婚約者
部屋に戻って来たレニーは、何か考え事をしていた。
サーリア「プロポーズでもされたの?」
チェイス「ゴホッゴホッ……。」
サーリアの発言で、チェイス王子がむせてしまった。
ロベルト「兄さん、大丈夫!?」
レニーは黙っている。
マリー「レニー?まさかほんとうに……。」
フィン「レニーさま。話しかけられていますよ。」
フィンの呼びかけで、ようやくレニーが気づいた。
レニー「何の話ですか?」
サーリア「だから、プロポーズでもされたの!?」
レニー「誰にです?」
サーリアが深くため息をついた。
レニーは、いつも通り考え事をしていて話を聞いていなかっただけなのだ。
フィン「レニーさまが難しい顔で戻って来たので、ウォーレン王子にプロポーズでもされたのではないか?とみなさん心配しておられるのです。」
レニー「ウォーレン王子が私にですか?――そんなわけないですよ。」
レニーがクスクスと笑いだした。
そんなわけないと思っているのは、レニーだけだろう。
レニー「あっ、でもしばらく滞在しないか?とは言われました。」
「えっ!?」
私だけじゃなくて、他のみんなも驚いていた
コンコン(ドアをノックする音)
「失礼いたします。戴冠式の会場までご案内致します。」
レニー「さぁ行きましょう。――後でお話しますね。」
どういうことか聞けないまま、戴冠式の会場へ向かうことに……。
国王「集まってくれたこと感謝します。――みなさん戴冠式まで、存分にお楽しみください。」
相変わらず、胡散臭い感じの人だわ。
ミシェル「…戴冠式ねぇ。」
ミシェルが呟いた。
マリー「ん?どうしたの?」
こちらを見るとミシェルはにっこり微笑んだ。
ミシェル「なんでもないよ。――さぁ、レニーをしっかり見張ってないと。」
気のせいかしら?
マリー「そうね。――魔法を使ったら髪の毛の色が戻るみたいだし……。」
どんな話しをしたんだろうか……
あんまり聞くと、おかしいかもしれない。
ビビアン「チェイス王子、気になるのはわかりますが、ダンスに誘わなくて良いんですか?」
ビビアンがチェイスに声をかけた。
チェイス「えっ……。いや、別に。」
ドナルド「意地を張るのは結構ですが、ウォーレン王子だけでなく、サシャ王子に……。」
ドナルドの視線が止まった。
チェイス「どうした?」
ドナルドの視線の先を見る。
チェイス「ザンダー王子か……。」
ウォーリアの同盟国だから当然と言えば当然だが……。
正直レニー嬢だけでなく、みんなに近づいて欲しくない男だな。
レニー嬢の元へ近づいているのか。
チェイス「行ってくる。」
ドナルドは、ひらひらと手を振った。
余裕ぶりやがって、マリー嬢に関係することで今度仕返しでもしてやらないと……。
ガシッ(腕を捕まれる)
「やっと見つけましたわ。――さぁ、私と踊ってください。」
チェイス「……モリー姫。申し訳ありませんが、」
モリー「まぁ、同盟国の王子が私のダンスを断るの?」
そうきたか……。
周りにも見られているし、仕方ない。
チェイス「では、お手をどうぞ。」
すでに、握られているが……。
モリー「感謝しますわ。」
何も無ければ良いが……。
モリー「全然こちらを見てくださらないのね。――そういえば、あの子は元気?」
チェイス「あの子とは?」
モリー「ふふっ、出来損ないを預かってくれているんでしょう?」
もしかして……。
モリー「そちらの国にあの子がいても、ウォーリアからすれば取るに足らない存在よ。」
下手なことを言えば、アンリが国にいることを認めることになる。
チェイス「何のことかわかりませんが、ウォーリア国は我が国に思う所がおありですか?」
モリー「さぁどうでしょう。――でも、あなた方の特別な力があれば……。」
カンカンカン(ベルの音)
モリー「まぁ、お兄様ったら気が早いんだから。――また後でお話しましょう。」
何だったんだ……?
「何が始まるんだろうね?」
ビクッ
チェイス「ザンダー王子……。」
ザンダー「ハハッ、そんなにビックリしなくてもいいじゃないか。――君に話しがあってね。」
チェイス「話しですか?」
ザンダー「あぁ、でも何か始まるようだね。」
会場がざわついている。
チェイス「一体何が……。」
ウォルト「お騒がせして申し訳ありません。――僕の戴冠式が始まる前に、皆様に聞いていただきたいことがあるんです。」
国王「何をするつもりかな?」
国王が冷たい視線をウォルトに向ける。
ウォルト「お父様、僕は国王になります。――それに従って、本当に相応しい婚約者を皆様に発表したいと思いまして。」