正義感
特訓も終わり、私たちは元通り学校へ行くことになった。
ミシェル「1カ月で大分変わったみたいだね。」
ミシェルが騒いでいる令嬢たちの方を見て言った。
マリー「えっあれって、ライラ嬢?」
ライラ嬢が令嬢たちを引き連れて歩いていたのだ。
ビビアン「皆さん無事に帰って来れたのですね。良かったです。」
やって来たビビアンとリーンが私たちに声をかけた。
レニー「リーン様、本をたくさんありがとうございます。」
リーン「いいえ、大変だったのでしょう。大丈夫ですか?」
レニー「大丈夫です。」
マリー「それにしても、アレはどうしたの?」
ビビアン「あぁ、ライラ嬢が聖女に選ばれるという噂が広まって令嬢たちが……。」
ライラがこっちへやって来た。
ライラ「今日からまた学校へ戻られるのですか?」
マリー「えぇ。」
ライラ「そうですか。では、チェイス様たちにも挨拶をしないと。」
ライラの首には、教会をモチーフにしたロザリオがかかっていた。
ミシェル「もう、聖女気取りなわけだね。」
マリー「そのようね。」
まぁ、レニーに関係がなければ彼女がどんな振る舞いをしてようが関係ないけれど……。
ビビアン「しかも、街外れが復興しだしたのは自分の案だと言い出しているようで……。」
ビビアンはレニーの方を見た。
リーン「私たちは、もちろんレニー嬢とチェイス王子が始めたことだと知っていますよ!」
ミシェルとダニエルは静かに怒っているようだ。
もちろん私も、レニーが見返りを求めてないことは知っているけど、良い気はしない。
レニー「フフッ、良いのではないですか?誰がやったかは問題ではありませんし、他のみなさんも街外れの状況を知ってくださるのなら、他の場所も同じように変えていけるかもしれません。」
マリー「レニーがそう言うのなら……。」
リーン嬢やビビアンも同じように気に食わないようだ。
サーリア「ちょっと、あなた大丈夫なの?」
サーリア嬢がレニーの元へ走ってきた。
レニーの腕を掴み、体を確認している。
レニー「フフッ、どうされたのですか?」
サーリア「ウォーリア国に行っていたのでしょう?ケガとかはしてないの?」
レニー「大丈夫ですよ。何もありませんでしたから。」
サーリア「そうなの……。でも、それどころじゃないわ!ライラがあなたの功績を横取りしているのよ!」
サーリア嬢は、興奮しているようだ。
いつの間に仲良くなったのか、意外と良い子みたいだ。
レニー「えぇ、リーン様たちから聞きました。別に構いません。」
サーリア「でも、そんなの卑怯だわ。何が聖女よ……。頑張っているのは、あなたたちでしょう。」
サーリア嬢は、よほど悔しいようで唇を噛みしめている。
レニー「頑張っているのは、私たちと街外れの人々です。こんなことで怒ってくれるなんて、サーリア様は優しいですね。」
レニーは笑いだしてしまった。
サーリア嬢の顔がみるみる赤くなる。
サーリア「私はただ許せなかっただけですわ。」
ビビアン「サーリア嬢も、良かったら一緒に本を作りませんか?」
サーリア「えっ……。でも、私はあまり賢くありませんし……。」
レニー「サーリア様も協力してくれれば、とても心強いです。お姉様サーリア様は、裁縫がとても得意なんですよ。」
マリー「そうなの?サーリア嬢さえよければ、いつでも図書室でお待ちしていますわ。」
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令嬢「チェイス王子、ライラ様がお話があると言われています。」
チェイス「ライラ嬢が?」
チェイスが立ち上がろうとしたが、ドナルドが腕を掴んだ。
ドナルド「君は、何でメイドのような真似をしているんだい?それに、彼女は自分でも来ずに王子を呼び出すつもりなの?」
令嬢の表情が曇った。
令嬢「…申し訳ありません。失礼しました。」
チェイス「あんな言い方をしなくても良かったんじゃないか?」
ドナルド「あの呼び出しに応じれば、つけあがります。あなたは、王子です。優しさだけではいけないでしょう。」
リリアンが2人の元へやって来た。
リリアン「ドナルド様が正しいでしょうね。チェイス王子、噂はご存知ですか?」
チェイス「噂?」
リリアン「ライラ嬢が聖女に選ばれるという噂が立ち、早くも貴族たちが彼女に媚びています。理由はわかりますよね?」
ドナルド「あなたの婚約者候補に推すつもりなのでしょう。」
チェイス「平民出身の彼女が聖女に選ばれ、国母になるということか……。」
確かに、聞こえはいいだろう。
リリアン「しかも、街外れで行っていることも全て彼女の案だという話しになっています。」
チェイス「あれは、全てレニー嬢の案だ。」
ドナルド「僕たちは知っている。けれど、他の人たちは知らないのが問題なのですよ。」
チェイス「やはり、ライラ嬢に会いに行く。」
ドナルド「はぁ、ついて行くよ。」
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マキナ国
「どうでしたかグラントリアの人間は?」
ザンダー「…背後に立つなと言っただろう。面白い子たちだったよ。」
「魔法は見れましたか?」
ザンダー「いや、先手を打たれた。」
「妖精はどうでした?」
ザンダー「さぁ、わからないな。」
「その片眼鏡があれば、見えたでしょう。」
ザンダー「何が言いたい?」
「いえ、ただ呪われた子として幽閉されていたあなたが王位継承権を取り戻したのは誰のおかげか忘れないでくださいね。」
ザンダー「わかっている。それ以上言えば、忘れるかもしれないがな。」
「それなら良いのです。」
ザンダー「グラントリアでは、オッドアイが珍しくないのか?」
「いえ、そんなことはないと思いますが。」
ザンダー「そうか。もう下がれ。」
「かしこまりました。」
呪われた子か……。