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第四章 眠り姫の見る夢は…… -2-

翌日、龍馬は徴税省の徴税課、さらにその実行部隊へと配属され初日一発目から城下町へと繰り出されていた。


「少年も災難だな」


はっはっはっと笑うのは同じ部隊に配属されているこの道十年を越えるベテランのクランク・ベッケン。


「いえ、自分で決めた道なんでやれるとこまでは頑張ります」


「ほぅ、こいつは頼もしいな。じゃあ一軒ずつ行こうか」


運よくと言うよりか運悪く、龍馬が配属された日がちょうど徴税時期と重なったためそのまま現場へ送り込まれてしまったのだ。


徴税省と言うと字面から良いイメージを持たれないが実際はそうでもない。


現場は納税の回収が主な仕事で、時折納税を滞納する相手に対して何度か通告をし、最終的な物理的解決は軍事省の兵隊達の仕事だ。


故に割と住民達との関係は良好で毛嫌いする相手と言うのは幾つかやましいことがある証拠でもある。


「こんちわー」


クランクが気軽に納税表に載っている内の飲食店に入っていく。


「おぉ、いつもご苦労だねぇ。今月分だろう? ちょっと待っておくれよ」


後をついて入るとまだ朝早い為、客も居らず還暦を迎えていそうなおじいさんが仕込みをしていたようで、その手を止めて奥から硬貨の入った布袋を持ってきた。


「いつもすみませんね。じゃあ確認するんで」


そう言って龍馬が持つA4サイズほどの薄い箱を手に取り、そこに袋の硬貨を出して計算していく。


その箱の内側には硬貨のサイズの正方形が綺麗に描かれ硬貨を重ねて簡単に計算できるように作られている計算尺の様なものだった。


瞬く間にクランクは計算を終えて硬貨を袋に戻して龍馬の持つ納税用の大きな袋に入れる。


「しっかり確認しましたよ。では、これで失礼します」


そう言ってクランクが立ち去ろうとするとおじいさんが呼び止めて紙袋をクランクに手渡す。


「そっちの坊やは新顔だろう? 二人で食べなさい。腹が減っちゃあ仕事にならんからなぁ」


かっかっかっと笑ったおじいさんにお礼を言って店を出た。


「人の厚意は無駄にしちゃいけねぇからな。ほら、美味いぜ」


袋から肉まんを一つ取り出して龍馬に渡してクランクももう一つを取り出して頬張る。


となりでクランクがうめぇーと言いながら食べ歩いているのを見て捨てる訳にもいかないなと一口食べる。


確かに美味い。美味いのだが、すでに次の納税予定の店の前なのにのんびり朝飯を食っている場合なのだろうかと龍馬は疑問を抱きながら頬張っていた。


「よしっ。じゃあ次に行くか」


龍馬が食べ終えたのを確認してクランクは次の店へと入っていく。


そんな感じで昼までに城下町の店を五十件ほど回ってひと段落した頃には納税袋は冗談にならない位には重たくなっていた。


「これ、破れないですよね」


不安になるくらいに重い袋に龍馬が悲鳴じみた質問をするとクランクは答える。


「皮袋がその程度で破れるわけ無いだろ? とりあえず今日の分はこれで終いだ。城まで戻るとするか」


それを聞いて龍馬は気合を入れて皮袋を背負いなおして来た道を戻り始める。


「中々頑張るねぇ。いやー今日はほんと楽させてもらってるわ」


クランクは悪気無くそう言うと最後の店で貰った甘菓子を口にしていた。


「辛くなったら言えよ。何時でも代わるからな」


「……っ了解です」


その後も他愛の無い話をしながら気が付けば城の前まで来ていた。


「よし、ご苦労さん。ほれ」


背負っていた皮袋をひょいっ持ち上げて軽々と片腕で持ち上げて肩に背負う。


「うっそだろ」


推定三十キロはあるだろう皮袋をあんな軽がると持ち上げたと龍馬は驚いていたがクランクはこれくらい余裕だろと言いたげにニッと笑う。


「毎日鍛えてればこんなもんだよ」


とりあえずこの二週間は頑張れば少しは楽になるさと背を叩かれた。


そのままクランクは歩き出してその後ろを龍馬がついて行く。


回収した税金を金庫へ持っていく最中に同じ実働部隊の数人とすれ違う。


「クランク今日は子連れか?」


からかうようにすれ違いざまに声を掛け合い互いに肩を叩きあう。


「あんまり気にすんなよ。挨拶みてーなもんだからよ」


豪快に笑うクランクを見て肩の力を抜いて了解と答える。


徴税省の金庫に着くとクランクが皮袋を他の納税したで在ろう袋の上に重ねると徴税課の制服を着た女性がクランクの袋を確認して手元の容姿にチェックを入れる。


「はーい。ご苦労様でーす」


「お疲れさん。じゃ」


そう言ってクランクが立ち去るので後ろをついて行こうとすると肩を掴まれ振り向くと先程の女性がニコッと笑った。


「君は昼からこっちね」


「あれ、そうなの?」


クランクも知らなかったのかそう言って龍馬の肩に手を置いた。


「じゃあ、また明日な」


トントンと肩を叩いて手を振ってクランクは去っていった。


「あの、俺はこれからどうしたら?」


そう聞くとニヤリと笑う女性に嫌な予感がした。


「話は聞いていますよ龍馬君。なんでも計算がお得意だそうで」


その後、昼食の後に今日回収してきた税金を一袋ずつ中の硬貨の確認をさせられて気が付けば日が暮れ前で終業となった。

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