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禁書



どうしたらいいの……。

ライラ嬢と話してから、黒い感情が体中を駆け巡っている。

何かされたのかしら、叔母様に会いに行けば……。


でも、もしこれが術式でもなんでもなく私の中にあった感情だとすれば……。


ドナルド「…レニー嬢たちは、先に帰ったよ。」


マリー「今は…1人になりたいです。」


ドナルド「それは断るよ。だって、僕にウソをついただろう?」


マリー「…それは…。」


ドナルド「どうせ、内緒で来いとでも言われたんだろうね。話したくないなら、話さなくても良いよ。」


マリー「…レニーは、怒っているでしょうか……。」


ドナルド「怒ってないよ。驚いてはいたけど、君を心配していた。」


マリー「……どうしましょう。私本当に悪役令嬢になってしまったのかもしれません……。」


ドナルド「フフッ、ハハハハハ」


マリー「笑い事じゃありませんわ!」


ドナルド「あれが、悪役令嬢というモノなのかい?全然こわくないじゃないか。」


マリー「でも…これから、もっとひどくなるかもしれませんわ。」


ドナルド「僕は、マリー嬢の話しを信じていないわけじゃないけど……。ゲームでは、主要な登場人物たちの気持ちしか描かれていないんだろう?」


マリー「まぁ……。そうですね。」


ドナルド「でも、現実では僕たち1人1人に感情があって考えて行動してるよね?」


マリー「はい。」


ドナルド「ずっと疑問だったんだ。マリー嬢を転生させた人物がゲームを作ったもしくは、大体の情報を伝えたとすれば……未来を知っていたことになるよね?」


確かにそうだ。

今まで考えたことがなかった……。


ドナルド「ゲームと現実の違いがたくさんあるなら……。違っている点や、描かれていない部分は見ることが出来なかった……。それか、未来が変わってしまったということじゃないかな。」


マリー「未来が変わった?」


ドナルド「例えば、レニー嬢に子供のころ起こったこと。それにサーデザー国へ誘拐されたこと……。他にも登場人物にダンがいなかったこと。ゲームのイベント?に書かれていてもおかしくないだろう?」


マリー「そうですね……。ゲーマーとしては、誘拐のイベントなどはあった方が面白いハズです。」


ドナルド「フフッ、ゲーマーが何かわよくわからないけど…。きっと、色々なことがきっかけで変わってしまったんだよ。それなら…悪役令嬢だってもしかすると別の登場人物に変わってしまっているかもしれない。」


未来が変わったことで、私ではなくライラが悪役令嬢になったってことだろうか……。


マリー「でも、私の中には確かに何か嫌な感情が……。」


ドナルド「ハハッ、そんなのはきっとみんな持っている感情だよ。」


マリー「えっ?」


ドナルド「たぶん、嫉妬心とか欲とかじゃないかな?今までマリー嬢が気づかなかっただけで、きっとみんな持ってる。」


マリー「気づかなかっただけ……?」


ドナルド「マリー嬢やミシェルもダニエルも、レニー嬢のことが大好きだろう?好きだからこそ、羨ましくなることも少し憎くなることもあるんじゃないかな?」


マリー「私…レニーが羨ましかったのでしょうか……。」


ドナルド「君が1番知っているんじゃないの?僕は、ゲームのせいでマリー嬢とレニー嬢が人に好かれているとも、優れているとも思わないけどね。」


マリー「……えぇ、あの子のことは誰よりも知っています。」


毎日遅くまで書庫に入り浸っていたのも、お父様に熱心に交渉していたのも……。

人々を笑顔にしたのも、ゲームの設定なんかじゃない。


マリー「全て、レニーが選んで頑張った結果です。」


ドナルド「じゃあ、帰って謝らないとね?」


マリー「そうですわね。」


ドナルドは、立ち上がって手を差し伸べてくれた。


マリー「ありがとうございます。」


なんだか、少し恥ずかしくなった。


ドナルド「ちなみに、危険な真似をしたことは怒ってるよ。」


マリー「えっ?」


ドナルドは、にっこり微笑んでいる。


ドナルド「黙って、危険な真似はしないって約束してくれる?」


マリー「…えぇ。」


ドナルド「本当に?」


マリー「はい……。なんで、そこまで心配してくださるのですか?」


ドナルド「さぁ、マリー嬢がきちんと約束を守ったら教えてあげるよ。」


マリー「そうなのですか?」


ドナルド「ところで、もう1人の転生者ってライラ嬢かい?」


マリー「えっ、何でわかっ……。」


しまった。

思わず口を覆ったけど……。


ドナルドは、クスクス笑っている。


ドナルド「心配しなくても、誰にも言わないよ。」


マリー「でも、どうして……?」


ドナルド「昔ね、ガイル王子が言ってたんだよ。」


マリー「ガイル様が?」


ドナルド「転生者って言ってたわけじゃないよ。でも、警戒した方が良いって言われたんだ。」


マリー「そうだったんですね……。」


ガイル様は、意外に鋭かったのね。


ドナルド「声に出てるよ。」


マリー「つい、気が緩んでしまって……。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



アンガス「禁書が見たいとは、どういうことだ?」


チェイス「勝手に入ろうとして申し訳ありません。ですが、エンバー様が……。」


アンガス「持ち出して来いと言われたのか?」


チェイス「そうではありません。無くなったモノがないか調べて欲しいと言われました。」


アンガス「理由は?」


チェイス「聖女を選ぶ儀式に関係があると思います。」


キーラ「私が同行します。」


アンガス「はぁ……。仕方あるまい。今回だけ許可する。」


チェイス「ありがとうございます。」


キーラ「行きましょう。」



キーラ「怒るかもしれないけど、私はレニー嬢が聖女に選ばれあなたの婚約者になれば嬉しいわ。」


チェイス「……婚約者にはなって欲しいと思っています。」


キーラ「あら、やっぱり彼女のしているブレスレットはあの時のモノなのね。」


チェイス「覚えていたのですか……。でも、そんな形で婚約者にするのはフェアではありません。」


キーラ「フフッ、男らしく育ってくれて嬉しいわ。」


チェイス「からかっているのですか……。」


キーラ「いいえ。息子の成長が嬉しいだけよ。」


「王妃様、どうされたのですか?」


キーラ「国王に許可は頂いています。開けて頂戴。」


「かしこまりました。」


キーラ「石碑に関するモノは、確かここら辺にあるはずよ。」


チェイス「ありがとうございます。」


少しほこりをかぶっている古そうな本がたくさん並んでいる。

ぎっしりと並んでいて、無くなっているモノはなさそうだな……。


チェイス「特に、不審な点はありませんね……。」


キーラ「……エンバー様が調べるように言ったのよね?」


チェイス「はい。どうかしましたか?」


キーラは奥へと進んで行った。


キーラ「チェイス、あなたこの金庫を開けてみて頂戴。」


チェイス「いいのですか?」


キーラ「えぇ、王家のあなたじゃないといけないのよ。」


金庫のノブを触ると、静電気のようなモノが手に走った。


キーラ「……そんな。」


中には何も入っていなかった。


金庫に入っていたということは、相当なことが書いてあったのだろう。


チェイス「何が入っていたのですか?」


キーラ「あなたは部屋に戻りなさい。エンバー様には、アストレア公爵から知らせます。」





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