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儀式ー4




バンッ(ドアを開ける音)


「アンガス、今すぐ儀式を中止させる!許可は必要ない。」


「何があった?」


焦るアレクセイに、アンガスが問いかけた。


「説明している時間はないんだっ!ともかく、私の娘たちが危ない。」


アレクセイは、アーティを連れて城を出ていこうとする。

ドリューとジェイソンも後を追いかける


「儀式の中止は構わないが、どうしたのだ?」


バチッ


アレクセイが城の門を触ると、弾き飛ばされた。


「……クソっ!やられた」


なぜ、もっと早くに気づくことができなかったんだ。

同じように、結界が他の場所にも張られているとすれば……。


「最初から、仕組まれていたようだね……。」


ドリューがつぶやいた。


「ひとまず、みんなに事情を説明してくれ。」


ジェイソンは、なんとかアレクセイを落ち着かせようとする。


「ガオ、どうにかならないのか……。」


神獣のガオの力を使っても、流石に石碑の結界は解けないのか……。


「旦那さま、戻って説明をしましょう。そして、結界を破る方法を最短で見つけるべきかと……。」


確かにアーティの言う通りだ。

精霊使いのアイリーンになら可能だろうか……。

しかし、結界の存在に気づいているかもわからない。


「そうだな……。」


城の中へと戻って行った。

すると、公爵たちも外へ出ようとしているところだった。


「アストレア公爵、行かないのですか?」


「我々は今、石碑の結界の中に閉じ込められています。」


みんなの表情が変わる。


「アレクセイ、今度は説明してくれるのか?」


「あぁ、司祭がしようとしているのは……死者の復活だ。」


全員が言葉を失った。


「だが、1度も成功したことなど……。」


「ヴィンセント公爵の言う通りだ。――実現できる可能性など……。」


確かに、魔術師たちでさえ術式を完成させた例はなかったが、、、


「奴はすでに、転生術を完成させている。――そして、おそらく転生者なのはライラとマリーだ。」


「娘がお前に言ったのか?」


マリーの様子が変わったのは、8歳だった。

転生前の記憶を思い出したとすれば、あの時だろう。


「いいや、だが……。」


今思えばあの子は、たまに聞いたことのない言葉を発していた。


「ディアスによると、司祭の下で発見したのは転生の術式と蘇生の術式。――そして、未来を見る術式だ……。」


「未来を見る術式は聞いたことがあるが、あれは術者の命が……。」


未来を見る術式は、過去にも戦争中などに利用されたことがある。

しかし、代償が大きく術者が命を落とすと言われていた。


「どう生き延びたかは不明だが……。――ともかく奴は、闇の魔力を持つマリーと光の魔力を持つライラを使い聖女を復活させる気だ。」


そして、レニーは……。



―――――――――――――――――――――――――――――――



「おや、さすがエンバーの弟子といったところですかね。」


司祭は、ビビアンの方を見て微笑んだ。


「あなたを、生贄の器にするつもりよ!――早く、魔法を使って逃げて!」


ビビアンが結界を叩きながら、レニーに必死に呼びかけた。


復活、器……?

聖女を復活させる為に、レニーを器にするつもりってこと?


「……2人を生贄にするつもりなのですか?」


生贄……?

聖女の復活の為に私とライラ嬢は死ぬのだろうか。

それじゃあ、レニーは?


「必要なのは血だけなので、運が良ければ助かるでしょうね。」


レニーの顔は見えない。

けど、怒りのせいで魔力が漏れているようだ。


「レニー、私たちを置いてあなただけでも逃げなさいっ!」


こんなところで、レニーを死なすわけにはいかない。

レニーは、私の方を見ずに真っすぐに司祭を見据えている。


私たちのことを気にせず、レニーなら司祭たちを攻撃することができるだろう

でも、逃げる気はないんだわ……。


フィンとチェイスは、なんとか結界を壊そうと必死にもがいていた。


「司祭さま、どういうことなのですか!?」


ライラが必死に司祭に呼びかけている。


「ふざけんじゃないわよっ!私だったハズでしょう!?」


ライラが声を荒げた。

あーぁ、素が出てしまってる。


「君では、不足なんですよ。――彼女の器にはね……。」


「……そんな。」


ライラからは、覇気が消えてしまった。

器になろうとしていたの?


「器…ということは、私は消滅するということですか?」


「ふふっ、あなたが一番冷静なようですね。――消滅ではありませんよ。少なくとも、あなたの体は残りますから。」


レニーの体は残ったとしても、魂や心は消滅する

つまり、レニーではなくなってしまう。


「物は言いようですね。――1つ不思議なんですけど、どうやって魂を選ぶんです?他にも死者は大勢いますし、聖女の魂が私に入るという確信はあるのですか?」


「あなたの意見はもっともです。ですが、確実に呼ぶ方法があるのですよ。」



すると、司祭は小瓶を取り出した。


「……髪の毛ですか?」


よく見えないが、小瓶の中には髪の毛が入っているようだ。


「蘇生させたい人物の体の一部があればいんですよ。――それに髪の毛には、魔力が宿っているという説もあります。」


「……ふふっ。」


レニーが肩を震わせて笑い出した。

今の空気に似つかわしくない陽気な笑い声に、私もチェイス王子たちも唖然としている。


「何が面白いんです?」


司祭も驚いたようで、表情は変わらないがレニーに問いかけた。


「だって、大人のクセに少し考えればわかるウソをつくんですもの。」


「……あなた状況がわかっているのですか?」


司祭の声のトーンが変わった。


「もちろんです。――愛する姉と友人のライラさまが人質に取られ、みんなは結界の中で妖精の力も使えず、とってもピンチです。」


「私が、あなたの友人ですって?」


覇気を失っていたはずの、ライラが顔を上げてレニーを見た。


「相応しい言葉が見つからなかったのです。――気にくわないのなら……ライバルでしょうか?」


「わたしのことなんか、眼中にないくせにっ!」


レニーがライラ嬢をライバル視していたことなんてあっただろうか?

確かに、年下のレニーに負けてばかりの彼女からすれば、からかわれていると思うかもしれない。


「そんなことはありません。――私は、ライラさまが必死に魔法の練習を森の中でしていたのを知っています。」


「なっ……。」


ライラは、口ごもってしまった。

彼女は、すぐになんでも上手にできるというタイプだった。

でも、今思えばゲームのヒロインを忠実に再現する為に努力していたのかもしれない。


「ポーションを使っていた彼女が、あなたのライバルなわけはないでしょう。」

司祭がバカにしたように笑い飛ばした。


「魔力の話ではありません。――努力するライラさまを見て、自分ももっと努力すべきだと思ったのです。」


レニーの言葉に偽りはないだろう。

ライラ嬢のことを認めている、ただそれだけなんだわ。


「はーぁ、全く。――つくづく嫌になるわ。」


ライラ嬢が大きくため息をつき、困ったような笑顔でレニーを見た。


「――どうせ死ぬのなら、本当に彼が復活させたいのは……。」


「やれ。」


ライラ嬢の言葉を司祭が遮った。



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