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史上最強のガーディアン

 学生寮の上層階へとやってきた、ここは何だか雰囲気が違う。

 私達が使っている階層よりドアの数が少ない、という事はやっぱりアレなんだろう。

 さっそくロレインの部屋に入ってみると、その予感は的中した。


「うわ、まるでホテルだな。」


 思わず声に出てしまった。

 3人部屋なのは同じだが、部屋もデカけりゃベッドもデカい。

 机も立派なものが人数分あるなんて、いくらなんでも格差付け過ぎだろう。

 うーん、ベッドの感触もなかなか。


 このままロレインでいるのも悪くないと思えてきた。

 気にした事はないがモデルみたいにスタイルもいいし。

 そう考えると私は幼児体系だったのか……何かムカつく。


「あれ、ここにいたのか。部屋に戻ってるなんて体調でも悪いのか?」


 おっと、ベッドに転がっていたらレムスが戻ってきたようだ。

 約束だからな、バレないようにしないと。


「い、いえ、ちょっと休憩していただけ……よ」

「そうか? ならいいんだけど。じゃあ行こうぜ。まったく、規範生徒だからって忙しすぎるよな、オレも半日くらい寝てたいよ」


 ふう、とりあえず一目見てバレたりはしないようだ。

 このまま話を合わせていこう。


 しかし、こいつ本当に規範生徒なのか。

 粗野だし、育ちの良さは感じられないし。

 実は男だって言っても信じられるぞ。


「えっと、これから何をするんだったっけ……かしら」

「これから授業の補佐をしてそれから見回りだ、ラシールは先に行ってるよ」


 規範生徒会はそんな事やってるのか、ご苦労な事だな。

 って、魔法もろくに知らないのに授業の補佐なんてできないぞ……どうしたものか。

 あれこれ考えているうちに教室に着いてしまった、ここでバレるかもしれない。


「心配するなよ、いつもみたいにオレ達がやるからさ。お前も努力してるけど、魔力の総量はそんなに増えてないんだ。今日は調子悪いみたいだし、オレとラシールに任せておけばいいさ」


 ……なにやら、聞いてはいけない事を聞いてしまった気がする。

 もしかして、ロレインはむしろ才能が無いほうなのだろうか?

 でも首席だしな……どうなってるんだ。


「……ロレイン……何か変……大丈夫?」


 う、ラシールだ。

 こちらをじっと見ている。

 魔法の天才らしいし、感づかれたか?


「ロレインは調子が悪いみたいだ、実演はオレ達でやろう」

「……そう……わかった」


 ナイスアシストだ、レムス。

 今更だがここまで来たらバレるのが怖い、何が何でもごまかさないと。


「ロレイン、今言ったとおり実演はこっちでやるから他の生徒の監督をしてやってくれ」

「あ、うん、わかったわ」


 ふう、他の生徒を見て回るくらいなら問題ないだろう。

 それにしても一般生徒の視線が熱い。

 歩いているだけなのにまるで女優にでもなった気分だ、凄い人気なんだな。


「ロレインさま! 我が魔法はいかがでしょうか、ちゃんとできていますか!?」


 コバンじゃないか。

 ……さては規範生徒が補佐する授業を選んで取ってるな。

 お前は杖のカスタムが許可されてるくらい成績優秀だろうが。


「そうね……もっと独自色を出した方がいいんじゃないかしら。せっかくあなたはニンジャなのだから」

「は、はい! 仰る通りです! 行ってまいります!」


 凄い速さで走り去ってしまった。

 おいおい授業中だぞ、どこへ行ったんだ?

 ……あ、いけね、変な事しない約束だったっけ。

 まあコバンだしちょっとくらい大丈夫だよな。


 その後正体がバレる事もなく、無事授業が終わった。

 ルームメイトとはあまり一緒にいない方がいい、隙を見て抜け出そう。


「……ロレイン……どこ行くの……今から見回りだよ」


 その場から離れようとしたが、目の前にラシールが立っている。

 うわっ、いつの間に!

 くそ、隙が無い。

 これじゃ抜け出せそうにないぞ。


「使ってない部屋で物音がするんだっけか。霧があるから不審者は無いと思うけど、森から変な動物でも紛れ込んだかな? とにかく調べに行こうぜ」


 3人で目的の教室まで廊下を歩いていくが、これは……。

 どう見ても勇者・戦士・魔法使いだ。


「ぷっ」


 しまった、こんな事を考えている場合ではないのに吹き出してしまった。


「……? 本当に大丈夫かよ、やっぱりおかしいぞ」

「大丈夫、大丈夫……。ちょっと疲れてただけだから、もう問題ないわ」


 ああもう、余計な事を考えないというのも難しい。



 ***



 結局抜け出せないまま来てしまった。

 ちょっとこの遊びを提案したことを後悔してきたよ。


「さあて、結構広いな。手分けして調べちまおう」


 使われていない無人の部屋。

 倉庫か何かだったのだろうか、結構な広さがある上に物が多く視界が悪い。

 埃っぽいし……だんだんイライラしてきた。


「くそっ!」


 腹立ちまぎれにそこらにあった物を蹴っ飛ばす。


「痛った!」


 蹴った足に激痛が走る。

 そうだった、これはロレインの体だった。

 普段はこんな蹴りで痛みなんか感じないのに、他人の体は不自由だ。

 そういえばいつもより体が重い……ロレインも同年代のはずだが、他のやつらはこんなに体力ないのか?


「なんじゃ、うるさいのう」


 痛みに悶えていると、部屋の隅からユラユラと何かが姿を現す。

 まさか本当に不審者か?

 いや、こいつどこかで見覚えがあるような……。


「うん? 小娘、サン・アルヴンの生徒だな? 妾を偉大なるオーガの姫、プリンセス・アビゲイルと知って眠りを邪魔したのか?」


 やっぱり、アビゲイル!

 あの時、食堂と一緒に爆散したのかと思ったがそこは幽霊、逃げただけだったんだな。


「まあよい、何か食べ物を持ってこい。妾に相応しい高貴なものをな」

「……相変わらずバカな事言ってるな、幽霊なんだから必要ないだろ」


 幽霊になっても大食いとは、食い過ぎで死んだだけの事はある。


「き、貴様……いきなり無礼な! サン・アルヴンの生徒はやはり気に食わぬ、少々痛い目を見せてやるとしよう!」


 あ、やべ、また怒らせちゃった。

 だが今度は私もパワーアップしてるんだ、前と同じにいくと思うなよ。


「……あ!」


 そうだった、だからこれはロレインの体だっての!

 勢いで剣を抜いてみたはいいが、これはどうやって使ったらいいんだ。


「えっと、何だっけ、ビンタ・ブラッド!?」


 何も起こらない……確かこんな感じだったと思うんだが。


「うはは! お主、さては落ちこぼれだな!?」


 アビゲイルは笑いながら怪物の姿になると、半透明の腕で大きくなぎ払った。


「ぐあっ!」


 衝撃で大きく弾き飛ばされる。

 こっちの攻撃は当たらないのに向こうの攻撃は当たる都合のいい霊体。

 魔法も使えないし、いつもみたいに機敏に動けない……かなりマズイぞ。


「さて、出来損ないの魔女め、どんな風に痛めつけてやろうか」


 アビゲイルの手が迫ってくる。

 掴んで締め上げるつもりか……?


「おい」


 声が聞こえて、アビゲイルの手が止まった。

 他の2人が駆けつけてきたのか?

 助かったが……幽霊に対抗できるのだろうか。


「てめえが音の正体か? 何者か知らねえが……ウチのロレインに何さらしてくれてんだコラ!」

「……許さない」


 ビリビリと肌で感じられるくらいの凄まじい迫力だ。

 目の前の怪物がちょっと引いている、どっちが鬼かわからないぞ。


「……ルム」


 ラシールが小声で呟きながら杖を振り、両手を広げる。

 すると、散らかった倉庫だったはずのその場所が平原へと姿を変えた。


「うおらぁ!」


 空間が変化するのとほぼ同時。

 とんでもない速度でアビゲイルの真下まで潜り込んでいたレムスが、野球のスイングのような見事なフォームで、その手に持った巨大ハンマーを振りぬいた。


「な、ん、だ、と!」


 霊体であるはずのアビゲイルの体が、激しい衝撃と共に上空へと打ち上げられた。

 あのハンマー、幽霊を殴れるのか……

 武器に魔力を流しているとかそういう事で対処できるのかもしれないな。


「……リオース……ドーメル……スターヴ!」


 そういえば、今までラシールが呪文を唱えるところを見ていない。

 魔力が多いせいなのか、アーティファクトだというあの杖のせいなのかは知らないが、簡単な魔法程度なら呪文を省略できるのかもしれない。

 そのラシールが呪文を唱えている、しかも長めのやつ。


「ぐああああ!」


 打ち上げられたアビゲイルの体を強烈な光が照らす。

 いや、光というかもう強力過ぎてレーザー砲みたいになっている。

 お前らそんなに怒ったの?

 ちょっとアビゲイルがかわいそうになったよ。


 やがて光が収まると、いつの間にか周囲が元の倉庫に戻っている。


「ひいい……ここの生徒は化物ばかりかあ……」


 かすれるような声が聞こえた気がする。

 さすがは幽霊、まだ死んでないようだ。

 いや、死んではいるんだけど。


「ロレイン、ケガはないか」

「え、ええ、ありがとう」


 いろいろと勉強になる戦いっぷりだったが……。

 お前、以前私にもそのハンマー使おうとしたよな、殺す気だったのか?

 ラシールも大天才とか言われるだけあって半端ない、おまけに気難しいし。


「……ロレイン……何があっても……私達が守るわ」


 人にはそれぞれ事情があるものだが、こいつらにも何か特別な事情がありそうだな。


 ドクン


 ん? 何か……体の様子が――



 ***



「……はっ!」


 ここは……私の部屋だ。

 そうか、効果切れで元に戻ったのか。


「ふう、やっぱり慣れたモノが一番だな」

「メル? 急にどうなさったのですか、まだ休んでいませんと……」


 ……何だろう、この状況。

 背伸びをしようと立ち上がったが、下着姿だし、あちこちベタベタしてるし。


「おい……何やってたんだよ」

「何って……うふふ、変なメルですわ」


 体に塗られてる薬みたいなものが臭くて気持ち悪い。

 体調が悪いことにしたからエリザなりの看病をしていたのか?

 ここにいる間は病気にはなれないな。


「えーっと、体調はもう戻った。ちょっとシャワー浴びてくる」


 浴室へ向かおうと廊下に出ると、同じく元に戻ったロレインに出くわした。

 他の2人はいないようだが、ちょっと気まずい。


「……本来ならあらゆる手段を使ってでも謹慎処分にしたいところですけど、約束は約束ですから。今回は大目に見ます」


 やっぱり怒ってるな。

 今回ばかりは私もちょっと反省してる。


「ああ、悪かったよ。ところでこれ何なんだ? 臭くてしょうがないんだけど」

「なっ……! し、知りません! あなた達は普段からあんな事を……!?」


 どういう経緯で塗り薬まみれなのか聞きたかったのだが、ロレインは顔を真っ赤にして走り去ってしまった。

 本当に何があったんだよ、気になるだろ。


 まったく散々だ。


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