二度目の喪失は有り得ない
「行くぞ○○○!ここで奴との戦いも最後にするぞ!俺の仲間達から犠牲はこれ以上ださせねぇ!」
「当然です!これ以上奪われるのはもう御免です!」
「ご主人様が行かれるのなら、付いて行きますとも」
「最後まで付き合うぜ、団長。仲間を失って気が立ってるのはお三方だけじゃねぇんだぜ?」
「「そうだ、そうだ!」」「「最後までやってやるぜ!」」
「ロイド、お前ら…。ああ、やってやるとも、俺はこの傭兵団で良かったと思う。行くぞ!最後の依頼だ、仲間の命と金を比べたく無いが達成出来れば全員、遊んで暮らせるだけの報酬が得られるだろう。人生最後の仕事だと思って傭兵らしく得られる額だけの仕事をしてみせろ!」
「「「オウ‼︎」」」
また…またこの夢か、私はこれ以上思い出したくない…嫌だ、やめてくれ
巨大な黒い体躯のドラゴン、ナイトメアドラゴンを前に数百名の団員が対峙する。
ここにいるのはドラゴンを倒すためにやって来た傭兵団の歴戦の猛者達だ。
「くらえ!トカゲ野郎!」
1人また1人とドラゴンへ攻撃を仕掛ける。常人ならばあの頑強な鱗に阻まれ攻撃がそもそも通らないが、見事その攻撃は少しずつドラゴンの体力を減らしていく。
「ッッ⁉︎離れろ!ブレスが来るぞ!」
ドラゴンの口から黒い炎が覗く様子を見た、1人が叫ぶ。
ドラゴンはブレスで前方を薙ぎ払うそれだけで、大地が揺れて、抉れる。
「凄まじいな、だか俺たちだって負けちゃいねぇ!」
「これ以上はやらせない!絶対に!」
…………………………
……………
目の前にはもう瀕死のドラゴン、私はトドメをさすべく攻撃する。
「トドメだぁ!」
「そこをどけぇ‼︎」ドカッ
私は団長に押されて飛ばされる。
「何をするんですか!団ちょ、、う」
振り返った私が見たのは…
ドラゴンの尻尾に胸を貫かれた団長の姿だった。
「私が、最後まで油断しなければ、こんな、ことには」
それから後の記憶は無い。
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「私のせいだ、私の」
華美な装飾で彩られた部屋のなかベッドで夢に魘されている人物がそう呟く。カーテンから覗く光に照らされ銀に輝く髪と陶器のような白い肌、ふくよかな胸、そして髪の隙間から見える「長い耳」
彼女の頰を流れる涙さえ美しさを感じてしまう。
そんな美しいエルフの女性のベッドへいつのまにか腰掛け涙を拭い彼女の手を両手で包み込むようにしている人物がいる。髪はエルフの女性に似ているが銀というよりも白く見える。瞳は金に輝いているが瞳の奥に哀しみの感情がうかがえる。
「ご主人様、貴方はまだ自分を責めておられるのですね。ですが忘れないで下さいね。貴方の感情は眷属である私にもわかるのです。貴方だけで抱えなくてもいいのですよ。頼っていただいていいんですよ。
貴方は私にとって大切な存在なのだから」