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儀式-11



「部下とライラは何も知らず、本日の儀式を行いました。――すべて私の責任でございます。」


司祭が口を開いた。

それだけでは司祭がなんでこんなことをしたのかわからない。


許されないことをしたとしても、彼がそんなことをした理由をみんなも知るべき……。


「お父さま。――彼は、精霊使いのアナスタシアの義弟エリオットです。」


「そんなバカな、どれだけ昔の話だと思っているんだっ!」


公爵が声を荒げた。


「バカげた話ではありません。」


エンバー叔母さまが登場した。


「説明できるか?」


「はい。――結界が解けてから教会の地下室を発見しました。そこには、転生と蘇生だけでなく、未来を見る術式などがありました。そして、ポーションを作った痕跡も。」


「だからって……。」


「大昔にポーションの作り方は妖精たちによって処分されましたが、そもそも作っていたのは、エリオットだったのです。」


「事実か?」


国王が司祭に問いかけた。


「事実でございます。――妖精たちを捕らえ、私がポーションを作りました。」


ライラが妖精を捕らえていたことは、話さないつもりなんだわ……。


「なぜ、今更このようなことをした?――日蝕を利用する為か?」


「お気づきでしょうが、私は未来を見たのです。――しかし、私が見た未来は……全く別のモノでした。」


司祭にとって、レニーの成長や魔力は予見できなかったってこと?

ドナルドさまの言ったように、知らなかったからストーリーで登場しなかったのね。


「アナスタシアの復活か?」


司祭は、黙って頷いた。


「アナスタシアを復活させ、何をしようとしていたのだ?」


「……彼女を復活させ、アナスタシアを殺したこの国に復讐を。」


国王は、ため息をつき頭を抱えた。


「物語のことは知っている。――かつてこの国の王が過ちを犯したことも。」


国王からすれば、無責任に彼を責めることはできないのかもしれない。


「正直、姉は蘇生を求めてはいないと諦めようとも思いました。――しかし、この国は変わりはしなかった……。」


お母さまのことを言っているんだわ。

国王の兄が、お母さまの力を利用しようとしたことで彼は……。


バンッ(ドアの開く音)


「レニー!」


アレクセイがレニーに駆け寄り抱きしめた。


「お父さま、遅くなりました。」


「その髪の毛、どうしたんだ?――まぁ、似合ってはいるが……。」


「コホン、アレクセイ。」


国王が、少し困ったように咳ばらいをした。

確かに、親バカを発動している場合ではない。


レニーが神獣を連れていない。

どこかへ置いてきたのだろうか……?


「国王様。私が妖精たちを捕らえていました。――どうぞ、処罰を……。」


ライラが跪いて言った。


「彼女は、何も知りませんでした。――無関係でございます!」


必死に司祭が叫んだ。


「……レニー嬢、妖精たちの判断は?」


国王は、レニーに尋ねた。


「妖精たちに贖うチャンスを与えるとのことです。――命を無駄にせぬよう。と妖精王に言われたハズですか……。」


レニーがライラを見た。


「妖精王がそう言っているのであれば、我々が処罰を下すわけにもいかない。――かと言って、おとがめなしというわけにも……。」


国王は、困ったような顔をしている。


「甘すぎるのではないですか?」


カーライル公爵が言い放った。

確かに、何もなしと言うのは寛大すぎるかもしれない。


「レニー嬢に一任するというのは?」


キーラ女王が提案した。

それってもはや、無罪放免なんじゃ……。


「そうだな。――厳しい罰を頼むレニー嬢。」


国王は、にっこりと微笑んだ。


「かしこまりました。――ライラ嬢には、厳しい処罰を考えますわ。」


レニーも国王たちに微笑み返した。



「それで、司祭の処罰はどうします?」


「全て話したのですか?」


レニーは、司祭に問いかけた。


「復讐を企て、君たちを巻き込んだそれが全てだ。」


レニーは、国王の方を見た。


「それでは、不十分ですね。――国に愛する人を奪われた。これは皆さんご存知ですよね?しかし、アナスタシアはある条件を出されていたのです。」


「条件?」


チェイス王子が、レニーに問いかけた。


「彼女の魔力を牢屋に封じ込める方法などありませんでした。――だから、王家は逃げなければ家族の安全を保障すると提案したのです。もちろん、あなたの安全も含め。」


レニーは、司祭の方を見た。


今の司祭にとって、これ以上酷な話しはないだろう。

自分のせいで、アナスタシアは逃げることができなかったのだ。


国王たちは、黙り込んだ。


「しかし、彼女はとても賢かった。――誓いを結ばせ、戦争にも参加せずに家族を守る方法を見つけてしまったのですよ。」


「……もしかして。」


「そうです。牢屋から逃げず、戦争にも出ない方法。――それは、自らの終わりを迎えること。」


「……ふふっ、ハハハハハ」


司祭が、笑いだした。


「……まったく。――どこまで、彼女はバカなんだ……。」


彼の肩が震え、涙を流している。


「賢いあなたなら、きっとこの国を変えられる。――アナスタシアが妖精王に頼んだあなたへの伝言です。遅くなったことを謝っていました。」


今更、取り返しなどつかない。

もっと早くに、彼がアナスタシアの伝言を聞けていたのなら……。


「さぁ、それで彼の処分はどうなるのですか?」


レニーは、真っすぐに国王とチェイス王子を見た。


「……つまり、王族にも責任があると言いたいんだな?」


「おいっ、通常ならば死罪なんだぞっ」


バーンズ公爵がレニーに言い放った。


「わかっています。――でも、自分の愛する人を失い取り戻すだけの力があれば……。あなたなら、どうされますか?」


レニーは、淡々とバーンズ公爵に問い返した。


確かにそうかもしれない。

もし、レニーがあの場で命を落としていれば……。


「力があれば許されるというのか?」


「無罪にしろとは言っていません。――しかし、彼を苦しめた責任はここにいる皆にもあるのではないですか?自らの祖先がしたことだと、素知らぬ顔をするのなら……。」


「我らも、祖先と同じになってしまいます。」


レニーの言葉にチェイス王子が続いた。


「では、どのような処罰が相応しいというのだ?」


国王が、レニーを見つめた。


「協力して頂けばいいのではないですか?――国がより良く変化する為にも……。」


「私が、この国の為に協力すると思っているのか?」


確かに、司祭が国の為に尽くすとは思えない。


「まだ、アナスタシアさまの伝言を果たすチャンスがあるのではないですか?――それに、あなたにはもう守りたいモノができたのではないですか?」


「……残酷な娘だな。」


司祭は、呆れたように笑った。


彼が必死で守ろうとしているライラや部下のことを言っているんだわ。


「死罪にはしない。――国の行く末を見守ってもらうことにしよう。しかし、しばらくは牢屋で拘束させてもらう。」


国王が司祭の罪を決定した。


司祭は立たされ、連れて行かれる。


レニーが駆け寄って行った。


「これを、アナスタシアさまの遺したモノです。」


「本当に……取ってあったんだな。――感謝する。レニー・アストレア」


司祭の目には涙が浮かんでいた。


「レニー、何を渡したの?」


「リボンが結んであった木の写真です。」


小型のカメラを持ち歩いていたのね。


「それで、儀式の後に何が起こった?」


みんなが顔を見合わせる。

どう説明すればいいのか……。


影の世界が現れたことを話すべきなのだろうか……。




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