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第二章 今日から始める職業体験-5-

「はい? エル・ティアレ・ブラウキングス様ですか?」


名前を聞いてメティーシアは敬称付けて呼ぶので龍馬は思わず確かに礼は必要かと納得するが本質は違っていた。


「というか知ってるの? 軍のえらいさんって言ってたけど」


その様子にメティーシアは確信めいて龍馬の資質を決め付けた。限りなく悪運の強い不運な男であると。


「当然ながら、確かに私も他国について説明しておりませんでしたから知らないのも無理は無いのですが。その、ブラウキングス様は帝国軍少将にして皇位継承第四位の皇女様でもあります」


今度は龍馬がはい? と聞き返す。


「少将? 皇位継承第四位? それって超重要人物というか、えっ?」


あまりの予想外っぷりに困惑する。


幾らなんでも盛りすぎだろうと思ったがメティーシアの表情がそれを裏付けていた。


そしてちょっと格好つけた持論語りを思い出して急に恥ずかしくなり、しゃがみこみ顔を隠す。


一国のお姫様で少将の地位にある超エリートにご高説垂れた自らの醜態にいっその事笑い飛ばされたほうがマシだったとひどく後悔して魂の抜ける音が口から漏れ出していた。


「龍馬様? どういたしました?」


様子のおかしな龍馬にメティーシアが心配そうに近づいてしゃがみこむ。


「うごぉぉぉぉぉ……。ちょーっと一人にして欲しい。というか一人にさせてください」


引き気味にメティーシアは了承して部屋を出て行くと龍馬は一人ベッドに飛び込みうつ伏せで打ち上げられて死にかけの魚のように微動だにしなかった。


何故俺は格好つけたんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。


戻らぬ時間と己の無知に心で悲鳴を上げて絶句する。


でも、綺麗な人だった。確かに美人で風格もあって言い知れぬオーラの様なものも感じていた。


つまり、それを理解できてなかった俺が馬鹿なのかと龍馬は更なる沼へ沈んでいく。


文字の勉強だけじゃなくこの国や他国の事にその国の要人、少なくともそれくらいは覚えておかないと更なる恥を掻くことになるぞとぞわっとして龍馬は起き上がり、部屋の外へ飛び出してメティーシアが居るのかを確認した。


「もうよろしいのですか?」


皮肉にも聞こえる台詞だがそれすら甘んじて受け入れて龍馬は声をかける。


「あぁ、それは飲み込んだ。悪いけど頼みたいことがあるんだ」


さて、殿方からの頼みごとですかとメティーシアは頭の中でそんなからかうようなことを考えてまぁ、龍馬様ですからそんなことは無いでけれどもと口元を隠して視線を逸らす。


「あれ、用事でもあるの?」


「いえ、そうではありません。解りました、私に出来ることならお手伝いいたします」


「助かるよ、先ずはこの国との友好条約や友好的な国家を知りたい、出来ればその国の要人についても聞いておきたいんだけど」


ですよねとメティーシアはしてもいない期待に肩透かし感を覚えて息を吐く。


「解りました。では、資料を用意いたしますので少し時間をいただけますか?」


「勿論、悪いけど頼むよ」


そう言って部屋に戻っていく龍馬を見届けてからメティーシアは歩き出した。


不意に立ち止まって闇夜の硝子に映る自らの姿を見る。


「貧相ではないと思いますが……」


主に胸に視線を向けてから見慣れた顔を凝視する。


見てくれが悪い訳でもないと自負する点は幾つかある。


であればそろそろ彼の若い劣情を向けられてもおかしくは無いはずなのにと口先を尖らせる。


そんなことを考えているとふと何故自ら彼にそんなことを思っているのだろうかと疑問が生まれた。


私はただの使用人で彼の身の回りの世話をさせて頂いてるだけ、彼はその世話を求めてこない。それが無くとも暇を言い渡される訳ではないが何故か胸にしこりが残る。


……。


深く考えるのは辞めておこうとメティーシアは気を取り直して書庫へ向かっていった。

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