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命令と決意



兄のウォルトには、会場にいてもらう必要がある。

恥をかいたが、自業自得としか言いようがない。


国王「これ以上、ウォルトに恥をかかせるつもりか?」


国王は、ウォーレンに小声で告げた。


ウォーレン「僕に王冠を受け継がせようと思っていらっしゃるなら、この場を納める力量を皆に示す必要があります。」


ウォーレンは、にこやかな表情を崩さず答えた。

緊張しているが、ここで怖気づくわけにはいかない。


国王「面白い。――では、お手並み拝見といこう。」


国王は、自分の玉座へ戻った。


ウォーレン「皆様には、お見苦しいモノをお見せしました。――ウォーリア国の恥を晒す結果となり申し訳ございません。」


足が振るえているが、緊張ではなく高揚感かもしれない。


ウォーレン「残念ながら兄は、王座に就くべき人物ではなかったようです。――それならば、ウォーリア国の王に誰が相応しいのか?疑問を感じている方もいらっしゃるでしょう。」


この日の為に、準備してきたんだ。

レニー、どうか僕に幻滅しないで欲しい。


ウォーレンは、静かに振り返り衛兵へ合図を送った。



――――――――――――――――――――――――――




2年前パーティーの後にマイル家を訪れた僕は、図々しくも彼らに協力を頼んだ。


ナタリーとカインとマイル公爵。


彼らは、国に忠実な人物でもあり、王家とも親しい間柄だ。


ナタリーは、指示通りにレニーへの手紙と一緒に僕の手紙を送ってくれた。


彼女と会うのは、学園の中でも人が立ち寄らない庭園。


ウォーレン「お待たせしました。――手紙は届きましたか?」


ナタリー「えぇ、中身は見ていません。」


手紙の内容は、僕の予想を超えて満足出来るモノだった。


ウォルト「絶好のタイミングですね。――今日、マイル公爵と会うことは出来ますか?」


ナタリー「大丈夫だと思いますが……。国王は?」


ウォルト「今、来賓があるので、国王は城を出ることはないでしょう。」


会談中は、衛兵もそっちに集中している。

後は、見張り役のジルをどうするかだけだな。


時間を決めた僕は、ナタリーと別れた。


ジル「お迎えにあがりました。」


ウォーレン「ジル、話しがあるんです。――僕と一緒に乗ってください。」


ジルは、少し驚いた表情を浮かべ返事をした。


ウォーレン「ジル、僕の計画に気づいているだろう?」


全貌に気づいていないだろうが、僕が動いていることを知っている。


ジル「……。」


ウォーレン「何故、国王に告げ口をしないんだ?」


ジル「私が下された命令は、貴方様の見張りではなくこの国の害になりゆるのであれば……。」


ウォーレン「ふふっ、殺せと言われたか?」


グラントリアから帰国して、僕の付き人になったジル。


ジル「知っておられたのですね。」


グラントリアへ送られた時から、僕は軽視されていることに気づいていた。


ウォーレン「君の動きは、衛兵や執事たちとも違っている。――すぐに気づくさ。」


噂しか知らなかったが、国王は影で孤児たちを暗殺者や兵士として育てる機関を持っていると聞いたが、多分ジルもその1人だろう。


ジル「判断は私に任されています。――なので、告げ口しなかったのです。」


ウォーレン「僕が害ではないと判断したのか?」


ジル「はい……。」


ウォーレン「僕が、グラントリア国と繋がっているとしてもか?」



ジルの表情がゆがんだ。

彼の年齢からすれば、グラントリアとの戦争で親を亡くした子供だった可能性がある。

ジル自身は違ったとしても、敵として教育されているかもしれない。



ジル「確かに、仲間の中にはグラントリアとの戦争で親を亡くした者もいたでしょう。しかし……。」


ウォーレン「しかし?」


ジル「パーティーで見たグラントリアの方々は、聞いていた人物像とは全く異なっていたのです。――それに、ある女性から優しい女の子の話しを聞いてしまったのですよ。」


ジルは困ったように微笑んだ。


ウォーレン「ある女性?」


ジル「えぇ、ウォーレン王子もお会いになったでしょう。――アストレア家のメイドです。」


レニーの元へ駆け付けたあのメイドか。


ウォーレン「尋問したのか!?」


ジル「ふふっ、大丈夫ですよ。――彼女は無事にアストレア家へ戻りました。」


ウォーレン「それは、良かったが……。何故、逃がした?」


あのメイドが無事に戻ったのは良いことだが、スパイを放っておいたのは不自然だ。


ジル「彼女を捕らえれば、火種になりかねません。――それに、ウォーレン王子もあの令嬢に嫌われたくないのではないですか?」


ウォーレン「なっ……。」


ジル「ふふっ、すぐにわかりましたよ。――私が邪魔なら、このことを国王に言えば処分されるでしょう。その際に、貴方様の秘密は漏らしません。」


ジルは、真っ直ぐ目を見つめて来た。


ウォーレン「このまま、国王の指示に従うと良い。――この国の害になると判断すればお前が僕を殺せ。」


ジル「本気ですか?」


ウォーレン「あぁ、構わない。――協力するか、殺すかの判断は委ねよう。」


ジル「では、その計画とやらをお聞かせください。」


ジルは、にやりと笑った。



計画を話すと、ジルは大声で笑った。



ウォーレン「子供の戯言だと?」


ジル「いいえ、気に入りました。――貴方様が信念を貫くのであれば、お供しましょう。」


ウォーレン「さっそく、今日マイル公爵家へ行く。――あと1つ頼みがある……。」


ジル「かしこまりました。――さっそく明日から取り掛かりましょう。」




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