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異世界で豪邸を

異世界で豪邸をSS

作者: 藪地朝陽

リクエストがあったので書かせてもらいました。前作のような日記形式ではありません。ご了承ください。夜のテンションでガアーーッと書いたので少し雑です。温かい目でお願いします。

キュイーン、ガガ……


よし、ここの修理は終わったな。やけに脆くて崩れやすくなっていたから早く直しとかないと。これでもう大丈夫だろう。




さて、異世界生活360日目。


俺こと土代柱(つちしろ はしら)が異世界転移して、かれこれ1年が経った。日記代わりにしていたノートももうとっくに使い切って、街で新しく買った日記帳を使っている。今日からもう3冊目に突入した。早いものだ。


こんな状況にもなってきたらもう日記なんてする必要はないのかもしれないけど、異世界転移してから書き始めてすっかり習慣になっているのでこれからも続けていこうと思う。呆け防止にもなるし。


そして現在、俺は今…………地下牢の中にいる。地下牢って暗いし、少し薄ら寒い。冬になったら大変だな。



……っと呑気にそんなことを言っている場合ではないな。何故こうなったのかと言うと…………



今から3ヶ月程前まで遡る………


俺は娘のアカとアオとゴーレム3体と一緒にいつもの街で買い物に出かけていた。その時、かつて俺を追放した(・・・・・・・・・)王国から来たとかいう変な服をした奴らが店で騒いでるのを見つけたんだ。俺と同い年くらいの年齢の男女6人のグループだった。


なんか、俺達は魔王軍と戦う勇者なのだからもっと安くしろ!とかほざいてやがった。


いかにもな異世界ものでよくある屑勇者の台詞じゃねえか。あんなのが勇者とか世も末だな。そもそもこの街はどこの国にも属していない自由都市だっていうのに。だから、王国の勇者様の権力なんて石ころ程の価値しかないのにな。


そんな時、勇者と名乗っている奴の1人が店に入った俺達に気付いた。


「おい、あれ土代じゃね?」

「あ? そんな訳ねえだろ。とっくにくたばったんじゃないのか、アイツ」

「そうそう、あんな状況で生きてる訳ないじゃん。何言ってんのよ」


そんな言葉が遠くから聞こえて俺は初めてコイツらが元クラスメイトだということを思い出した。しかも、異世界に来る前でも俺を馬鹿にしてた奴らだ。最後に顔を見たのがもう何ヶ月も前だし、俺にとっては酷くどうでも良かったから全く分からなかった。


だが、関わるのは面倒だな。さっさと立ち去るか。


俺はアカやアオに出るように促そうとしたら、勇者の1人が俺に話しかけて来た。確か……平……平………まぁどうでも良いか。


「おい! やっぱお前土代じゃねえかよ。生きてやがったのか」

「人違いです。ではこのへんで(裏声)」

「まぁ、待てよ。お前、金持ってねえか? 俺達、あんま持ち合わせが無くてよ。お前、代わりに払ってくんね?」


うわ最悪だ、コイツ。会って早々人に集ろうとしてやがる。思えば、異世界転移前もよく人に集ってたっけ。俺が購買で買った飯もよく取られた。なので、俺はその時のお返しも兼ねてお金をあげることにした。


正確に言うと、売れば高値になる漬物石程の大きさの鉱石をゴーレムの1体に指示して投げ渡してあげたのだ。現金ではないが良いだろう。勇者はポカンとした表情のまま頭に鉱石が直撃し、ぶっ倒れた。ドクドクと血が出てるけど多分大丈夫だろ。勇者だし。


他の奴らが何かギャーギャー騒いでいたが、ほっといて店を出た。凄惨な場面を見せてしまったが、残りのゴーレム2体がアカとアオの目を塞いでくれた。ゴーレム達グッジョブ!



それからのことだが、王国に俺が生きていたことがバレた。まぁ、あんなことをすればバレるわな。


なんか王国が有する勇者を愚弄し傷付けたとかで俺を罰しようと街に俺の引き渡しを要求してきたらしい。俺がそこに住んでいるとでも思ったんだろうな。だが、残念。俺はこの街の人間ではない。


だから、街もそれを利用して、そんな人間は知らんと突っぱねたそうだ。勇者とかいう奴らの横暴な態度が気に食わなかったのと俺がよく高価な鉱石や使い勝手の良い家具を売ってくれることもあって街の人間も俺に対して好意的だったのがデカかった。


王国はそれでも俺を捕らえようと街に兵を送り込んだらしいが、失敗したらしい。街の人が俺にこっそりその情報を教えてくれたお陰でしばらく外出を自粛していたからだ。


俺が住んでいる森にも捜査はあったが、ここは本来危険区域でもあるので、捜査も甘く、仮に死者が出ても怪しまれなかったのだ。


こうしている間に俺達は家でのんびり過ごした。アカやアオはもっと遊びたそうにしていたが、我慢してもらう他ない。1年間も暮らしてきたので、この家も随分と暮らしやすくなっている。ぱっと見は唯の洞穴だが、中は本当に豪華だ。リフォームのスキルが無ければ俺は生き残れなかっただろう。



そして、自粛生活も終わりを告げた。


王国が滅びたのだ。割と呆気なかった。何故滅びたかは後に街の人から聞いたことだが、俺を捕らえようとしている間に内乱が起こったらしい。そのタイミングを突かれて魔王軍が攻めてきて、王国は完全に崩壊したとのことだ。実に愚かだ。


そして、召喚された勇者達(クラスメイト達)も全員死亡したらしい。同郷で顔見知りの筈の人間が死んだってのに何も感じない自分が怖い。まぁ、殆ど関わった覚えが無いけど。顔も見れば「あーー、そういえばいたなぁ……」程度にしかならない。でも、妙なことにクラスの人数は30人くらいだったはずなのに死亡したのは20人くらいだったらしい。何でだろ? まぁ、いっか。



そして、俺は長い自粛生活でリフォームの能力が更に上がり、修繕の力も得た。折角なので俺を庇ってくれた街への感謝も兼ねて修理屋のビジネスを始めることにした。建物を修理してついでに少し使いやすいようにしてやろうという心意気だ。俺のリフォーム能力の鍛錬にもなるしな。



そういう訳で、俺はあちこちの家の修理をしていた。意外と儲かる商売だ。そして、俺が地下牢にいたのも別に悪いことした訳ではなく、俺が修理を依頼されたからだ。保安署の地下牢があちこち傷んでるから直して欲しいって。


俺が牢屋にぶち込まれたと思ったか? そもそもこんな品行方正な男が牢に入れられる訳ないだろ。



……………さて、めぼしい修理も済んだし、帰るか。子供達も待ってるしな。


だが、修理屋を営むには森の中よりも、この街で暮らしていた方が都合が良いかもな。もう王国もないし、少し検討してみるか。

ちなみに、クラスメイトの何人かは柱が追放されたのに危機感を感じて王国から脱走して、今では自分の能力を活かして別の国で平和に暮らしています。


国民の税金を使った王宮での贅沢な暮らしに堕落していたので勇者達は戦争ではあまり役に立ちませんでした。しかも、勇者達の態度は日に日に悪くなるばかり……… それが内乱が起こった理由の1つです。


それから5年後のストーリーは「赤紫の魔剣使い〜少女は異世界を渡り歩く」の協奏にて描かれています。是非そちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まんまとダマされました。 地下牢からの逆転ざまぁかと思えば、あのラストとは 読者にざまぁするとは、面白い。 [一言] 小説も、落語のように落ちが有る方が、面白いと思う 一読者からの、一言…
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