「ごめんね。ティア……。あなたを傷つけたわ。」



昔、私は側にいてくれた親友に酷い言葉を言い放った。

人間のどうしようもない争いに彼女を巻き込みたくなかったからだ……。

でも、アレクセイたちによって救われた。

何度も会いに来ようと思ったけれど、勇気が出なかったのだ。



「…何年、待ったと思ってるんだよ。」


目を開くと、目の前に可愛くて優しい親友がいた。


「……ティア。」


開いた目から涙がこぼれ落ちた。


「全く……。お母さんになったのに、泣き虫なのは変わってないね。」


言葉が詰まって上手く出てこない。


「怒ってないよ。なんであんなことを言ったかわかってるから……。でも、頼ってくれなかったのが悔しかっただけなんだ。」


「…もう1度、側にいてくれる?」


「ふふっ、仕方ないなぁ。」


ずっとさみしかった。

私の可愛い妖精の親友。




「やっとか……。ティアは、何度も屋敷を見に行っていたんだぞ。」



妖精王がいきなり姿を現すのは、何度見ても驚く……。



「王さまっ、それは……。」


ティアは、恥ずかしそうにしている。

内緒にしておいて欲しかったのだろう。全く気付かなかったわ…。



微笑んだ妖精王が手をかざし、指を鳴らすと森の外に出ていた。


「っ……。奥様、レニーさまは大丈夫ですか?」


アーティは、すごく驚いたが平然を装っている。


「大丈夫よ。今日は、念のため部屋で過ごさせるわ。」


顔色が大分良くなったから、大丈夫そうね。

ティアが、小さな手でレニーの頭を撫でている。


マリーが帰ってきたらアナスタシアの話しをしなくちゃ……。





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