長い夜
アンガス「急に呼び出してすまない。」
カーライル「いえ、少し予定が早まっただけなので構いませんが……。」
ヴィンセント「何があったのですか?」
ドリュー「…金庫にしまわれていた禁書が盗み出されました。」
チェスター「しかし、あの金庫は王族しか開けられないハズでしょう?」
アンガス「そうだ。」
ヴィンセント「いつ盗まれたのですか?」
アンガス「……わからない。」
バンッ(ドアを開ける音)
アレクセイ「来てもらいましたよ。」
エンバー「本当に禁書が盗まれたのですか?」
アンガス「あぁ、城の中はすでに捜索した。兄の所には、騎士団長が向かってくれた。」
バーンズ「そもそも禁書には、何が書かれているのですか?」
アンガス「あれは、大昔に書かれたモノで解読するのも禁止されていた。」
カーライル「何が書かれているかも、わからんということか……。」
バーンズ「エンバーなら、知っているのではないのか?」
エンバー「いいえ、私も知りません。しかし……。」
カーライル「しかし?」
エンバー「ルッソがずっと欲しがっていたことは知っています。」
バーンズ「まだ、生きているというのか?」
アレクセイ「消息不明です。何年も前に住処にしていた場所を捜索しましたが、彼の姿はありませんでした。」
カーライル「内容の予想もつかないのか?」
エンバーは、アレクセイの顔を見た。
エンバー「……ルッソは、永遠の命の研究をしていたようです。」
カーライル「フッ、馬鹿馬鹿しいな。」
アレクセイ「一概にバカにすることはできません。」
バーンズ「どういう意味だ?」
アレクセイ「何年も前に術式を使った武器が発見されたのを覚えておられますか?」
カーライル「チェスター公爵の領地で摘発したモノか?」
アレクセイ「そうです。そこにいた子は、術式を体に埋め込まれていました。死に至るような傷でも、自分で再生することができます。」
バーンズ「まさか……。すでに完成しているということか?」
エンバー「おそらく、完成はしていません。しかし、生きているとすれば研究を続けている可能性があります。」
カーライル「信じがたいが……。とりあえず、私たちは何をすれば良いのですか?」
アンガス「徹底的にルッソの捜索を行う。しかし、顔などを変えている可能性もある……。」
エンバー「彼の右腕には、私が魔法で付けた傷があります。新たな術式を手に入れていれば、わかりませんが……。もしかすると残っているかもしれません。」
アンガス「怪しい人物は捕らえよ。聖女が選ばれることもあり、街は賑わっている。徹底的に兵を配置し、自分の領地と王都を守って欲しい。」
エンバー「やつは、光の魔力に固執していました。王都を守る方は、特に警戒してください。聖女候補の2人を狙う可能性があります。」
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コンコン(ドアをノックする音)
マリー「どうぞ。」
レニー「入ってもいい?」
レニーが部屋を覗き込んだ。
マリー「もちろんよ。」
レニー「これ、食べてくれる?」
クッキーを差し出してくれた。
マリー「えぇ。あのさっきは、ごめんなさい。」
レニー「ううん。私のほうこそ、ごめんなさい。」
マリー「なんでレニーが謝るの?」
レニー「だって、最近様子がおかしかったのに…わたし何も聞けなかったわ。」
レニーにも気づかれていたか……。
マリー「フフッ、心配してくれてたのね。もう、大丈夫よ。」
レニー「ドナルド様のおかげですか?」
マリー「えっ?まぁそうね。」
レニーがいきなり私に抱き着いた。
マリー「どうしたの?」
レニー「お姉様を助けてくれたのは嬉しいですけど、先を越されて少し悔しいのです。」
そっか、本当にみんなが持っている感情なんだわ。
マリー「フフッ、レニーは本当に可愛いわね。」
レニーは、すこし不貞腐れてしまった。
レニー「子供扱いしないでください。」
マリー「それは、無理よ。あなたは、ずっと私の可愛い妹なんだから。」
コンコン(ドアをノックする音)
マリー「どうぞ?」
ロゼ「奥様がお呼びです。」
こんな時間に呼ぶなんて、珍しいな。
部屋に行くと、ミシェルやローランたちもいた。
ミシェル「姉さん大丈夫?」
マリー「えぇ、大丈夫よ。」
アイリーン「…しばらく、休校になるわ。極力、家から出ないで頂戴。」
マリー「えっ?休校って……。」
ミシェル「お母様、何があったのですか?」
アイリーン「詳しくは話せないけど、国中の警備を強めることになりました。それで、お姉様や先生方も警護に当たることになったの。」
何があったんだろう。
お母様が緊張しているのがわかる……。
ダニエル「では、聖女を決めるのも見送りになるのですか?」
アイリーン「それは、たぶん日程通り行われるわ。」
ミシェル「僕たちは、警護につけないのですか?」
アイリーン「…あなたたちは、まだ子供なのよ?」
ダニエル「でも、叔父様に鍛えられました。」
アイリーン「お父様に話します。でも、断られたら諦めて頂戴。わかった?」
ミシェル「はい。」
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バンッ(ドアの開ける音)
「いきなり、なんですか。」
アレクセイ「教会の中を捜索させて頂きたい。」
「どういうつもりですか、神聖な場所なのですよ!」
司祭「どうしましたか?アストレア公爵。」
アレクセイ「国王の命令だ。教会の中を少し見せてもらいたい。」
司祭「何かありましたか?珍しい方まで連れて……。」
エンバー「とにかく、中を捜索させてもらう。」
「司祭様……。」
司祭「構いません。国王様の指示です。あなたたちも協力しなさい。」
「…かしこまりました。」