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聖女とは


馬車に揺られ、神獣と戯れる姿を見ているとまるで緊張感がない。


銀髪になってしまった髪の毛も綺麗だが、前の髪の毛の色が見れないのは少し残念だな。


それにしても……


「レニー嬢、やはり何も教えてくれないのか?」


あの後、俺たちは部屋を出されてしまった。

ライラ嬢と教会の人間。公爵と王妃と国王だけで話しをしていた。


なぜ、自分まで出されてしまったのか。


「えぇ。なるようになるでしょう。」


いたずらに微笑む彼女は、いつものように何を考えているのかわからない。


もしかすると……


「信用していないのか?」


思わず、口から出てしまった。

王子として、男としてレニー嬢にはまだ信用されていないのかもしれない。


「まさか、そんなわけありません。――ただ、チェイスさまは本当のことを話してくだされば良いのです。」


「本当のこと……?」


石碑であったことか?それとも司祭のことか……。


「ふふっ、すぐにわかりますよ。――きっとあなた様なら大丈夫です。」


自分でもなぜかわからない。

これから何をするのかも知らないのに、彼女に大丈夫だと言われると心が軽くなる。


俺よりも小さい体で、魔力だけではなくどれほどの力を秘めているのか……。


「まったく、まだまだ遠いな。」


「ん?もうすぐ着きますよ?」


青く綺麗な瞳がキョトンとしている。

会場のことを言ったのではないのだが……。


「ふふっ、そうだな。」


街は、想像以上に賑わっていた。

聖女を待つ人々の活気が溢れかえっている。


「さぁ、こちらへどうぞ」


俺とレニー嬢と別の馬車で来たライラ嬢は、壇上へと案内された。

ミシェルやマリ―嬢たちは、壇上の下で見守っている。


「ライラさま。――背筋を伸ばし、きちんと前を見据えてください。」


レニーがライラの背中に手を当てた。


ライラ嬢の手が震えている。

大丈夫なのだろうか。


「私とチェイスさまが側にいます。」


レニーは微笑み、ライラの手を握った。


「どっちが聖女になったの?」

「レニーさまでしょ?」

「いや、ライラさまじゃないのか?」


人々が口を開く。

会場が一気にざわつき出した。


「皆さんご存知の通り、本日儀式を行いました。」


教会の人間が話し出した。

騒いでいた国民の視線が集まる。


「儀式の結果、どちらも聖女には選ばれませんでした。」



――――――――――――――――――――――――――――――


「あの子たちは、上手く立ち振る舞えるだろうか。やはり、我々も……。」


「大丈夫ですよ、国王。――そうだろう、アレクセイ?」


確かに、レニーの案は無茶苦茶だが……。


「あぁ。あの子は、やると言えばやる子だ――どれだけ止めてもな。」


まったく、誰に似たんだろうか……。


「コホン。――それで、謝罪は?」


アンガスがわざとらしく私を見る。

あぁ、ずっと神獣とレニーのことを隠していたのを怒っているのか。


「爵位を奪い、罪にでも問うか?」


「まったく……。――思っていたよりも大きな隠しごとだったぞ。」


アンガスは、呆れて大きくため息をついた。


「罪に問うといっても、レニー嬢は危害を与えたりはしていませんし……。――厳密には、神獣や魔力を申告しろという決まりはありませんからね。」


ドリューが苦笑いをしている。


「……すまなかったな。――何も聞かずいてくれたこと、感謝する。」


アレクセイが視線を逸らす。


「ふふっ、相変わらず素直ではないな。」


「アンガスもドリューも笑うな。」


アンガスとドリューがクスクスと笑っている。


「楽しそうなところ申し訳ないが、レニーのあの髪の毛や力や額の文字に関してはどうするのだ?」


エンバーがアレクセイに問いかけた。


「確かにそうですね。――正直、レニーに本気を出されれば……。」


「お前でも止めることはできないだろうな。」


アンガスの言った通りだろう。俺だけでなく、魔力では誰も敵わない可能性が高い。

それに、少し気になることが他にもあるしな……。


「レニー嬢自身もですが……。――ただでさえ力の強いアストレア家が、更に力を得たとなると他の貴族たちも穏やかではないでしょうね。」


領地を持たずに、商売や外交などで他の公爵とパワーバランスを保ってきたが……。

バーンズの様子を見ると、内心穏やかではないだろう。


それに、神獣と会ったのは知っていたが、2匹とは想定外だったな。

ガオの様子からすると、もしかすると……。


「アレクセイ、どうやって守る気なんだ?――お前たちがよければ……。」


「安心しろアンガス。――策ならあるさ、それにレニーをまだ嫁にやる気はない。本人にその気がない限りな。」


そうはいっても、すぐに噂は広がるだろう。今まで以上に、子供たちとの婚約を望む者が増えるのは確実だな……。


「あらあら、残念だけとチェイスが頑張るしかなさそうね。」


キーラがクスクスと笑い、アンガスがため息をついた。


「そうだな。――アレクセイ、これからは何かあればすぐに知らせろ。」



――――――――――――――――――――――――――――――――


「どういうことだっ!聖女を決めろ!」

「私たちを見捨てるつもりなのか!」


国民がざわつきだす。まぁ当然だろうが……。


「そもそも、皆さんが言っている聖女とは、どんな存在でしょうか?」


レニーに視線が集まる。


いくら公爵令嬢とはいえ、これだけの人の視線を浴びて平然としていられるのか。


「導いてくれる人?」

「助けてくれる人?」


子供たちがレニーに質問をした。


「どうしても、聖女が必要?」


笑顔で子供たちに問いかけた。

子供たちは、顔を見合わせている。


レニーは、ライラの方を見た。

ライラは頷き、1歩前に出た。


どうするつもりなんだろうか。


「皆さまに聞いて欲しいことがあります。――私の話しを聞いてくれますか。」


ライラが手を握りしめた。


「おい、まさかっ」


「チェイスさま。――しっかりと見ていてください。」


ライラ嬢を止めようとした俺を、レニー嬢が止めた。



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