ギャルちゃんは謝りたい
大急ぎで作ってもらった専用のカスタム杖も完成し、私の戦力は格段にアップした。
……だといいのだが、まだ使ってないから本当にパワーアップしたかはわからないんだよね。
そもそもろくに魔法を覚えていないから、まずはそこからやっていかないと。
それはそうとして、エリザの様子がちょっとおかしい。
「エリザ?」
「は、はい! おはようございます! ど、どうなさいました?」
「おはようございますって……、もう10時をまわっているぞ」
「あ、あはは。そ、そうですわ、次の授業の準備をいたしませんと! メルは何の授業でしたっけ?」
私とお前の授業は同じだろう、お前が申請したんだから。
それに次は午後からだ、時間的にはずいぶん余裕があるぞ。
「エリザ……どうかしたのか? 挙動がおかしいぞ」
「え? い、いえ、わたくしは別に……」
その時、誰かがドアをノックした。
「ん、誰か来るなんて珍しいな」
「は、はい! 開いてますわ!」
エリザの返事に答えるようにドアが開く。
「いよっす~、元気~?」
そこにいたのはソニアだった。
相変わらずのギャルっぷりだが、少し元気が無いようにも感じる。
「いや~、ちょっと聞いてほしい事があるっていうか、相談っていうか~」
「相談、ですか? 何かあったのですか?」
相談って……何故ここに来る。
エリザはまだしも私は相談するのに向いていない人間だと思うぞ。
「ちょっとジルとケンカしちゃってね~、考え方の相違ってやつ? とにかく口きいてくれなくなっちゃったんだ~」
「ケンカね……具体的には何やらかしたんだ」
「ジルってば辛気臭いからさ、もっとハッピーにしたげようと思ったワケよ。でもいまいち上手くいかなかったっていうか~、授業台無しになったっていうか~、まあそんなトコ」
あまり具体的じゃなかったけど、だいたいわかった。
コイツはいまいち何考えてるのかわからないから、ジルも苦労してるんだろうな。
「わかりました! おふたりが仲直りできるように、わたくし達が協力いたしますわ!」
達ってなんだよ、私もやるのか?
「さあさあ、そうと決まれば善は急げです! ジルのところへ向かいましょう!」
「お~、やる気だねエリザ。マジ助かっちゃうよ~」
「おい、よせって、あたしは何も……」
エリザに強引に部屋から押し出されてしまった。
私はケンカした事は山ほどあるけど、仲裁した事なんかないぞ。
「それでは作戦開始です! 気付かれないようにこっそり手伝って、こちらの気持ちをさりげなく伝えましょう!」
気付かれないようにやったら伝わらないんじゃないのか?
エリザなりの考えがあるのかもしれないから何も言わないけど。
面倒だし。
「この時間だとジルは魔法動物舎かな~。んじゃ、そこ行って手伝おっか~」
魔法動物舎、いわゆる私のいた普通の世界にはいない動物を飼っている場所らしい。
「それはいいけど、この格好はなんだ?」
魔法動物舎に到着すると、ソニアがいきなり魔法で私達の格好を変えてしまったのだ。
おかげで猫だか何だかわからない着ぐるみ姿にされている。
「だって~、バレないようにやるんしょ? けっこうカワイイよ~」
常時こんな感じなら、そりゃあジルも怒るわけだ。
というか私だって今すぐソニアを殴りたい。
「あ、あちらにジルがいましたわ。動物のお世話をされているようですね」
ジルは餌やりの途中のようだな。
さて、どうしたものか。
「いよっし! そんじゃ手伝っちゃいますかね~」
怪しい着ぐるみがピコハンをぐるぐると振り回している。
上手くいく気がしない。
「メクスエラ!」
ソニアの呪文に合わせて、ジルの持っていた餌が増えた。
これは増殖の魔法といったところか。
「え、ちょ、何コレ!?」
ちょっと……増えすぎじゃないか? ジルが餌まみれになってるぞ。
そうなると動物たちが大人しくしているわけはない。
「きゃーっ!」
凄い勢いでたかられているな、どう見ても手伝いになってない。
様子を見ていたらボロボロになったジルが飛び出してきた、こちらに気付いたようだ。
「あなた達の仕業かしら……? どうせソニアなんでしょ!?」
「い、いえ、ワタシは通りすがりのかわいい猫です……にゃん」
不自然すぎる。
ソニアとエリザの2人でかわいいポーズをとって必死にごまかしているが……無理だ。
ジルはその様子を怒った様子で見ていたが、何も言わずに立ち去ってしまった。
「これは……失敗だよね、マジ」
「仕方ありませんわ、次の作戦を考えましょう」
ところでこの姿はいつ戻るんだ?
まさか次の作戦もこのままとか言わないよな。
「それでは次の作戦です! やはり仲直りしたいのならば正面から謝るしかありません! 気持ちをまっすぐ伝えてみましょう!」
「しかありません、じゃねーよ。じゃあさっきの作戦は何だったんだ」
「う……、申し訳ありません……」
でもまあ、エリザは100年くらい家に閉じ込められてたんだっけ。
友達もいなかっただろうし、空回りするのも仕方がないか。
……お、姿が元に戻った。
「エリザの言うとおりかもね~、ここはひとつストレートにあやまってみっかね」
軽い。
だいたいお前の事なんだぞ、わかってるのか。
***
今度は食堂へとやって来た。
バカな事やってるうちに昼になってしまったじゃないか。
「いましたわ……あそこでお食事の最中のようです」
ジルとミデットが一緒に食事している。
思えばいつも3人だからちょっと新鮮な光景だな。
「今だ! ブローム・スタンディ!」
「なっ、お前何を……」
いくらソニアでもこのタイミングで魔法を使うとは思わなかった。
ストレートに謝るんじゃなかったのか?
魔法によってジルの周辺がお花畑のようになっている。
それだけならまだしも、皿の上やミデット、ジル自身の頭にもお花が咲いている。
バカっぽ……いやいや、これはダメだろう。
「ジル、こないだの事だけど~」
すかさずソニアがジルの前に飛び出し謝ろうとするが、どう見てもそんな雰囲気ではない。
頭に咲いた花を引きちぎりながら立ち上がるジルのメガネの奥から殺気を感じる。
「ソニア……いい加減にして! 私は真面目にやりたいの! 成績優秀なあなたから見れば、地味で退屈に見えるでしょうけど、私なりに一生懸命やってるの! あなたみたいにふざけてばかりいられないの!」
怒鳴るだけ怒鳴ってジルは走り去っていった。
ソニアもエリザもミデットも、その場で呆然としている。
「ジル……」
作戦その2も失敗だな。
というか余計に話がこじれてしまった、どうするんだコレ。




