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妹の為に、本を読破した。



学校から帰宅すると、玄関でアーティとレニーとチッチが待っていた。

ニコニコしている様子を見ると、何かを企んでいるのだろうか……。

前に待っていた時は、手に珍しい虫を持っていた。

ただ見せたかっただけのようだけど、私は虫が嫌いだ。

あの時は、ダニエルでさえ、レニーから距離を取りミシェルに追いかけまわされていた。




ダニエルの方を見ると、同じことを考えていたようで顔がこわばっている。


「おかえりなさいっ!」


「ただいま。…後ろに何を持っているの?」


するとレニーは、手を前に出す。

また、虫かもしれない……。


「……えっ?どうしたのそれ。」


手には3つのアクセサリーが握られていた。


「お母さまにもらったの?」


ミシェルがレニーに尋ねた。


「ううん。お姉さまとお兄さまにあげるの。」


「奥様と一緒に、作ったそうですよ。」


アーティが私たちに言った。

レニーは、私にイヤリングを渡してミシェルとダニエルにもアクセサリーを渡した。


「レニー、指にはめてくれる?」


ミシェルは、レニーに手を差し出した。

すぐに付けてしまったけど、私もレニーにつけてもらえばよかったわ……。


レニーは、ミシェルの中指に指輪をはめた。


「その横でも良かったんだけどね。」


そう言ったミシェルは、レニーのほっぺたにキスをした。


「おいっ」


ダニエルがミシェルをにらんだ。

ミシェルは、指輪をはめてもらった方の手を見せてダニエルを煽る。


「ダニエル兄さまは、レニーとお揃いなの。」


その言葉で、ダニエルの表情は一気に砕けてレニーを抱き上げた。

私たちが喜んでいるのを見て、レニーも嬉しそうだ。


ダニエルの手を離れたレニーは、アーティから何かを受け取ってそのまま屋敷の中に走って行った。


「何を渡したの?」


「ミシェルさま、心配しなくても大丈夫ですよ。」


どういう意味だろうか?

ミシェルには、レニーが受け取ったのが何か見えたのかしら。




レニーにイヤリングをもらった私は、ご飯を食べてからアナスタシアの日記を持って書庫へ行った。

少し、モチベーションが下がりつつあったけどイヤリングのおかげでやる気が出たのだ。


父からもらった辞書はとても便利だけど、どうしても見つけられない時にだけ使うようにしている。

子供の私には、圧倒的に知識が足りないし、この国のことを少しでも知っておいた方がいい。


アナスタシアの日記も終盤にさしかかった。




精霊使いのアナスタシアは、能力を受け継がない娘として家から見放されていたようだ。

森の中に行ったアナスタシアは、枝の折れかかった木を見つけ自分のリボンを巻いたそうだ。

その日から、その木が気になり毎日のように見に行くようになったアナスタシアは美しい青年と出会った。

ブランと名乗った青年と一緒に過ごす時間の増えたアナスタシア。




能力がなくても、きっと優しい人物だったんだろうな。

アナスタシアはブランに惹かれていたのかな……。

日記を元に物語にしたって書いてあったから、真実はわからない。




2人の時間は、彼女の義理の弟のエリオットのせいで砕け散った。

エリオットは魔力が高く、アナスタシアの家に養子に迎えられた少年だった。

彼は、ブランを見て人間ではないことに気づいてしまったのだ。

ブランは、妖精たちの王が人間に化けた姿だった。




それでもアナスタシアは、ブランに会いに行くのを辞めようとはしなかった。

エリオットがアナスタシアを止めようとしたことで、初めて彼女の魔力が発動し暴走してしまったのだ。


暴走したアナスタシアの魔法を止めたのは、妖精王だった……。

両親は、国から言われてアナスタシアをあっさりと差し出した。

国は、彼女の魔力を利用しようと考え地下へと投獄したのだ。

妖精王は、彼女の元へ現れた。

”そなたが望むなら、こんな国などいつでも消し去ってしまおう。

この手を取り、側にいてはくれないか。”




本のページはここで終わっている。

でも、残りのページがあったハズだ……。

背表紙のわりに、ページ数が少なくなっているのがわかる。




この後は、どうなったんだろう……。

十分に乙女ゲームにできるようなストーリーだ。

私ならどうしたのだろうか。

妖精王の手を取ってしまったかもしれない……。




「まだ、お眠りになっていなかったのですか?」


ロゼが書庫へやってきた。こんな時間になっていたんだ。


「もう、部屋に戻るわ。ロゼは、こんな時間にどうしたの?」


こんな時間に書庫に来るなんて、何か頼まれたんだろうか……。


「…いえ、少し調べたいことがありまして。」


どうしたんだろう。仕事ではないのかな。


「良かったら、この辞書を使って。知りたいことを、思い浮かべて手をかざしたらいいだけだから。」


「いえ、そんなわけには……。」


すごく遠慮されてしまった。


「じゃあ、使ってくれないと怒るわ。」


「…ありがとうございます。」


少し困りながら、ロゼは私に微笑んだ。

何を調べたかったんだろう。


とにかく、アナスタシアの日記は読破することができた。

明日母に読み終わったことを話そう。


質問したいことをしっかりと考えておかなくちゃ……。







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