あの子
イアン「上機嫌ですね。」
ザンダー「そうか?まぁ、面白かったかもしれないな。」
イアン「はぁ……。僕は疲れましたよ。」
ザンダー「可愛らしい婚約者様に会えて嬉しかっただろう?」
イアン「確かにナディアは可愛らしいですけど、妹たちは手に負えない。」
ザンダー「フフッ、確かにモリ―姫たちはわがまま放題の世間知らずの姫だからな。」
イアン「まぁ、同盟だっていつまで続くか……。」
ザンダー「しばらくは大丈夫だろう。ウォーリア国にどこまで話しているかわ、わからないが。」
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アンガス「そうか。ウォーレン王子は国へ戻ったのか……。」
キーラ「そうなれば、アンリ姫が心配ね。」
チェイス「会いに行っても構いませんか?」
アンガス「お前がか?」
チェイス「はい。あの場にもいましたし、もしかすると話を聞いてくれるかもしれません。」
アンガス「……それなら、ナットを連れて行け。」
チェイス「かしこまりました。」
アンガス「待てチェイス。ロベルトも、無事に帰って来て何よりだ。」
チェイスとロベルトは微笑み、そのまま部屋から出ていった。
キーラ「それにしても、何が起こっているのか……。レニー嬢が狙われているのかしら。」
アンガス「その可能性は高いな。いっそライラを聖女にして、向こうの気をそらした方が良いかもしれない。」
キーラ「それでは、ライラが危険な目に合うのではないですか?」
アンガス「そうだが……。アレクセイたちは何かを隠している。それが、レニー嬢に関することだとすれば……。」
キーラ「精霊使いというだけでなく、他にも何かあると言うのですか?」
アンガス「わからない。だが、ドリューにも私にも話せないこととなると、相当な何かがあるのだろう。」
キーラ「聞かないのですか?」
アンガス「フフッ、奴が話さない理由があるとすれば、対処をこまねいているもしくは、止めようがないかの2択だ。我らが力になれることがないのだろう。」
キーラ「そう。……なんだか、寂しいわね。」
アンガス「もしくは、国王には話せない何かなのかもしれない。まぁ、待つしかないさ。」
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ナット「チェイス王子。不気味な人物だと聞いていますが、大丈夫ですか?」
チェイス「さぁな。わからない。」
コンコン(ドアをノックする音)
アンリ「どうぞ。」
思ったよりも顔色が良いな。
チェイス「失礼いたします。ウォーレン王子のことで話が……。」
アンリ「あなた、確かチェイス王子よね。ウォーレンがどうしたの?」
チェイス「ウォーレン王子は、ウォーリア国に帰ることになりました。」
アンリ「……そう。」
チェイス「あなたに、術式を教えたのは誰ですか?」
アンリ「……私、あの子に会いたいわ。」
チェイス「あの子とは?」
アンリ「フフッ、光の魔力を持っているアストレアの子。」
チェイス「あの子になら、話すということですか?」
アンリは何も答えなくなってしまった。
チェイス「また来ます。」
ナット「どうされるのですか?」
チェイス「言えば来てくれるだろうが……。今の彼女には負担が大きいだろう。」
ナット「まぁ、間違いなくレニー様なら来るでしょうね。」
チェイス「しばらくは、私が会いに行く。レニー嬢には、少しゆっくりして欲しいんだ。」
ナット「フッ、そうですね。」
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アレクセイ「無事に戻って来てくれて感謝するよ。ロゼ、フィン。」
ロゼ「旦那様。ウォーリア国におかしな動きは見られませんでしたが、少し気になる点が。」
フィン「街に潜入していましたが、近年税金が上がっているとのことです。」
アレクセイ「税金が?」
ロゼ「えぇ、しかし国税の資料には例年通りの資金しか記載されていません。」
フィン「元々豊かな国なので、国民が苦しむ程ではありませんが……。もしかすると、マキナ国へ資金援助をしている可能性も。」
アレクセイ「そうか。しかし、これ以上の潜入は危険だ。」
コンコン(ドアをノックする音)
アレクセイ「だれだ?」
ミシェル「お父様。少し聞いて欲しいことがあるのです。」
アレクセイ「お前も疲れているだろう。急ぎなのか?」
ミシェル「えぇ、ウォーリア国のことです。」
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マキナ国王宮
バンッ(ドアが開く音)
ザンダー「いきなりなんだ。ノックくらいした方が良いのでは?」
「どういうことですの!いきなり婚約破棄だなんて、納得できませんわ。」
ザンダー「君が納得しようがしまいが、私に関係はないよ。」
「いくら王族といえど、私をこのような扱いにすれば貴族たちが黙っていませんわ。」
ザンダー「フッ、君は本当に頭が悪いね。」
「なっ、私を馬鹿にするのですか!」
ザンダー「別に僕が勝手なことをしたと触れ回りたければ、どうぞ。でも……。」
ザンダーが令嬢に歩み寄る。
ザンダー「初めてではないとバレれば、信仰を重んじるこの国で君はもう結婚できないだろうね。」
「……。」
ザンダー「僕と君は、円満に婚約を破棄した。そうだよね?」
「…はい。」
パタン(ドアのしまる音)
写真を取り出す。
ザンダー「綺麗な目か……。フフッ、君が欲しいな。レニー・アストレア嬢。」