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第三章 いざ! 華国へ!-2-

龍馬が碧国を発ってから四日、特に大きな問題も無く気が付けば華国の帝都まで目と鼻の先と言う所までたどり着いていた。


この四日間で龍馬は御者のアリオットと言う男と仲良くなり御者台の隣に座り談笑するほどになっていた。


「ほら、アレが帝都だよ」


そう言ってアリオットが顎で指した先には息を呑むような巨大な壁が眼前に広がっていた。


典型的な洋風のお城と言うわけでなくどちらかと言うと中国の城壁を思わせる作りでその威圧感は圧巻としか言い用がなく、広大な平原からなる大陸なのだから城の作りとしてはそうなるのは当然かと龍馬は一人納得して眼前に広がる帝都の城壁に見とれていた。


「流石に初めてアレを見ると驚くよな。でもまだまだ華国の帝都だ。中はもっと驚くぜ」


ははっと笑うアリオットだったが龍馬はこれより凄いというのはどういうことだと首を傾げていた。


「まっ、見てのお楽しみってやつさ。ほらっ!」


パシンッと馬へ指示を出して速度を上げ、馬車は風を切り帝都へと向かい駆け抜けて行く。


そして一時間も経たないうちに帝都の城壁の前までたどり着いていた。


そこでは検問が厳しく行われ兵士達が入場を求める人たちの荷の確認や身分の確認を行っている。その列に混じり龍馬たちはゆっくりと前進していき、順番が回って来た。


「身分証の提示を」


兵士の言葉を聞き龍馬はオーリックに渡されていた身分証を提示し、アリオットも共に提示をする。


「よし。馬車内と荷物の確認を行うが構わないな?」


「もちろん、どうぞ」


そう言ってアリオットは荷物の内容が書かれた紙を手渡し兵士達がそれを確認していく。


「ふむ。記載に問題は無いな。よし、通れ」


そう言って兵士はアリオットに紙を返して城内へと進むように指示をする。


城内に進みながら龍馬は息を吐き肩の力を抜く。


「緊張した……。悪いことしてないけど」


「あははっ! 初めてか検問は」


「いや、ここに来るまでもあっただろ?」


「ん? おっ確かに。じゃあなんでだ?」


「いや、なんだか雰囲気が違うって言うか。不手際があったら即拘束みたいな雰囲気というか空気と言うか」


言い知れぬ不安感を抱かせるような空気に力が入っていたというべきだろう。


「そりゃそうさ。王様のお膝元だからね。不審者なんて侵入させたら大変だからね」


ここの検問に関しては万が一があってはならないのだから兵士達もねずみ一匹見逃さない覚悟と意思で仕事をしている。


故に空気が重く厳しく感じるのも仕方ないと言えるだろう。


「さてさて。龍馬、見ろよこれが帝都だぜ」


そう言ってアリオットが指を指した先に龍馬が目を向けた。


「これは、凄いな」


語彙が吹き飛ぶほどの衝撃で龍馬はその景色を目に焼き付ける。


広く整った大通りに活気づく商店、さらにその遥か先に二つ目の城壁が視界に移る。


さらにその城壁よりも高くそびえ立つ城に息を吐く。


「あれが華国の居城であそこに王様やその一族が暮らしているのさ。凄いだろ?」


「あぁ、こんなの見たこと無いよ」


感嘆の声を漏らして龍馬は辺りを仕切りに見渡す。


そうしている龍馬の元にオーリックが顔を見せる。


「何をしているのだ?」


「あっ。オーリックさん。いや、華国の帝都って凄いですね」


なるほどと笑ってオーリックは龍馬に御者台から降りて中に乗るように催促する。


「じゃあ、また後で」


そう言って龍馬はオーリックの後を付いて馬車の中へと入っていく。


「さて、龍馬くん。今回の経緯と目的の確認と行こうか」


オーリックに呼ばれたのは今回の外遊の経緯と目的を確認するためだった。


「解りました。まず最初に華国の帝王に碧国で起きた魔力暴走の件で、大事に到らなかったけれど使者が事後の説明が必要であると言うことでオーリックさんがその役目を引き受けたと。それで、その渦中の人物として僕が状況証拠として連れてこられている状態です」


相槌をして次へと会話を促すオーリックを見て龍馬は続ける。


「華国の帝王への面会と事後説明これが第一の目的です。続けて、オーリックさんの目的の一つとして、僕自身の見聞を広めるこれも目的の一つになります」


ただ同行するだけでも色々なことを知ることが出来た。


城で引きこもっているだけでは解らないことも多く学ぶことが出来たと思う。


龍馬はそれを噛み締めて続ける。


「そしてもう一つ、『流門』と呼ばれる帝国が帝国足らしめる要因を僕が知るということ」


「よし、上出来だ。最低限理解すべきことは覚えているようだね。では、『華国』と『流門』について話したこと覚えているかな?」


オーリックの問いに龍馬は頷き答える。


かつて遥か昔に怪物が止め処なく流れ込んでいた巨大な門、それが『流門』であるとされている。


それは今は過去の英雄がその身と引き換えに門を閉じ鍵を掛けた故に事なきを得ている。


もし、その門が再び開くことがあればこの華国を含め周辺国家はたちどころに壊滅し屍が不毛の大地を埋め尽くすことになるだろう。


そのもしもの時のために華国は帝国として軍事力を高め、幾千年ものあいだ守り続けて居る。


最悪の事態になった時に一番にこの大地を守るために戦う、そういった犠牲を前提に華国はその国家を独立させているといっても過言ではない。


とりあえず覚えていることを復唱し終えるとオーリックは軽く手を叩いて賞賛した。


「よろしい。それだけ理解できていれば問題ないだろう」


覚えは悪くない、物事に対して誠実で勤勉。これだけでも十分価値のある人間だろう、その上知るということに対して貪欲ささえ感じる。


オーリックはこの短い間に龍馬に対する評価を改めていた。


魔核のことがなければ外交省としても意欲的に確保したい人物でだろうと内心呟く。


「では、居城に着くまではゆっくり馬車に揺られるとしようか」


そう言ってオーリックは肩の力を抜いて気を抜いて座りなおす。


「ちょっと聞きたいことがあるんですけど」


龍馬の質問にオーリックは手の平を上に向けてどうぞ質問を促した。


「流門から出てきていた怪物ってどんな生き物だったんですか?」


怪物と聞いていたが結局容姿に関する内容は一つもなくどんな存在かさえわからないでいた。


「そんなことかね。まぁ、暇つぶしにといったところか。怪物と一言で済まさなければならないほど多種多様だったと聞いているよ。まっ、御伽噺みたいなとこさ。たとえば馬ほどの巨体の黒き狼の背に一体となった甲冑を身に纏った人の上半身を持つ半人半狼の怪物の群れと言うより軍隊といったほうが的確か、そんな化け物や無数の一つ目の蛇が複雑に絡み合い一つの大蛇として蠢くおぞましい妖蛇、三つ首の馬が全身に刃を生やして駆け抜けていたり。一つずつ調べていけば限がないほどだよ。まぁ所詮は伝承みたいなものだ。流門が実際になければ誰一人信じないような話さ」


多少は盛られているだろうがねと付け加えてオーリックは笑った。


対して龍馬は不謹慎ながら少し怪物たちを見てみたく思っていた。まさにファンタジーの世界の住人達が実際に居たと思うと少年心を擽られる。


「それって城に戻ったら色々調べられたりしますかね」


「ははっ、そりゃあ山ほどあるだろうさ。何せ一番人気の物語だしね」

見れることは無いにしても実在した可能性のある怪物たちの物語に龍馬は子供心を踊らせて城へ戻った時の楽しみが出来たと頬を綻ばした。


そうしている間に馬車は着実に居城へと近づいていた。

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